2006年 夏

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2006年6月

【6月3・4日】くじゅう山開き野営

【6月3日】
6月3日の九重連山は晴。12時頃の飯田高原の気温は21℃。今回は遠来の知人も加わり恒例の友人との山行です。 坊ガツル野営場で身内 での前夜祭を開き、今年の山行の安全を祈願?しようという実に厳かな夜になるはずです。 実際は単に「坊ガツルの大自然の中で飲もう!」 という極めて不純な動機だったりするわけでありますが・・。
13時過ぎに吉部から入山。鳴子川沿いから大船林道を経て坊ガツルへ向かいます。天候は快晴に近く、初夏の日に包まれた坊ガツル付近では、 盛夏の頃に比べればまだましとはいえ野営の装備を担 いでいると意識が遠くなるほど暑く感じます。坊ガツル野営場は思いの外テントも少なく、拍子抜けするほどです。 幕営場所確保のためと荷揚げで先発3人で登ってきたのですが、この程度なら後発の3人と夕刻 から入山しても良かったかもしれません。 今や完全に定着した感のある坊ガツル野営場名物「いびきの大合唱」を避けて静かな環境を確保するため、野営場中央部から離れた場所にテントを設営しました。 その後、残留の2人に主食材?となるビールの買い出しを依頼し、私は後発のガイド のため吉部へと下りました。
16時過ぎ、遠来の知人を含めた後発組と合流し、再び鳴子川沿いの登路を坊ガツルへと向かいます。 本日2度目の坊ガツルへの道となる わけで、日も傾き山陰では薄暗くなりかけた登路は風も爽やかです。 18時過ぎに坊ガツル 野営場で先発組と合流。 地元組の半数に加え、関東と福岡などそれぞれ仕事先は異なるものの、 こうして久々に再会すると目的は1つでありまして、厳粛かつお互いに言いたい放題の「厳か」と表現するには余りにほど遠い前夜祭が早速始まったのは、 今更いうまでもありません。 前夜祭は粛々と挙行され、坊ガツルの夜が静か?に更けていったのです。

【6月4日】
昨夜の宴の余韻が残るもうろうとした意識の中で、ごそごそとテントを這い出した午前6時前、周囲の山頂付近にガスはかかるものの絶好の山開き日和を迎えました。 すでに大船山や平治岳へと向かう団体が野営場付近を通過していきます。午前7時頃には県警のパトカーも到着しました。 午前7時30分頃、周囲が一段と騒然とし始める中を行政関係者が入山して行き、その後のガイドに先導された登山客の 大行列に混じって坊ガツルを発ちました。 さながらその昔に国会で流行した?牛歩戦術を思わせるほどの、実にのんびりとしたペースで先行者に続き大船山頂を目指します。
大船山頂も大混雑で、山頂際が始まる30分前の山頂には登山客があふれ、もう下から登ってこられる状態ではなくなりました。 帰路に聞 いた、当時段原から山頂の途中で待っていたという登山客の情報では、山頂祭が行われていた午前10時前からの1時間余り、 全く登山者 の列が動かなかったということで、これまた驚愕の混雑ぶりであります。
山頂祭が始まった10時過ぎ、上空には取材のヘリ3機とセスナが1機飛来し爆音が響き渡ります。ヘリが山頂周辺を周回しているため 山頂祭関係者の挨拶も爆音にかき消されてしまいます。 何だかよく分からないままに気がつけば万歳三唱という運びになり、あっけなく山開き山頂祭は終了しました。 山頂祭後は段原への下りが再び大混雑で、長蛇の列と化して下るペースを乱さないよう人波にもまれて 坊ガツルに着いたところです。
自宅へ戻り、大混雑の山開き山頂祭に思いを馳せるにつけ、誰もいなくなった大船山頂で静かに望む夕暮れを妙に恋しく感じたのは私一人ではないはずです。 九重連山の楽しみ方は人それぞれで、山開き山頂祭の混雑が楽しいと感じる人もいれば、厳冬の大船山頂の凍てつく寒さに陶酔する人もいるのでしょう。 ともかく多様な価値観が交錯する九重連山ですが、その美しい景観がいつまでも維持 されることを願って止みません。

