2003年 春

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2003年3月

【3月2日】【番外編】由布岳から九重連山を望む

このところ週末ごとの雨で、山行もままならない状態が続いており、少々消化不良気味です。昨日も雨です。 今日は晴れましたが、朝夕は所用のため、空き時間に由布岳に出かけてくるのが精一杯の状態です。たまには 遠くから九重連山を眺めてみるのも悪くはありません。 実は、由布岳へは年間10回程度は出かけています。自宅から30分程度で登山口に着くため、足慣らしには 最適で、今日のように時間が限られている場合も、午後から山頂への往復が無理なくできるためです。
登山口着が正午過ぎでした。快晴の空に冬枯れの飯盛ヶ城と青空にそびえる由布岳の山容が映えます。 気温も上昇しており、汗ばむ陽気です。それでも5合目を過ぎたあたりから登路の日陰には雪が残って います。西峰と東峰の分岐であるマタエ付近からは、冷たい風にさらされ、西峰山頂付近には霧氷も残って いました。霧氷は、融けて落下していきます。いつもながら山頂からの眺望は最高です。湯布院の町並みの 向こうの九重連山も、少々霞んではいるものの、はっきりと望めました。久住山付近に、雪が残っているのも 分かりました。しばらく景色を楽しんでから、早々に下り、午後4時過ぎには帰宅しました。あわただしい 中にも、春の気配を確実に感じた一日でした。

【3月8日】咲き始めたビジターセンター前のマンサク

3月8日の九重連山は雪。午前10時頃の長者原の気温は−2℃。日ごとに暖かさを感じていたところ ですが、一夜にして雪景色に変わりました。県道11号の長者原付近ではチェーン規制が出されています。
ガスが低くかかり、雨が池付近もすっぽりとガスに覆われています。登路の積雪は10cm程度で、風は弱く、 しかも厳冬期のような肌を刺す冷たさは感じず、雪景色の中にも春の足音を感じます。周囲の樹木には霧氷が 付き、静かに降り続く雪で先行者の足跡も徐々に消される状態でした。坊がツルキャンプ場付近も新雪が 10cm程度積もり、一面の雪景色です。周囲の山々はガスに覆われて望むことができません。断続的に 弱い雪が降り続いていましたので、坊がツル止まりとして、避難小屋で休憩した後に山を下りました。 長者原に戻った15時頃には、時折雲の切れ間から青空も見え、薄日も差してきました。天候は徐々に回復 傾向のようです。
3月7日付けの地元紙のコラムに、九重の自然を守る会会長の嶋田氏書かれた、長者原ビジターセンター前の マンサクの開花についての記事がありました。トップページの「今週の一枚」に掲載しているマンサクの花が、 この記事のマンサクでしょう。(背景はビジターセンターです。) 沓掛山や坊がツルの大船林道入り口付近のマンサクの開花はまだまだですが、マンサクが開花するように なると本当に春が近づいていることを実感します。

【3月21日】大船山頂から望む坊がツルの野焼き

3月21日の九重連山は晴。午前8時頃の飯田高原の気温は1℃。早春とはいえ、凛とした寒さの朝を迎えています。 このところ週末ごとに雨に見舞われ、山行もままならない状態が続いていましたが、久しぶりに快晴に恵まれ、快適な 山行が楽しめました。先週に予定されていた坊がツルの野焼きですが、雨天のため延期され、今日実施されました。 10時前には、野焼きのスタッフが坊がツルキャンプ場付近に集結し、警察の車両も到着しました。10時過ぎに 坊がツル東側から火が入り、2時間弱で坊がツルは漆黒の原野に姿を変えました。
野焼きの作業中、坊がツル周辺は約2時間近く通行が規制されるということで、さすがに2時間近く野焼きの煙に 薫蒸され、薫製のようになるのも気が引けましたので、今回は大船山頂から野焼きの煙火を望むべく、ひとまず大船山 へ向かいました。11時頃に山頂に着き、坊がツルの野焼きを肴にささやかな宴席をもうけました。(笑)
時折強く燃え上がる炎と、弱い風にわずかにたなびく煙と、煙に霞む三俣山斜面、そして炎が通り過ぎた焼け跡に 黒々とした大地が広がっていく様子もまた一興であります。遠く阿蘇方面へ目を向けると、外輪山でも野焼きが行われて いるようで、方々から煙が上がっていました。山頂付近の御池はまだ氷結しており、春が近いとはいえ、山頂付近の 冷え込みは依然厳しいようです。

