2006年 春

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2006年3月

【3月4日】マンサク咲く(ビジターセンター前にて)

3月4日の九重連山は快晴。午前7時頃の長者原付近の気温は−12℃。上空には雲一つなく、放射冷却が効いて厳冬期並の冷え込みです。 いよいよ3月となり初春を迎えた九重連山は、冬の名残を思わせる昨日までの雪で再びうっすらと雪化粧しました。
午前7時過ぎに大曲から入山し、三俣山へ向かいます。 相当な冷え込みですが、快晴ですから日が差すようになると急激に気温も上昇しそうです。 登路はうっすらと雪に覆われ、眼前には硫黄山の噴煙が真っ直ぐ上昇するのが望めます。 すがもり越に着くと日陰から抜け眩しい朝日が差します。厳しく冷え込んでいるにもかかわらず暖かさすら感じるようになります。
登路脇の木々は美しい霧氷が覆っています。厳冬期の豪快な霧氷とは異なり、今日の霧氷は少々マイルドで、何だか柔らかな綿毛のようです。 いつになく美しい霧氷を堪能しながら、西峰から本峰下を抜け南峰へ向かいます。登路はうっすらと積雪し、周囲の霧氷と残雪が初春の三俣山を飾ります。
すがもり越へ下った午前11時頃になると気温もかなり上昇し、登路脇の霧氷が落下する音があちらこちらから聞こえてきます。 往路では10cmはあろうかという恐ろしく発達した霜柱が登路を覆っていましたが、復路では日が当たる場所の霜柱は融けて消失し、ぬかるんできました。
長者原ビジターセンター前とやまなみレストハウス前にあるマンサクの株は、指山や牧ノ戸峠付近に自生しているものより例年少々早く開花します。 昨年より少々早めでしょうか、不思議な形状のきれいな花がすでに咲いていました。 初冬から厳しく冷え込んだこの冬もやっと終わりを迎えたようです。マンサクの花も咲き、いよいよ九重連山に春が訪れました。

【3月11日】残雪の白口谷

3月11日の九重連山は曇のち晴。午前7時頃の長者原付近の気温は3℃。厳しく冷え込んだ先週とはうって変わり、暖かな春の朝を迎えました。 登路にはわずかに氷雪が残るものの、木々の芽は膨らみ始めており、春の気配が濃厚です。 すがもり越から北千 里ヶ浜を経て久住分れへ向かいます。先週の厳しい寒さを思えば本当に暖かく、思わず微笑みたくなるうれしさです。
このところの暖かさですっかり解氷しているかと思われた御池は、わずかに氷結している場所もあり、初春とはいえまだ山頂付近では寒さが続いているようです。 御池付近で「九重の四季」の木下氏と会いました。 テルモスに持参されていたコーヒーをご馳走になり、しばし歓談。氏は早朝からの入山ということであります。 日の出頃はコンパクトな焼け具合ということで、早朝の撮影は やはり気まぐれな山の天候に懸ける要素が大でありまして、 全く敬服至極であります。御池周辺はさすがに残雪も残りますが、雰囲気はすでにすっかり春です。
池の小屋から白口谷を経て法華院へ下ります。白口谷の木々も芽吹き始めており、春の訪れを実感します。 依然残雪は多く、初春 の九重連山は、まだ冬と春が同居しているという感じです。雪解け水を集めて水量を増している白口谷の沢音を聴きながら法華院山荘へと下ります。 眼前には坊ガツルが冬枯れの景色を見せていますが、次週の予定されている恒例の野焼きで、真っ黒な大地に 姿を変えるのでしょう。
法華院山荘付近を散策した後、ゆっくり休憩してから山を下りました。坊ガツル付近では立中山斜面のマンサクも咲き始め、こちらでも春の気配が濃厚です。 この後は3月18日(土)の坊ガツル野焼きに続き、3月25日(土)・26日(日)はこれも恒例となった開山祭が開催されます。 春恒例の行事が目白押しでありまして、公私にわたり多忙な時期ではありますが、ここはやはり週末はきっちりと休んで、春を満喫すべく山行の時間を確保したいところです。