【6月10日】平治岳と大船山のミヤマキリシマ

6月10日の九重連山は曇。午前6時過ぎの飯田高原の気温は12℃。熱狂的な賑わいを見せた山開きを終えたものの、今度は少々遅れ気味のミヤマキリシマがピークを迎えつつあり、 花を求めて訪れる団体の登山客が引きも切らず、ミヤマキリシマ群生地は大混雑です。午前7時前に吉部から入山。まずは平治岳に向かうべく鳴子川沿いの登路を急ぎます。 平治岳周辺でミヤマキリシマがピークを迎える頃、週末の大戸越付近は大混雑し、午前8時を過ぎる頃から平治岳南峰への登路には登山客の長い列ができ始めます。 当然狭い山頂付近の登路は大混雑しますので、混雑を避けるには午前8時過ぎには大戸越に下っておけるよう、早めに入山することをお勧めします。
遅めの入山となったため、大混雑を避けて平治岳北登路から山頂へ向かいました。平治岳北登路はミヤマキリシマのピーク時に利用者が急増するのですが、路面は決して良好ではありません。 クロボクに覆われた登路は先行者に練り上げられ、泥濘地と化し著しく滑いやすい状態ですから、積極的にお勧めできるものではありません。 それでも大戸越から平治岳山頂にかけての混雑を考えると、まだ利用者が 少ない方が良いという場合は、泥に足をとられて転倒し泥まみれになることを覚悟の上で歩かれた方がよいでしょう。
気になるミヤマキリシマの開花の概況は以下のとおりです。

平治岳山頂西付近 ・ ・ ・ ・虫害がひどく、咲くのか咲かないのかも不明。色づきもほとんどなし。しばらく静観しましょう。
平治岳山頂南斜面 ・ ・ ・ ・2〜3分咲きかな〜?虫害はあるものの、それなりに色付き始めてます。期待できそうです。
平治岳南の峰付近 ・ ・ ・ ・大戸越から登ると8合目付近から南峰の山頂付近は虫害が少なく良好。8分咲き程度で見頃です。
大戸越周辺付近 ・ ・ ・ ・虫害がひどく、残った株もすでに花期を終えたものが目立ちます。残念!

平治岳を下り、登山客があふれる大戸越を抜けて北大船山へ向かいます。北大船山周辺でも思いの外花は多く、裏年という先入観から今年は期待していなかったのですが、 虫害はあるものの予想以上の花芽の多さはうれしい誤算で、思わず笑みがこぼれます。北大船付近の虫害は、どうやら昨年よりかなり少なくなっているような気がします。 北大船付近の概況は以下のとおりです。
北大船山頂北側 ・ ・ ・ ・5部咲きかな〜?虫害が少なく良好な状態の株が多いようです。
北大船山頂付近 ・ ・ ・ ・7〜8部咲きかな〜?来週にかけてそろそろ見頃です。
段原周辺 ・ ・ ・ ・虫害を受けた株が多めですが、花は3〜4部咲きかな〜?
実に自信のない無責任な開花状況のお知らせですが、虫害を受けた株が咲くのか咲かないのかも不明で何とも判断し辛いところであります。 平治岳から北大船山、坊ガツルへ下る途中に20名〜40名を超える団体何組かに遭遇しました。例の○○ツアーのバッチを付けたかなり 高齢の方が主体のご一行です。 ゆっくりと慎重に歩かれていて、登路はもう大混雑。例年のことですが、やはりこの時期は花も多いが人も 多く、人疲れでへとへとです。