【3月29日】坊がツルから望む早春の大船山

3月29日の九重連山は晴。午前中は少々雲が広がるものの、徐々に天候も回復してきました。岩陰や谷間にはまだ雪が 残ってはいますが、登路の雪はほとんど消えています。牧ノ戸方面のマンサクが黄色い花を付けている様子が、遠目にも わかるようになっています。午前10時過ぎに大曲から入山し、すがもり越から三俣山へ向かう頃には、泉水山周辺の 野焼きの灰が降ってきました。長者原周辺から泉水山にかけては、午前10時前に火が入り野焼きが行われました。 これで九重連山もすっかり春の準備が整いました。それでも山頂付近を渡る風はまだ冷たく、桜咲く平地の風に慣れた 身には辛いものがあります。
三俣山南峰から坊がツルに下る登山道には雪はありませんが、湿気を含んで大変滑りやすく、下るというよりも滑り落ちる という感覚です。(苦笑)昨年の開山祭以来登路は整備されてはいますが、このような調子でから、雨天等の際は苦労する ことになりそうです。
野焼きから1週間が経過した坊がツルは黒々とした大地が広がっています。水も温み、すっかり春の気配です。九重連山は 春の暖かな日差しに包まれ、季節の確実な移ろいを実感させる一日でした。

2003年4月
【4月5日】岩氷付くすがもり越

4月5日の九重連山は曇。午前9時頃の長者原付近の気温は2℃。平地の花冷えは、九重連山では雪となり、周囲の山々 には霧氷が見られます。1500m付近からはガスがかかっており、山頂付近は望めない状況でした。天候は午後にかけて 回復傾向という予報で、ガスが薄れ始めた午前10時過ぎに大曲から入山しました。すがもり越付近では強い風が吹き、 春とはいえ凍て付く寒さで、避難小屋の壁面には岩氷が着き、周囲の樹木には霧氷が付着しています。一気に冬に逆戻り したような光景が広がっていました。北千里ヶ浜から法華院へ下り始めると、程なく視界が開け、眼下の法華院 温泉山荘の周囲の山々には霧氷が着いている様子が望めるようになりました。正午前からは徐々にガスも薄れ、雲間から 薄日も差すようになり、天候も回復してきました。
坊がツル付近ではアセビの白い可憐な花が咲いていましたが、氷雪に覆われて寒々としています。キャンプ場にはテント が1張り。その後も野営の装備を担いだ登山者が次々とやってきていましたので、今夜は春の野営を楽しむ登山者の宴が 開かれることでしょう。そろそろ私も5月の連休あたりには坊がツルでの野営を計画しようかと考えてるところです。
季節は行きつ戻りつしながら、それでも確実に暖かくなってきています。いささか食傷気味の冬景色ではありましたが、 おそらくこの春最後になるであろう雪の感触を堪能した一日でした。

【4月12日】野焼き後の下泉水山麓に咲くキスミレ

4月12日の九重連山は曇のち晴。午前10時頃の長者原付近の気温は13℃。1週間前の4月5日より10℃以上高い気温です。 ガスが低くかかり、山頂付近は見渡せません。ガスも徐々に薄れてきていましたので、しばらく待機し、雨が池方面のガスが切れた 11時頃に長者原から入山しました。 午後にかけて天候も回復するという予報でしたので、ひとまず雨が池経由で坊がツルへ向かうことにしました。タデ原木道を抜けて、 登路に入ると芽吹き始めた木々の樹間から薄日も差してきました。指山から三俣山北側斜面ではマンサクが満開です。例年より 少々遅めのようです。加えて長者原から坊がツル周辺でもアセビが満開で、株にびっしり着いています。甘い香りが漂っています が、この花は誤って食べると呼吸中枢の麻痺をおこすといわれる有毒なものなんだそうです。可憐な見かけによらず、実にしたたかです。
正午過ぎの坊がツルは、風も弱くすっかり晴れ渡り、暖かな日だまりです。テントが2張ありました。今夜から明日にかけては 天候に恵まれそうですので、快適な野営が楽しめることでしょう。帰路は法華院温泉山荘から北千里ヶ浜を経由して、すがもり越 から長者原へ戻りました。