【3月19日】凍結残る御池

3月19日の九重連山は曇。午前7時過ぎの飯田高原の気温は3℃。昨日の雨もあがり、少々冷え込んだ朝は、 これまた春先 恒例の冬の名残を残す霧氷と舞い落ちる粉雪にまみれての山行となりました。 飯田高原から望む山頂付近はガスに覆われ、時折ガスの切れ間からは霧氷が着いているのが望めます。男池から阿蘇野を経由して七里田へ向かい、有氏牧野道経由でガラン台へと向かいます。 ガラン台から望む大船山や黒岳もガスに覆われていますが、時折ガスの切れ間から青空が覗き、薄日も差すまずまずの天候です。
入山公墓を過ぎ、鳥居窪あたりからガスの中に入ります。周囲の木々には徐々に霧氷が着いているのが分かるようになります。 大船山頂が近くなると周囲は霧氷に覆われた木々に覆われ、登路にも圧雪が残っており、強烈な風も吹きつけます。 一面の 霧氷の木々をくぐりながら、御池へ下ろうと残雪を踏み込んだところで大転倒。圧雪の表面が氷結しツルツルの氷となって いたのであります。 そのまま数メートル滑落し、あわや「御池にはまってさあ大変」となるところでした。(苦笑) 木々に着いていた霧氷のシャワーを浴びたのはいうまでもなく、全身真っ白になりました。 しかも少々腰を痛めたようで下りが苦痛だったのはもとより、現在は湿布を貼り骨盤を固定するベルトのお世話になっている始末で、全く油断大敵であります。
御池(おいけ)は周囲から解氷が進んでいます。中岳下の御池(みいけ)は、先週ほぼ解氷していましたので、こちらの方が遅れ気味です。 強烈な風が吹き抜ける大船山頂付近の残雪は久住山周辺よりはるかに多く、山頂標識の周囲の岩には岩氷が着き厳冬期の装いです。 ガスに覆われて視界も利かず、しかもこれだけ寒ければ長居は無用です。早々に山を下りました。 正午頃のガラン台付近は少々風は強いものの、薄日の差す天候で暖かです。山頂付近は冬の寒さですが、山麓は春の暖かさに包まれ、初春特有の落差を楽しめました。

【3月25日】坊ガツル野焼き

3月25日の九重連山は晴。午前7時頃の長者原の気温は−1℃。本日は延期された坊ガツルの野焼きが行われるためか、朝から入山者が多いようです。 ラムサール条約登録後初の野焼でありまして、例年になく注目を浴びているようでありまして、大曲の駐車スペースはすでに満車に近い状態です。春の気配が濃厚な朝の登路は霜柱に覆われています。 朝日が注ぎ始めると気温は上昇し、うっすらと汗ばんでくるようになります。すがもり越は朝日が眩しく輝き、すがもり避難小屋 の裏には、例年になく多めの残雪が残っていました。
三俣山西峰から本峰を経由して南峰に着くと、すでに坊ガツルを見下ろす場所には、 野焼き開始30分前にはすでに数組の 野焼きを待つ登山者が訪れています。私はそのまま坊ガツルへの登道を下り、中腹にあるテラス状の岩場で待機します。 午前10時過ぎに坊ガツル野営場付近から火が入り、風下となっている東側から徐々に着火されていきました。 炎は時折激しく燃えさかり、大船山を霞ませる煙を漂わせながら、約1時間ほどで坊ガツルを漆黒の大地に変えていきました。
坊ガツルへ下り、法華院山荘付近で「九重の四季」の木下氏に会いしばし歓談。 (坊ガツル野焼きの迫力ある炎の舞いは 木下氏sumisumi氏のホームページに掲載されます。)
午後からはタデ原でも野焼きが行われ、明日は泉水山麓付近でも野焼きが行われるということで、九重連山周辺は一気に漆黒の大地が広がることになります。 焼け跡にはやがてキスミレが咲き、新緑が芽吹き始める頃になると、早くも初夏の気配が漂ってくるようになります。今年もまた、人と自然の共生の中で、確実な季節の移ろいを実感しました。