【6月16日】北大船山のミヤマキリシマ

6月16日の九重連山は曇時々晴。午前6時頃の飯田高原の気温は9℃。ミヤマキリシマ開花時期はさすがに平日でも登山客が多く、 午前6時前の吉部登山道入り口付近にはすでに数台の車が駐車しており、その後も徐々に車が増えていきます。早々に入山し、平治岳へ向かいます。 樹間からは初夏の日が注ぎ、快適で贅沢な山行日和であります。山頂付近も登山客が目立ちます。
裏年とはいえ意外に健闘している平治岳のミヤマキリシマは、やはりそれなりに咲いてくれました。山頂付近の虫害がひどい株は咲きそうにもありませんが、 それ以外の場所ではシャクトリムシが成虫となり羽化したため、再度葉が出て虫害から回復し始めた株も多く、残っていた花芽が咲いているものが目立ちます。 さすがに昨年のように大咲きはしていませんが、例年はこの程度だ ったかと思えるほど、まずまずの咲き具合です。特に大戸越から南の峰斜面は現在ほぼ満開で、色落ちした花が増えていますが、 まだ 十分きれいに咲いています。平治岳のミヤマキリシマは全体的に見ると現在がピークで、これから徐々に花も減っていくものと思われます。
北大船山へ向かうと、周囲のミヤマキリシマもほぼ満開で、虫害を受けていた株も見事に復活して花を咲かせているものが多く、花は少ないとはいえ、これほど花を付けた株が多ければ、 全体としてはまずまずの咲き具合です。北大船山頂付近から段原付近にかけてのミヤマキリシマの花はほぼ満開です。さすがに平日とあって訪れる登山客は先週末より遙かに少ないのですが、 さすがにそこは ミヤマキリシマのシーズン中ということで段原付近へも次々と登山客がやってきます。大船山頂には20人程度の登山客がいます。 天候がどんなに良くても厳冬期の週末の大船山頂では、 これほどの登山客が訪れることはまずありえません。オフシーズンには考えられないことです。大船山頂でゆっくりと休憩してから坊ガツルを経て山を下りました。 法華院温泉山荘付近では山荘前の橋の取り付け道路工事も行われており、大型の重機が坊ガツル付近の道路にも停められていました。
平治岳から北大船山付近にかけての九重連山で最もメジャーなミヤマキリシマ群生地は、今日あたりがピークまたは多少ピークを過ぎたあたりで、 やっと文字通り山を越えた気がします。咲くのか咲かないのか、いつ頃かピークになるのかと毎年気をもむ訳で、ミヤマキリシマの花を楽しみにしているのは誰しも同じです。 その昔、桜を想いながら在原業平は、桜を待つ人の心を「世の中に絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし」と詠んだわけで、 まさに九重連山のミヤマキリシマはそんな桜をそのまま置き換えてみたくなるのであります。いつ咲くのか、そして咲くのか咲かないのかと、やきもきしながら開花を待つ心境は全く同じなのです。 やっとピークが訪れ少々寂しい思いと、これからまたやっと静かな山が帰ってくるんだといううれしさが複雑に交錯している状態です。
今年のミヤマキリシマレポートは今回で終了です。次週からはお手軽なショートコースの山行レポートに戻ります。折しも梅雨の真っ只中で、来週末の山行ができるのかどうかも予想すらつきません。 天候が悪ければ山行は中止すれば済むことです。 願わくば 昨年のような集中豪雨による甚大な被害がでないよう、この梅雨が無事に明けてくれればと思う今日この頃です。

【6月24日】大戸越のオオヤマレンゲ

6月24日の九重連山は曇。午前10時前の飯田高原の気温は20℃。昨日来の雨は硫黄山観測点ですでに200mmを超えて います。 朝方まで降雨を記録していましたが、午前10時前には雨もあがり、雲間から薄日も差すようになってきました。6月下旬にさしかかり、まさに今が梅雨本番で、 大雨に関する警報が出ています。しかしながら実際の天候は全く気まぐれで、予報 とは裏腹に雲の切れ間から青空すら覗きます。天候の回復を待ち、午前10時過ぎに吉部から入山しました。
登路は、つい先ほどまでの雨をたっぷり含んでズルズルに滑ります。水量を増した鳴子川の瀬音が一段と大きく響く登路を歩くと、登路を覆う樹木から水滴が滴ります。薄日も差すようになり、 天候は小康状態が続くかと思いきや、それほど甘くはなく、午後には一時少々雨もぱらつきました。ひとまず先週からの懸案事項でありますオオヤマレンゲの開花状況確認のために大戸越へ急ぎます。 大船林道終点から、平治岳西斜面を巻いて大戸越へ向かう登路へ入ります。
大戸越は、先週までのミヤマキリシマのピークの頃とは一変して閑散としており、誰一人訪れる人もいません。 平治岳南斜面の ミヤマキリシマは花期を終え、虫害がひどかった大戸越付近のミヤマキリシマの株も葉を付け、虫害から随分と回復していました。大戸越付近でも、 この時期はベニバナニシキウツギの花が目立ちます。天候も依然小康状態というものの、すでに三俣山上 空にはうっすらとガスがかかり始め、のんびりしている場合ではないのです。 まずは山行の主目的でありますオオヤマレンゲが ある場所へ急ぎます。
咲いていました!今回が初対面のはず・・・ですが、どうもやはり以前どこかで撮影していた気がします。ともかく曖昧な記憶ですが、10年以上前だったかな・・・。 何はともあれ今年の大戸越のオオヤマレンゲは無事に開花していました。甘いフルーツ系の香りが漂います。 甘い香りというのも実は変な表現で、甘いのは味覚で香りは嗅覚によるものですから明らかに別物です。まあそんなことで悩んでも仕方がないわけで、 この香りを例えると熟したリンゴに近い感じでしょうか。うーん、少し違うかな〜? この香りにも確かに記憶があるのですが、いつのことだったか思いだせないほど昔のことだったような・・・。
大戸越直近のオオヤマレンゲは、ちょうど登路真上に咲いていて、雨水にえぐられた足場が悪い登路は雨を含んで滑るため、三脚を立てるのにも苦労します。 貴婦人とのお付き合いはかくも苦労するものかと苦笑しつつ、ふと気がつくとすでにこの場所に 1時間近くいたわけで、すでに13時を過ぎています。 大戸越から北大船山への登路途中にはオオヤマレンゲの株が点在しているので、他の株の開花状況も気になるところですが徐々に平治岳付近のガスが濃くなり始め、 天候がいつまで保つのか不安を感 じさせる状況では、さすがに更に上へ向かう気にはなりません。後ろ髪を引かれる思いで大戸越へ戻り、 小休止してから再び往路と同じ最短コースで山を下りました。吉部へ戻る途中の14時過ぎ、大船林道で小雨がぱらつきましたが、雨具を着用するまでもなく山を下り終えました。