【4月18日】芽吹き前の久住山周辺

4月18日の九重連山は晴。少々雲が広がるものの、日差しもあり、青空も見えています。午前10時頃の牧ノ戸峠付近の気温 は17℃。午後からは20℃を超え、まさに初夏を思わせる暖かさです。平日ではありましたが、さすがに九重連山の主峰 である久住山への起点となる牧ノ戸峠の駐車場には、かなりの登山者が訪れていました。
沓掛山では、花の終期を迎えてはいますが、まだマンサクの花が咲いています。また、シャクナゲのつぼみの先端も、少々 色づき始めており、このところの暖かさで、一気に春の歩みを早めたようです。アセビも満開ですし、沓掛山下のカラマツも 芽吹き始めています。久住山周辺から中岳方面にかけては、一見まだ冬枯れの装いではあります。しかし、ミヤマキリシマの株 から少々芽吹きがあり、季節は確実に春本番へと向かっています。
暖かな日差しに包まれ、山頂付近を渡る風も暖かです。今日は、牧ノ戸峠から久住山・中岳周辺へ往復ですので、時間的にも 余裕があります。平日とあって訪れる人も少なく、天狗ヶ城山頂付近の草原で昼食を済ませてから、しばし陽気に誘われて うたた寝をしてしまったわけですが、山を下ってから後悔することしきり。何と、大変な日焼けをしていました。 これから初夏にかけては紫外線が強いようで、それほど強い日差しでなくても相当に日焼けをします。おかげで帰宅後に寝苦しい 夜を体験する羽目になりました。

【4月26日】輝く木々の新緑

4月26日の九重連山は曇。朝方まで少々雨が残り、濃いガスに覆われています。ガスが急激に切れ始めた午前10時頃に 長者原から入山。各山頂付近は依然濃いガスに覆われていたため、いつもながら雨が池を経由して坊がツルを目指します。 あいにくの天候でしたが、登路の木々は芽吹き、時折雲の切れ間からさす薄日に照らされ蛍光色に輝いています。 指山斜面ではオオカメノキ(ムシカリ)が花を咲かせ、九重連山も春の気配が濃厚です。
坊がツルでは少々ガスががかってはいるものの、明日にかけて天候は回復ということで、テントが数張り設営されていました。 天候は今一歩でしたが、さすがに連休初日とあって、大船山方面を目指す団体や少人数のグループも次々と訪れていました。
帰路、北千里ヶ浜からすがもり越付近はガスに覆われ視界も開けませんでしたが、15時過ぎにはガスも薄れ始め、長者原付近に 戻る道々では、雲間から差す陽に、登路脇の木々の芽が眩しいばかりに輝き、季節の移ろいを感じるささやかな感動体験です。
この連休に九重連山を訪れる人も多いと思います。新緑を堪能するなら、お勧めは男池から黒岳方面の原生林でしょう。 周囲が蛍光色に輝く新緑に覆われ、まぶしいほどです。5月初旬にはシャクナゲも開花し、庄内町の黒嶽荘や白水鉱泉付近 から鷹巣(前岳)へのルートはこの時期は少々混雑します。

2003年5月
【5月3日】前岳のシャクナゲと新緑

5月3日の九重連山は晴。時折雲が日をさえぎりますし、また少々霞んではいるものの、おおむね快晴に近い天候でした。 黒岳方面のシャクナゲもそろそろピークを迎えたようですので、恒例の黒岳縦走をしてきました。このルートは、 ゴールデンウィーク前後に、新緑とシャクナゲが同時に堪能できるお勧めのルートではあります。しかしながら、 夏場は無風で蒸し暑く、周囲の視界も開けず、景色も今一歩とあって、私もシャクナゲの時期にだけ毎年歩いているところです。 秋の紅葉時期も見応えがあるようですが、天狗岩付近から眺めるだけで、歩いたことはありません。
午前9時に白水鉱泉から入山し、前岳へ向かいます。登路脇にはシャクナゲが咲いており、高度を上げるにしたがって株も多く なってきます。現在、前岳山頂付近がほぼ花のピークを迎えていますが、まだつぼみも残っており、今しばらく楽しめそうです。 今年はシャクナゲの花も少なめですが、それでも十分楽しんでもらえるはずです。
前岳から高塚山までは、何度かアップダウンを繰り返し、高塚山手前で一度視界が開けるものの、後はほとんど林の中を黙々と 歩くことになります。さすがに高塚山は狭い山頂に人があふれ、次々と新たな登山者が訪れます。天狗岩方面も多くの登山者で にぎわっていました。高塚山から風穴までは、オオカメノキの白色の花が登路脇を飾っています。風穴付近でも満開でした。 奥ゼリやソババッケ付近から男池周辺までは、どこを見ても輝く新緑で、眩しいばかりです。新緑のパワーを吸収し、鋭気を蓄積 できた一日でした。