2006年4月
【4月1日】坊ガツルのネコヤナギ

4月1日の九重連山は曇。午前7時過ぎの飯田高原の気温は5℃。北部九州の天候は徐々に下り坂で、 午後からは雨になるという予報です。新緑に覆われ始める4月末頃まで少々景色も単調です。 しかしながら、よく目を凝らすと森に中は芽吹き始めた木々の緑も 柔らかく、生命の息吹を発見できます。大地のパワーを吸収し体調回復を図るべく、吉部から坊ガツルまでのお手軽山行となりました。 午前8時頃吉部から入山。鳴子川沿いの登路をゆっくり春の気配を探しながら歩きます。 木々が緑に覆われる 前のこの時期の森は明るく、大地に息吹く春を探すには最適です。木々の枝先に芽吹きが始まり、優しい新芽が顔を出して います。
薄曇りの空には太陽の輪郭が望めますが、あいにく日が差すことはありません。木々の枝間に望む鳴子川の瀬音を聞きなが らのんびりとした癒し山行であります。 大船林道終点付近にはマンサクが咲き、アセビの白い花が咲き始めた坊ガツル付近は先週の野焼きを終え、その後の雨で灰も大地に溶けるように徐々に落ち着いてきました。 見上げる山々の谷筋には、先週 降った春の雪が白く残り、4月を迎えたとはいえまだ時折の寒さが残る九重連山の春です。 坊ガツル付近は風も弱く、気温 は10℃を超えています。野営場付近を散策した後、復路は暮雨の滝に立ち寄り山を下りました。
タデ原や泉水山麓も野焼きを終え、黒々とした大地が広がっています。 これから一雨ごとに暖かさを増し、やがて泉水山麓 にキスミレが咲き乱れ木々に緑が戻ってくる季節も目前です。景色が一変する野焼きを終えた大地を見るにつけ、また1年経ったんだという実感があります。 野焼きは自然と人間の共生の壮大な産物であったりするわけですが、感覚的に毎年リセットスイッチを押しているようなものという気もします。 黒々と広がる大きな大地のキャンバスに、今年はどんな絵が描かれるのでしょうか。

【4月8日】春の御池

4月8日の九重連山は晴。午前7時頃の牧ノ戸峠の気温は4℃。九重連山への道々は晴れていたにもかかわらず、長者原付近から望むと山頂付近にはガスがかかる状態です。 天候の回復を期待しつつ午前7時過ぎに入山しました。早春は霜柱に覆われていた登路もすでに霜柱はなく、融けて泥濘地と化すこともなくなりましたので実に快適です。
沓掛山から扇ガ鼻分岐付近まではガスに覆われ、強い風が吹きます。 西千里ヶ浜付近にさしかかる午前8時過ぎには一気にガスが晴れて、青空が広がり、星生崎から久住山方面まではっきりと見渡せるようになりました。
中岳山頂は強烈な風が吹き抜け、直立するのも難しいほどです。風は冷たく体感的にはかなりの寒さでありまして、早々に山を下りました。 何せこの風ですから、牧ノ戸峠から中岳周辺へのルートで毎度訪れる星生山もパスし、一気に山を下ることになりました。 黄砂の影響でしょうか、多少景色は霞むものの遠く祖母・傾山系から由布岳まで見渡せ、ガスが晴れた後は雲一つない快晴に恵まれた絶好の山行日和となりました。 午前9時を過ぎる頃から団体の登山客も押し寄せるようになり、またいつもの喧噪が始まりました。 牧ノ戸峠に帰着した午前11時過ぎ、駐車場は朝とは比べものにならないほどの大混雑でした。