2006年7月
【7月8日】雨ヶ池のノハナショウブ

7月8日の九重連山は雨のち曇。午前8時過ぎの長者原の気温は20℃。2週間ぶりの九重連山は、そぼ降る雨がお出迎えです。 先週末は関東某所をあわただしく駆け回り、帰路は空港での時間調整をかね、景色が良いので毎度お世話になる浜松町の世界貿易センタービルの展望所から、 このところ何かにつけてお騒がせの六本木ヒルズを始め、わずかに霞んだビッグシティー東京のビル群を眺めながら、やっと一息ついたものです。この街で働き生活するということはどういうことなのだろうと、 毎回訪れる度に 想像してはみるのですが、自分自身の日常である田舎暮らしとのあまりの落差に見当も付かないというのが本音であります。しかし、私自身の親類縁者はもとより、 兄弟ですら現実にこの街で仕事をし生活をしているわけで、人と金と物が集中する首都東京の巨大さには、毎回驚くばかりなのです。
昨年の集中豪雨禍から1年が経ち、大規模な土石流が発生した三俣山周辺では現在保全工事が行われており、重機を使った作業が進められており、エンジン音が聞こえてきます。 午前9時過ぎには雨脚も弱まり、天候も小康状態となってきましたので、満を 持してタデ原木道から入山しました。しかし梅雨真っ盛りのことですから、天候もいつまで保つのか分からないわけで、 ひとまず梅雨の雨を満々と湛えているであろう雨が池へ急ぎます。登路脇には先ほどまでの雨に濡れたヤマアジサイが優しく迎えてくれます。雨が池に着く頃には上空の雲も随分と薄れ、 時折薄日すら差すようになってくるほど天候も回復しました。
雨が池は梅雨の雨を満々と湛え、立派な「池」になっています。この時期は、雨が池の木道をはさんで反対側(上湯沢側)にも池が出現しますし、雨量が多いときは木道周辺まですっかり水没してしまいます。 雨が池周辺ではイブキトラノオやノハナショウブが風に揺れ、足下にはシライトソウも咲いています。折しも梅雨の真っ只中、梅雨前線は少々北上しているとはいえ、 AMラジオには雷雲の発生を知らせる雑音も混じる状態ですから、この小康状態 の天候もいつまで保つのか全く分かりません。ここはいさぎよく退散し、タデ原周辺をゆっくりと散策することにして、 山を下りま した。結果的には天候は午後も相変わらずの小康状態で、上空には雲間から青空も覗く状態が続いたわけで、少々もったいない 気もしました。
薄日が差し木道もすっかり乾いたタデ原で、高原を渡る心地よい風に吹かれながらのんびりと散策をしました。キスゲ、ノハナショウブ、オカトラノオ、ノアザミ、ハンカイソウ、 シライトソウなどの野草が観察できます。木道に設けられたテーブル状のベンチに横になり周囲を眺めながらゆっくりと休憩したせいか、帰宅後には随分と日焼けしていることに気づき ました。