【5月10日】坊がツルを流れる鳴子川

5月10日の九重連山は晴。午前中は1500m付近から山頂付近にかけて、断続的に雲がかかる状態でした。坊がツルまで来て、 周囲の山々を見渡すと、唯一雲がかかっていない平治岳へ向かうことに決定。先週お伝えしたシャクナゲのシーズンが終わると、 次はいよいよミヤマキリシマです。群生地である平治岳や北大船山周辺の状況も気になるところですので、開花前の状況視察です。
大戸越付近では花芽が色づき始めている株もかなり多く見かけました。このあたりは虫害はほとんど見られず、どの株も花芽は多めです。 あと2週間程度で開花しそうな状況です。大戸越から平治岳南斜面も同じような状況で、こちらも昨年同様に比較的虫害も少なく 花芽も多いので、楽しみです。ピークは6月1日の山開き以降になると予想しますが、どうでしょうか?
気になる山頂付近ですが、残念なことにかなりの株で虫害が進んでいます。体長2cm程度のシャクトリムシが、おびただしい数 取り付き、葉肉を食い荒らしています。最終的には花芽も食われてしまうのですが、樹勢をなくした株は、枯れたように色を落と しています。山頂付近では、そのような株が点々と見られます。昨年までの様子を考えても、この後、開花する前に虫害が一気に 進行するものと思われます。1995年を最後に年々虫害が進み、平治岳や北大船山付近の群生地の荒廃は目を覆うばかりです。 今年は冬も寒く、雪も多かったので、虫害の発生は比較的少ないのではないかと期待していましたが、そう甘くはなかったようです。
平治岳から坊がツルへと下った頃には、坊がツルキャンプ場にはすでにテントが張られていました。明日にかけて天候が気になるところ ですので、下り終えるまで雨に遭わないように期待するばかりです。午後からは徐々に雲も増えてきましたが、緑の草原が広がる坊がツルで ゆっくり休憩してから山を下りました。

【5月17日】大船山のイワカガミ

5月17日の九重連山は曇。時折雲間から薄日が差すものの、山頂付近には薄いガスがかかる状態です。この時期はこの程度の 天候の方が、日焼けもあまりせずに、むしろ快適かもしれません。
坊がツルから望む大船山頂は少々ガスがかかるものの、天候も心配なさそうな状況でした。登路脇には開花したミヤマキリシマ の株も増えてきています。残念なことに、段原付近では今年も虫害がひどく、遠目にも枯れたように見える株が目立ちました。 花芽が多い株ほど虫害がひどく、葉を食べ尽くすと、色づき始めたつぼみも食べています。このところ数年以上このような状態が 続いており、年々虫害が進んでいるような気がして、果たしてこのシャクトリムシの天敵は出現するのだろうかと、いわゆる 食物連鎖の不成立とも思える状況に落胆しているところです。それでも虫害を受けていない株もあり、最盛期にはそれなりに 開花してくれることを期待するばかりです。
登路の樹下にはイワカガミが咲いており、大船山頂下のイワカガミの群生地でも開花しています。つぼみも多く来週あたりが 見頃と思われます。意外に登山者も少ない大船山頂で、しばし休憩の後、北大船から大戸越へ向かいます。このルート周辺も 虫害が進んでおり、枯れたように見える株が目立ちます。大戸越付近は比較的虫害も少なく、開花し始めたミヤマキリシマの株も かなりあります。平治岳付近は訪れる人も増え始めています。大戸越から平治岳南斜面の開花状況についてはは、あと2週間程度 はかかりそうな感じです。ピークはそれ以降になると思われます。

【5月24日】星生山から望む久住山

5月24日の九重連山は曇。8:00頃の牧ノ戸峠付近の気温は12℃。雲は厚くはないものの、青空が覗くことはありません。 ミヤマキリシマのシーズンとあって、朝から駐車場はどこも混雑しています。
牧ノ戸峠から入山し、沓掛山を越えるとミヤマキリシマの花が目立ちます。ピークはあと1〜2週間というところでしょう。 例年どおり6月初旬が見頃と予想しておきます。次週の山開きの頃にはかなり見応えもありそうで、文字通り山開きに花を添え そうです。登路の株には虫害もなく、極めて良好な状態です。群生している扇が鼻付近でもそろそろ開花し始めています。 こちらは北大船山や平治岳に比べ、株ははるかに少ないものの、虫害がないためきれいな花が楽しめそうです。
山開きを前に、星生山への立ち入り規制が解除され、依然活動が盛んな硫黄山に近い場所を除き入山できるようになりました。 平成7年12月以来、実に7年6ヶ月ぶりの規制解除です。本日の主目的は、この星生山でありまして、扇が鼻下付近から 懐かしい登路へ入ります。まだ規制のロープが残っていますので、少々気後れしながらロープを越えなければなりませんが、 これからは堂々と入山できます。久々の景色を楽しみながら、強い風の吹く稜線をゆっくりと山頂に向かいます。久しく入山者が 極めて少ない状態であった山頂付近の斜面は、イワカガミやマイヅルソウの花が咲き、可憐な野の花の宝庫です。 西千里ヶ浜を久住山へ向かう登山者の列を眼下に望みながら、懐かしい景色をゆっくりと堪能しました。


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