【4月16日】フクジュソウ

4月16日の九重連山は晴。午前7時頃の七里田付近の気温は4℃。 昨日の雨はすっかり回復し、早朝から青空が広がります。九重連山に少々雲はかかるものの、こちらも回復傾向です。 麓の木々は新緑の芽吹きが始まり、山桜と木々の芽吹きが山肌を絶妙な彩りの変えているのですが、山頂付近は相変わらず単調なままで、木々の芽もやっとふくらみかけたところです。
午前7時過ぎに有氏牧野道を経てガラン台から入山。大船山は1月前に残雪で滑落し腰を痛めて以来でありますが、さすがにもう雪は残っておらず、安心して歩けます。 春の日が眩しい登路脇の林にはバイケイソウの芽吹きも鮮やかです。木々の芽吹きも始まり、このまま一気に春色になりそうです。 徐々に高度を上げるに従い景色は単調になり、時折森の地面に咲く春の花々を楽しみながらも、大船山頂に着きました。さすがに山頂付近は強烈な風が吹き、凍てつく寒さです。 山頂直下の御池へ下って風を避けるものの、ここも体感的にかなり寒いのです。こうなると長居は無用で、東尾根を経由して前セリへと下りました。
この時期には大船山東尾根を下った前セリにあるコブシの株が花を咲かせています。やはり今年も優しく迎えてくれたのですが、何だか今年は気のせいか花が少なめです。 マンサクも何だか咲いたんだか咲いてないんだか分からない株が多かったので、今年は木々の花が全般に裏年となるのかも知れません。
入山から4時間ほどで帰着。小休止した後、黒岳周辺の散策開始です。 山頂付近はまだ単調な冬枯れを思わせる景色が続いているのですが、山麓はすっかり春爛漫。新緑の蛍光色の緑も眩しく輝き、春の花が咲き誇ります。 上空には青空が広がり、少々景色は霞むものの春の暖かな日差しに恵まれて気温は上昇し、花々が競演する暖かな春の一日を満喫したところです。

【4月23日】森の精(前岳のツクシシャクナゲ)

4月22日の九重連山は雨。午前7時頃の飯田高原の気温は5℃。午前中は曇という予報は図らずも大はずれとなり、 すでに7時前には雨が降り始めます。断続的に強く降る雨は一向に止む気配もなく、長者原付近でしばらく待機するものの潔くあきらめ、一番風呂の温泉に向かいます。 さすがにこの時間ですと露天風呂も貸し切りで、いつもは混雑するので何だかすごく得をした気分になります。 露天風呂からガスに霞む九重連山を眺めつつ、リベンジを誓うのでありました。

明けて4月23日、午前7時頃の飯田高原付近の気温は8℃。九重連山の山頂付近の雨は止んでいますがガスがかかる状態です。 毎年ゴールデンウィークが近づくと、前岳のツクシシャクナゲの咲き具合がそろそろ気になり始めます。昨年は大咲きしたので、今年はあまり期待しない・・・ことにしましょう。 ひとまず白水鉱泉の白泉荘付近の 前岳登路へ向かいます。すでに登路入り口付近のシャクナゲは、ほぼ満開に近い状態です。 この場所のシャクナゲはおそらく移植されたものでしょうが、標高700m強の白泉荘からの登路に入り標高900m付近までの自生している株もすでに咲いているものもかなり見かけました。
黒嶽荘からの登路と合流する白水分れ付近を過ぎ標高950m付近まで、ツボミも膨らみ色付いた花弁が覗く株も かなり見かけます。うっすらとガスがかかる中を徐々に高度を上げ、 標高1000mを超えた場所にあるテラス状の岩場からも視界は効かず、天候が良ければ阿蘇野を見渡すことのできる絶好のビューポイントでありますが、このガスでは仕方のないところです。 付近のシャクナゲもツボミが多く、この場所から前岳山頂付近にかけては、さすがに昨年ほどではないものの、今年も例年並みにツボミが付いており、ゴールデンウイーク前後には楽しめそうです。

【4月29日】森の精(前岳のツクシシャクナゲ)