【7月15日】ノハナショウブ

7月15日の九重連山は晴のち曇。午前6時前の長者原の気温は21℃。ガスが薄れ始めるまで待機し、午前6時頃に大曲から入山しました。
すがもり越に着く頃にはすっかりガスも晴れ、まぶしい朝日が注ぎます。このところ曇り空に追われて急ぎ足の山行が続いていただけに、今日は清冽な朝を堪能しつつ、 すがもり避難小屋で遅めの朝食をのんびりと摂るほどの余裕の山行です。一段と緑濃い山肌が朝日に照ら されて輝きます。梅雨も終わりが近づき、周囲もすっかり夏景色です。
午前7時を過ぎ、すがもり越も徐々に登山客が増えてきましたので、まずは三俣山へ向かいます。すっかり夏の景色となった周囲の山肌 を眺めながら西峰を経て本峰から南峰へ向かいました。 南峰から見下ろすと、三俣山南斜面の昨年の集中豪雨禍で大規模な土石流が発生 し法華院温泉山荘が被害を受けた場所で、新たな砂防ダムを建設するための工事が行われており、 重機の作業音が響いてきます。のんびりと景色を楽しんでいると、午前9時前には再び山頂付近にガスが押し寄せたため、南峰から坊ガツルへと下りました。
坊ガツル野営場付近では山頂付近を覆うガスが時折薄れ、雲間からは盛夏の日が刺すように注ぎます。野営場にはノハナショウブが咲い ています。 正午前にはテントも徐々に増えていきました。法華院山荘付近では、前述のように土石流が発生した場所で工事中が行われ ており、重機のエンジン音が響いています。 迂回路が設けられた北千里ヶ浜への登路から、すがもり越を経て山を下りました。午後にかけ雲は少々増えてきましたが、天候は大きく崩れることもなく、 久しぶりに好天の山行ができました。むしろ適度に曇っていたおかげで、晴天よりも快適だったかも知れません。

【7月22日】久住山下のノリウツギの向こうに望む由布岳

7月22日の九重連山は曇のち雨。午前6時頃の長者原の気温は19℃。早朝は雲間から青空も覗く状態でしたが、天候は徐々に悪化の傾向で、 予報では午後からは雨ということです。例によって少々遅めの出発となり、牧ノ戸峠に着いたのはすでに午前6時を過ぎてしまいました。ところが、駐車場には1台の車も駐車していません。 平日ならばともかく、夏の休日で、しかも雨も全く降っていない天候ですから、これは尋常ではありません。
貸し切りの登山道には先行者の足跡が1筋あります。雨上がりの登路に残る足跡を見ると、往復した様子です。どうやらすでに下ってしま ったようで、貸し切りの登路を快適に歩けます。 何しろ牧ノ戸峠から久住山へのルートは景色も優れ、牧ノ戸峠からの入山であれば標高差 も少なく手軽な山行が楽しめるため、年間を通じて最も混雑するルートです。 しかも夏場には平日でも多くの登山客が押し寄せる九重連山 で最もメジャーなルートですから、前後に全く人がいないというのは幸運です。 こんな時こそ、普段人が多すぎてほとんど寄りつく機会のない久住山へ向かうことにして、黙々と山頂を目指します。1時間強で山頂へ着き、山頂付近で1時間程度休憩していましたが、 その間も 登ってくる人はありませんでした。
眼下には九重連山の各峰が広がり絶景です。前線の影響もあってか阿蘇方面はくすんだ雲海が広がり阿蘇山を見渡すことはできません。 天候は相変わらず小康状態でしたが、午前9時頃にはガスが押し寄せ始めましたので、久住山頂を下り中岳方面へ向かいます。さすがにこれだけの雨量があると空池も水を湛え、 単なる池と化しています。御池は満々と雨水を湛えており、湖畔の登路も水没していました。午前9時30分ころ、御池付近にさしかかったところで雨が降り始めましたので、 早々に下ることにしました。星生崎付近で雨脚も強まり雨具を着用して、久々の雨中山行となりました。

【7月28・29日】夏の大船山頂にて

7月28日の九重連山は晴。18時過ぎの飯田高原の気温は22℃。九州も全域でやっと梅雨明けが宣言されたところで、連日強烈な日差しのせいで、 午後から夕刻にかけてに突然のわか雨が襲ってきます。梅雨明け後は安定した夏空が広がることが多いのですが、どうも 今年は梅雨明けも遅れ、 やっと梅雨明け宣言がなされてもこのような天候ですから、山行など野外の活動では雷雲の発生に十分な注意が 必要です。
明日の山行 の復路、天候が良ければ相当な暑さの移動となることを考慮し、登路が木々に覆われて日陰となり快適な大船林道のルートを利用すべく、18時30分過ぎに吉部から入山しました。
夕闇が覆い始めた登路は何とかライトを使わずに歩け、窓から明かりが漏れる法華院温泉山荘でビールを調達し、野営場にテントを設営 し終えたのはすでに20時30分。 当然ながら真っ暗なわけで、ランタンとヘッドランプの明かりを頼りの設営となりました。満点の星空 が広がり夜が更けていくとともに夜露が深くなる坊ガツル野営場は例によって大賑わいであります。 すっかり酒が回ったと見えて、酔うほどに飲むほどにパワーアップし、何と22時を過ぎても依然坊ガツルの静寂を破り周囲の山々に響き渡るほどの大声で談笑するという、 正に傍若無人・極悪非道・唯我独尊・支離滅裂という形容しがたい恐るべきグループがまき散らす騒音すらものともせず、負けじと酩酊してシュラフに潜り込みました。 テントを設営する場所は慎重に吟味しないといけませんね。

7月29日、気がつくとすでに3時30分です。今から大船山へ向かえば何とか山頂からのご来光が楽しめそうです。早々に装備を整え、 大船山へ向かうべく漆黒の闇に包まれた登路をライトの明かりを頼りに黙々と歩きました。段原に着いた4時30分頃には東の空がうっすらと白み始めています。 地平線には少々雲が広がるものの、雲の縁もわずかに染まり始めています。山頂へ着く頃にはすでにライトも必要ないほど明るくなり、地平線に広がる雲が一層鮮やかに焼け始めて、 いよいよショータイムの開始です。
5時20分頃、地平線を覆う雲の上に太陽が姿を現すと周囲の景色は朝日に照らされて染まります。しかしそれも束の間、日が昇るとともに周囲は一気に明るくなり、 緑濃い山々に盛夏の一日が始まりました。
6時30分を過ぎる頃、すっかり明るくなった山頂にも登山者が訪れるようになりました。中岳方面からガスが流れて山頂付近にかかると、ブロッケンも現れます。しばしガスと戯れた後、 一段と碧い夏空が広がる坊ガツルへと下り、気温が上昇し徐々に暑くなり始める中での撤収となりました。復路は一時上空に雲も広がり、適度に日差しを遮ってくれました。 鳴子川の瀬音を聞きながら川面を渡る涼やかな 風を楽しみつつ、11時過ぎに吉部へ帰着しました。
梅雨明けとともに多くの観光客が訪れる本格的な夏山のシーズンの始まりです。毎回紹介しているように、標高が2000mに満たない九重連山では、 盛夏に炎天下を移動するのは殺人的とも思える暑さとの闘いとなります。特に体力的にハンディのある子どもや高齢者 が同伴する場合は水分の補給に注意し、 事故のない山行を心がけたいものです。これから盛夏の頃には、朝露を帯びた登路を吹く涼しい 朝の風を浴びながらの早朝の移動が何より快適でお勧めです。

2006年8月

【8月4・5日】盛夏の三俣山頂にて

8月4日の九重連山は晴。16時頃の長者原付近の気温は26℃。所用が終わった午後、九重連山へ向かいます。さすがにこれだけ暑くなると、 必然的に九重連山でも気温は上昇するわけで、通常100m標高が高くなるごとに0.6℃気温が低下するということで、 標高1000mの長者原付近で16時頃の気温が26℃というのも計算どおりの結果であります。
17時前に大曲から入山しました。この時間でも晴れていれば強い日差しも雲に隠れて 遮られ、さほど暑さも感じないままにすがもり越まで来ると、北千里ガ浜の向こうにはガスが押し寄せて、 大船山は完全に隠れています。三俣山本峰で日没を迎え、坊ガツルへ下り野営の予定で本峰を目指しますが山頂付近には怪しげなガスが押し寄せています。 西峰付近では完全にガスに巻かれ一時視界も効かなくなる状態でした。19時頃、一時ガスも晴れ西の空を低く覆う雲の中に太陽が沈んでいきました。 日没後の山頂付近は再び濃いガスに覆われ視界も効かなくなり、しかも急激に暗くなります。 ヘッドランプの明かりもガスに拡散して足下も見えづらい状態で、 ガスが薄れるまで待機しました。20時を過ぎるとガスも薄れ、月明かりが照らす九重連山の峰々のシルエットが浮かびます。遠く大分市や湯布院、 玖珠町の街明かりが輝く見事な夜景が楽しめました。