4月29日の九重連山は晴。正午頃には少々雲も広がりましたが、おおむね晴れて快適な山行日和です。今回は春恒例の友人との山行であります。 先週に続き、例年並みというかまずまずの咲き具合である前岳のツクシシャ クナゲ鑑賞に向かいます。本日は黒岳山開きです。 午前10時から白水鉱泉そばの「じろそ村キャンプ場」で山開きのイベントが開催され、その後前岳へのシャクナゲ鑑賞登山ということですから、相当な混雑が予想されます。
午前9時頃に白泉荘付近の登路から入山。薄く雲が広がるものの、雲間から青空も覗く天候で、新緑に覆われた森に春の陽が注ぎます。 ツクシシャクナゲを楽しみながら、徐々に高度を上げていくと、午前10 時前にはイベント会場からのマイクでの音声が声高に周囲の山々に響き渡るようになりました。 先週に比べはるかに登山客も多く、しかも今回は単独行ではないため、急登の登路をゆっくりのんびりと登ります。 気になるツクシシャクナゲの開花状況については、以下の画像で詳しく紹介しますが、標高800mから900m付近ではおおむね満開。標高1000m付近では3〜4部咲きというところでしょうか。 先週お知らせのとおり、今年も思いの外ツボミが多く、この連休中に十分に楽しめる状況です。さすがに山頂付近はまだつぼみが固く彩りすら見られません。 こちらも、昨年よりやはりツボミは少ない状況ですが、ほとんど花を咲かせない年もあることを思えば、やはり例年並みというところでしょうか。
正午前になると狭い山頂付近にも徐々に登山客が増えてきました。数名単位の登山客が多く、山頂付近で木々の隙間を見つけては、思い思いに休憩中です。 13時前には一段と登山客が増え始め、山頂付近の限られた休憩場所を 譲るためもあって山を下ることにしました。 途中でシャクナゲ鑑賞登山の団体とすれ違うため少々時間を要したものの、15時頃には登山口へ帰着しました。

2006年5月
【5月3日】テントサイトの夜は更けて(坊ガツル野営場)

5月3日の九重連山は快晴。13時頃の飯田高原の気温は17℃。待ちに待った5連休の初日、のんびり迎えた朝のTVでは日本各地の渋滞報道が流れています。 行楽地も軒並み大混雑で、メジャーなところでは「博多どんたく港まつり」が 200万人を超える人出の予想で、想像を絶する混雑ぶりがうかがえます。 九重連山も各地からの観光客が押し寄せ大混雑であります。その経済効果を考えると、これは大変に喜ばしいことです。 ただし、現着が遅くなると駐車場が満車で車を駐車する場所がないとか、都会の喧噪から逃れ自然を満喫するはずで訪れた坊ガツルで、 テントの設営場所を探すのに苦労するほど混雑しているとか、そんな不満は決してもらさず、寛容な心と強い忍耐力が必要なことは言うまでもありません。
行楽地の混雑情報を聞くにつれ「何だかんだ言ってもここは人並みに喧噪に身をまかせるのも楽しいかも!」という単純な理由で坊ガツル野営場に向かうことにしました。 14時前に吉部から入山、鳴子川沿いの新緑に覆われた森の中をのんびりと歩きます。頭上は蛍光色に輝く新緑が覆い、足下には可憐な花が咲いています。 新緑の森は自然のパワーを感じさせ、鳴子川の瀬音は優しく響き、快適な山行です。15時過ぎに坊ガツル野営場に着いてビックリ!炊飯場周辺に忽然とテント村が出現しています。 その迫力に圧倒され、中心部からかなり距離を置き普段は静かな場所にテントを設営した・・・、つもりでした。 しかしながら、午後4時を過ぎてもテントは増え続け、坊ガツル野営場のテントサイトは徐々に拡大して行きます。 私のテントも隣との距離は2mにも満たず、いつの間にか周囲はテントで囲まれそうになっていました。
日没までにはかなり時間もありますし、ひとまずこの喧噪を逃れ 鉾立峠から立中山へと向かいます。立中山から坊ガツルの夕暮れを見届け、法華院温泉山荘でビールを調達します。 テントサイトに戻った19時過ぎ、周囲にはテントがさらに増えています。すでに薄暗さを感じるようになっており、ランタンに灯を点し遅めの夕食を済ませます。 星空を肴に飲む ビールの味はまた格別ですね。夕食を終えテントに転がり込んで間もなく、周囲からはイビキの大合唱が聞こえてきました。 坊ガツルの夜の静寂を破り、大地を揺るがし響き渡るイビキは驚愕ものでありますが、そんなものには何ら臆することなく、 スキットルのウイスキーが空になる頃には期せずして酩酊し、寝てしまったのであります。恐るべし酒の威力。坊ガツルの夜は、かくも賑々しく更けていくのでありました。