8月5日、午前5時前に再び三俣山南峰山頂へ。東の空が白み始めると間もなく上空に広がる雲も焼け始めます。午前5時20分過ぎ、 地平線を覆う雲の上に太陽が姿を現しました。朝日に照らされた周囲の山々の頂が焼けるのも束の間で、周囲はすぐに明るくなり、また盛夏の一日が始まりました。 そのまま山頂でゆっくりと朝食を摂り、涼風に吹かれて夏の朝を満喫しました。この山頂で朝食というのが、このところ(「といっても、 たまたま2回続いただけではないかい!」という鋭い指摘はご容赦ください) 夏の山行の定番となりつつあります。「前夜に深酒をしなければ、 山頂で朝食なんてチョロいもんだい!」と胸を張って言ってみたいものでありますが、はてさて次回からも続けてできるのかと問われると、これが全く自信がないのであります。(苦笑)
午前9時前には、本峰付近にも次々に登山者がやってくるようになりました。山頂を渡る風は涼しく快適ではありますが、強い日差しに照らされて歩くとさすがに汗が滴ります。 すがもり避難小屋付近では50名程度の小学生の団体とも会い、九重連山の 喧噪の一日を実感した次第です。 それにしても朝から暑くて、午前10時過ぎに長者原へ下った頃の気温はすでに28℃。 風の吹く日陰は涼しく快適ですが、強烈な夏の日差しを受け装備を背負って歩くと、 さすがにめまいがしそうです。盛夏の頃、快適な山行ができるのは、日の出直後の早朝から午前中にかけてが限界です。できれば、11時頃までに下ってこられるようであれば、 まず雷雨に遭う心配もないでしょう。ただし、朝露をまとった登路ではスパッツが必需品です。 この夏、熱中症や炎天下の移動での疲労から生じる滑落や転倒などの事故が発生しないよう願うばかりです。

【8月14・15日】(番外編)夏の大山(弥山)

8月14日、お盆を迎えた鳥取県では厳しい暑さが続き、実家のある鳥取市の気温も連日35℃近くまで上昇しています。すでに正午前には 34℃まで上昇し、 うだるような暑さとなっていました。そんな中、涼を求めて大山を訪れる観光客も多く、大山寺付近の駐車場は県外ナン バーの行楽客の車があふれ、駐車スペースを探すのにも苦労します。 午前中帰省先の実家での所用を済ませて大山へと急ぎ、登山口の大山寺付近に着いた14時頃の気温は28℃。天候は曇りで山頂付近にガスがかかっています。 14時過ぎに夏山登山道から弥山を目指して入山しました。今年も山頂での一泊が楽しめる状況となり、実に喜ばしいところでありますが、実のところ、昨年に続き弥山にすべきか、 はたまた久々のユートピア小屋にすべきか、相当に迷った上での選択です。諸般の事情で昨年に続き弥山に決定したところですが最後までどちらにすべきか迷い続けたのは事実です。 九重連山ですとこのようなことは皆無で、天候や気分次第で適当に散策をしているところでありますが、何しろ大山へは気軽に訪れるということもできないわけで、 これからも機会あるごとに迷うことになりそうです。
大山寺登山口付近の標高は800mで1710mの山頂までは標高差が約900mあり、行程は約2.8kmです。 8合目付近までは延々と続く急登で、樹木が茂り日陰になってはいるのですが盛夏には恐ろしく暑いのです。宿泊装備を担いでの山行では滝のように汗が流れ、着衣もずぶ濡れになります。 水分補給と熱中症には厳重な注意が必要です。ひたすら暑さと戦いつつも、8合目から山頂 までは涼風の吹く木道を快適に歩け、苦労して得た爽快感はまた格別です。 時間的な余裕があれば、ここでもやはり早朝の移動がお勧めです。
山頂付近は時折ガスがかかる状態で、山頂避難小屋に着いた16時30分過ぎ、ひとしきり雨が降りました。 雨は間もなくあがりましたが、相変わらず薄くガスもかかる状態です。上空の雲は徐々に薄れ、18時30分過ぎに地平線を覆う雲に太陽は沈んでいきました。 山頂からのお楽しみはこれからで、眼下に広がる米子市の街明かりと日本海のイカ漁の漁火が望めるはずです。今年は残念ながらガスがかかり少々霞んではいましたが、 山頂からの夜景もほぼ合格点でした。

明けて8月15日、寝たのか寝てないのか分からない不思議な夜はそれでも過ぎて、夜中に何度か目覚めているから多分それなりに寝ているのでしょうが、 浅い眠りのまま何度目かに気づけばすでに4時30分。東の空が薄明に変わりつつあります。大あわてで装備を整えて小屋の外に出ると、山頂標識付近にはすでに3人の人影があります。 聞けば昨夜0時頃から星を眺めながら山頂で過ごしていたということであります。日の出前の東の空が徐々に染まり始める頃、山頂付近はご来光鑑賞の登山客が増えてきました。 眼下に広がっていた街明かりも徐々に薄れ、東の空が薄紅に染まった午前5時30分頃、地平線を覆う雲の上に朝日が現れました。日の出の後は急激に明るくなり、 朝露に 濡れた山頂付近の植物の葉が朝日を受けて輝き、眼下には蒜山高原の盆地を底霧が覆っているのが望めました。
午前6時を過ぎる頃には山頂付近にはますます登山者が増え、山頂避難小屋も登山客で賑わい始めます。早々に朝食を済ませ装備を撤収して付近の木道を散策し、 午前8時前に山頂を後にしました。