【5月4日】テントの花咲く坊ガツル野営場

冬用のシュラフを持参したため夜中に暑くなり一度目を覚ましたものの、見事に爆睡。気がつくとすでに4時を過ぎています。装備を確認し、テントの外に出ると恐ろしく寒いのです。 何とテントの外張りの一部が凍り付いています。夏場であればご来光目当ての登山客で早朝から騒々しく、ゆっくり朝寝を楽しんでいる状況ではないところですが、テントから這い出す人影もありません。 夏場の週末とは、登山客の客層が明らかに異なるようで、ガイドでもいなければご来光登山のために日の出前から動き出す人は少ないようです。
段原付近で空が白み始め、山頂着の5時20分過ぎ、東の地平線上にかかる雲の上に太陽が輝き始めました。 米窪に朝日が注ぎ、長く伸びる影の向こうでは三俣山もまた朝日に照らされ、荘厳なショーの開演です。刻々と変わりゆく光と陰の演出を楽しみつつ、これまた荘厳な朝食の開始です。 ロケーションが良ければ何でも美味しくいただけるわけで、アルファー化米と魚肉ソーセージと味噌汁の豪華な朝食は、三つ星レストランの贅を尽くした料理に匹敵するうまさです。 結局7時頃まで山頂に居座っていたのですが、登ってくる人は数人程度で、大船山を下る頃にやっと登山者が増え始める状態でした。
坊ガツルに下った8時過ぎ、野営場はテントを撤収する人が目立ちます。すでに私の隣のテントは撤収されていました。 テントの朝露を払い、外張りが乾くのを待ち午前9時頃には撤収です。坊ガツル上空に雲はなく、真っ青な青空が広がる中、山を下ります。 吉部へ戻る道々では、森の中にひっそりと咲く可憐な花を楽しみつつ、鳴子川の清流に沿って輝く 新緑を堪能し、再び森のパワーを全身に蓄積したところです。

【5月14日】ハルリンドウ咲く

5月14日の九重連山は曇のち晴。午前6時頃の長者原の気温は5℃。早朝から上空の雲の切れ間は太陽が顔を出しそうになるものの、 再び雲に隠れる天候です。長者原付近から望む三俣山や星生山付近はガスがかかっています。
ガスが薄れるのを待ち、大曲から入山しました。すがもり越はかろうじてガスが晴れていますが、三俣山は断続的にガスがかかる状態です。 避難小屋で風を避けて味噌汁とおにぎりで遅めの朝食を摂りながら様子見です。 気温は3℃で風も強く、手がかじかんできますが、暖かな味噌汁で元気を回復しました。 7時30分過ぎには2人の登山客が避難小屋にやってきました。徐々にではありますが、ガスが断続的に薄れていきます。天候の回復に期待し午前8時前に三俣山へ取り付きました。 西峰山頂 から本峰付近はやはりガスに覆われ景色は開けません。山頂付近は風が強いため、ひとまず大鍋に下り風をしのぎます。 大鍋付近はツクシシャクナゲの株が多く、昨年は前岳同様に大咲きしたのですが、今年は花芽は昨年より明らかに少なくなっています。 前岳に比べて標高が高いためかまだツボミの状態で、やっと赤紫色の花弁が覗いている株が目立つ状態です。北峰斜面と4峰下にそれぞれ1株がかろうじて咲いていました。
大鍋で風を避けてしばらく待機し、午前9時頃にガスが晴れてくるのを待って大鍋を横断し南峰へ向かいます。 景色は少々霞むものの、徐々に天候は回復していきました。すがもり越へ戻った10時30分頃にすっかり天候も回復しました。 絶好の山行日和となり、すがもり越付近も登山客で賑わい始めています。強めの風は相変わらず吹いていましたが、気温も上昇し日差しは暖かく快適です。 しかしながらこの時期の日差しには要注意で、帰宅後に風呂に入って気づいたのですが、日焼けして首筋がヒリヒリします。 山行の際は日焼け対策を十分にしましょう。盛夏の頃までには肌を慣らしておかなければなりませんね。