【8月20日】泉水山麓のヒゴタイ

8月20日の九重連山は曇時々雨。6時前の長者原付近の気温は19℃。2週間ぶりとなる九重連山は、昨日まで大雨を降らせた台風の余波を思わせるガスに覆われ、 山頂付近は霞んでいました。ガスの切れ間からはうっすらと青空も覗いており、急激に天候も悪化する気配も感じられ ない状況です。ひとまず牧ノ戸峠に向かうと、 午前6時の駐車場は予想どおりかなりの台数の車が駐車しており、久住山へのメインルート起点である牧ノ戸は早朝から混雑を予想させます。再度牧ノ戸峠を下り、大曲から入山しました。 すがもり越に着く6時30分過ぎ、小雨が降り始 めましたので、すがもり避難小屋で朝食を摂りながらしばらく様子を見ることにしました。
7時30分を過ぎても依然山頂付近には断続的にガスがかかる状態でしたが、天候の回復を期待して三俣山へ取り付きました。西峰から4峰、南峰へ向かう途中もガスは時折薄れるものの、 継続的にガスに覆われました。4峰山頂付近で束の間青空が覗き薄日が差したため、実にささやかなブロッケンも現れましたが、それ以外はガスに覆われ撮影もままならないままでした。 南峰へ着いた8時30分頃、ついに小雨が降り始めたため 雨具を着用し、いそいそと退散することとなりました。西峰付近で再び雨が降り止み、 しばし岩に腰掛けてガスの切れ間から覗く北千里ガ浜を眺めていると、あいにくの天候ではありますが20人ほどの団体も通り過ぎて行きます。再び降り出した雨に追われ、 すがもり避難小屋に逃げ込み、のんびりと休憩しました。後は山を下るだけということで、訪れる人もない避難小屋のベンチに寝転がり惰眠をむさぼることにしました。 突然の鐘の音に驚いて目を覚ますと数名のグループが避難小屋に入ってくるところで、すでに10時30分前になっていました。
雨はあがりガスも少々薄れています。それでも天候は劇的に回復する気配もないままで、早々に山を下りました。

【8月26日】星生山の朝

8月26日の九重連山は晴時々曇。午前4時過ぎの牧ノ戸峠の気温は18℃。4時30分前の牧ノ戸峠には、すでにかなりの数の車が駐車しており、 さすがにメジャーなルートだけあって今日も喧噪の予感を感じます。扇ヶ鼻分岐にさしかかる頃にはすでに5時を過ぎ、白み始めた東の空に星生山のシルエットがはっきりと判る状態です。 大急ぎで西千里が浜から星生山頂に駆け登ったのは5時20分で、東の空が染まり始めていました。何とか間一髪で日の出に間に合ったようです。
間もなく東の空にかかる雲の切れ間に太陽が現れ、晩夏の一日が始まりました。山々の影が長く延び、朝露を帯びた登路が徐々に夏の日に包まれていく壮大な朝の ショーを楽しみながら、 恒例の山頂での朝食です。ところが、何と山頂付近にはおびただしい数の 羽蟻がいて、困ったことに食事に群がってくるのです。あげくインスタント味噌汁にダイビングして絶命する羽蟻も続出し、 さらには 首筋から背中にも入り込んで来る始末で、自然が織りなす朝の荘厳なロケーションでの朝食のはずが、羽蟻との壮絶なバトルと化してしまったのであります。
星生山稜線を経由し、星生崎から久住分れへと下り御池へ向かう途中でpiezo氏と会いました。 氏は中岳で日の出鑑賞だったということで、すでに山を下るところでありました。徐々に暑くなっていく中で、満々と水を湛えた御池の縁を迂回し、 中岳から天狗ヶ城を経て久住分れまで戻った頃、周囲はすっかりガスに被われてしまいました。その後も断続的にガスがかかり続けました。晩夏の山行では確実に天気予報を確認し、 特に午後からの雷雲の発生に十分注意したいものです。暑さ対策も兼ね、早朝から午前にかけて の山行がお勧めです。


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