【5月20日】イワカガミ

5月20日の九重連山は雨のち晴。13時頃の長者原の気温は18℃。朝は昨夜までの雨が残りガスに覆われていましたが、予報どおり午後から徐々に雲も薄れ、青空が広がりました。 三俣山山頂付近にわずかにガスが残る中、大曲から星生山直登 ルートへ入ります。雨上がりで一段と滑る急登の登路を慎重に登ります。 登路脇にはすでにミヤマキリシマが咲き始めています。イワカガミも群生して咲いており、季節が晩春から初夏へと確実に移ろっていることを実感します。
山頂付近は風も強く吹いており、ウインドブレーカーを着用しました。午前の天候が悪く入山が遅くなったためでしょうか、見下ろす西千里ヶ浜は15時を過ぎても久住山を目指す登山客が行き交っています。 星生山頂で小休止し、稜線を経て星生崎 から久住分れへ下りました。16時前になると、さすがに登山客も少なくなり始めました。 徐々に日も傾く中を空池から 御池へと向かいます。 御池の対岸に一人の登山客はいましたが、中岳付近にかけて閑散としています。 時折マリンブルーの不思議な色合いの湖を風が吹き抜け湖面がざわめきます。人の気配が希薄なためか、ここでは静かに時間が流れているように感じます。
久住分れから北千里ヶ浜へ下る頃には、傾き始めた晩春の日に硫黄山の岩塊の陰が延び北千里ヶ浜を覆っていきます。17時を過ぎたすがもり越へも登山客が時折やってきます。 法華院山荘に宿泊するのでしょうか。天候が良ければ日没の19時頃までは十分に明るいのですが、日没後は急に暗くなりますのでライトなどの装備があっても慣れない登路では要注意です。
三俣山あたりで日没まで待っても良いかとも考えたのですが、西の空には薄雲も広がっています。そして何よりもそろそろ燃料切れです。 坊ガツル泊なら全く問題ありませんが、これから帰宅となるとさすがにここでの燃料補給はできません。そんなことで大曲に帰着後は速攻で帰宅し、エタノール燃料を補給したことはいうまでもありません。(笑)

【5月27日】タデ原から望むガスかかる指山

5月27日の九重連山は雨。15時頃の長者原の気温は18℃。早朝から実家の苗作りを手伝い、正午前に終了。すぐに所用のため大分市へ向かいます。 帰路、少々(実はかなり)遠回りをした長者原付近では雲が切れ青空が覗いているではないですか。 山頂付近はガスがかかっているのですが、こうなると入山したくなるのが人情というもので、速攻で大曲からすがもり越へ向かいます。
結果的にはこれが大外れで、16時過ぎにはガスによる霧雨状の雨粒とは明らかに異なる大粒の雨が降り始めました。 すがもり避難小屋で1時間あまり待機しましたが、雨はおろかガスも一向に薄れる気配はなく、17時過ぎにあえなく退散であります。

明けて5月28日の九重連山は曇。午前7時頃の飯田高原の気温は14度。雨は降っていませんが山頂付近はガス覆っています。 その中で最もガスが薄いのは平治岳 で、ミヤマキリシマの開花状況も気になるところですので、吉部の登山口へ急ぎます。 例年この時期の吉部付近は平治岳や北大船山 付近のミヤマキリシマ目当ての登山客で大混雑するのですが、今日は午前7時を過ぎても駐車スペースが残っています。
今年のミヤマキリシマは、開花が遅れているようで、大戸越付近ではまだつぼみが多く、開花している株が点々と色付いている程度です。 ミヤマキリシマは今年はいわゆる裏年ということで、昨年より花も少なめですが、裏年であっても全く咲かないということはでなく、ツボミは少ないのですが、今年もそれなりに楽しめそうです。
大戸越から平治岳の南峰にかけては、これからの天候次第ではありますが、見頃となるまでにおおむね2週間以上はかかりそう です。 平治岳山頂付近は今年も虫害が深刻で、葉を食い尽くされた株は枯れたように樹勢をなくしています。山頂付近は強烈な 風が吹き抜け、ガスもかかり視界も開けません。 さすがに訪れる登山者も少なく、こうなると長居は無用でありまして、早々に下ることにします。 平治岳北登路は相変わらすクロボクの登路が非常に滑りやすく、慎重に下ったのですが、当然転倒は免れず、泥にまみれて大船林道へ下りました。


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