2007年 春

四季のトップへ / 春 /   /  / 

2007年3月

【3月3日】御池の朝

3月3日の九重連山は曇。午前5時過ぎの牧ノ戸峠付近の気温は6℃。曇り空広がる牧ノ戸峠駐車場には、わずかに車が1台駐車するのみで、閑散としています。すでに時刻は5時過ぎで、とても3月初旬とは思えない暖かさの中、徐々に高度を上げていきます。扇ガ鼻下付近にさしかかる頃になっても星生山の向こうの東の空は雲に覆われたままで、朝日の覗く気配すらありません。上空も雲に覆われ御来光は撃沈確定ですから、星生山はパスし西千里ガ浜から久住分れへ向かうことにしました。
御池に着いた7時過ぎ、雲の切れ間から朝日が差し、一時上空に青空も広がりました。その後は再び雲に覆われ終日曇り空となったところです。完全解氷した御池で朝食を済ませてから、湖岸を一周して中岳へ向かいました。9時頃までは御池や中岳周辺を訪れる人もなく、閑散としています。相変わらずの曇り空ですが、風も弱く中岳山頂でもゆっくりと休憩して、天狗ヶ城を経由して牧ノ戸峠へともどります。10時を過ぎる頃からは、毎度のことで登山客が急激に増え始めました。
沓掛山付近はマンサクがかなり咲いていて、ほぼ満開の株もあります。東屋のある展望台から三俣山方面を望むと、沓掛山北斜面は点々と黄色い花を付けた株が目立ちます。沓掛山あたりで1時間あまりマンサクを撮影し牧ノ戸峠へ戻った正午頃、いつになく駐車場は空いています。依然として冬枯れの景色が広がっており、木々が一斉に芽吹き新緑が山を覆う季節までの端境期には、こんなものかもしれません。

【3月10日】すがもり越の朝

3月10日の九重連山は晴のち雨。午前5時過ぎの長者原付近の気温は−3℃。初春の朝、体感する気温は意外に暖かく、冬季の切れるような寒さとは明らかに異なり、なぜか風も暖かさすら感じるのです。徐々に明けていく中、すがもり越に着く頃にはヘッドランプの明かりも不要になりました。気温0℃のすがもり避難小屋にも、先週の雪がわずかに残ります。避難小屋の壁で風を避け日の出を待つことにしました。
6時50分頃に大船山頂の南の肩に早春の朝日が昇ると、周囲は急激に明るくなって行きます。朝食と食後のコーヒータイムを楽しんだ後、三俣山へ取り付きました。先週の寒の戻りで、やまなみハイウェイにもチェーン規制が出されたところで、三俣山西峰から本峰を経て南峰へと向かう登路にも名残雪が残ります。何だか雲行きが怪しくなり、上空はしだいに雲が広がり太陽を隠していきます。予報でも天気は徐々に悪化するということでしたが、変化は予想以上に速く、南峰山頂付近の坊ガツルを見下ろすお気に入りの場所に着く頃には、上空を厚い 雲が覆うようになっていました。三俣山付近は周囲も冬枯れのままで、冬と春の端境期にあって単調な景色の中で長居は無用です。念のため早めに山を下ることにしてすがもり越へ下り、大曲へは9時30分頃に帰着しました。

【3月17日】薄雪のすがもり越

3月17日の九重連山は晴。午前8時過ぎの長者原付近の気温は0℃。初春の朝、上空は雲一つない快晴です。記録的な暖冬といわれた冬を終えて、平地には菜の花が咲き桜の開花も待たれる頃となっているにもかかわらず、先週の全国的な春の冷え込みのため九重連山も再び雪景色になりました。
大曲からの入山はすでに9時前でした。まずは長者原から真っ白く見えていた星生山へ向かうべく、星生山への直登の登路をゆっくり歩きます。ただでさえ急傾斜に加え積雪した表面が凍結していました。しかし、春の雪は湿った雪のため踏み込んだ後にはしっかりステップが残ります。先行者が付けたステップをたどり順調に高度を稼ぎます。途中で先行者を追い越してしまうと、そこからは新雪が積む登路にトレースを付けながら歩くことになりました。大曲付近の積雪は10cm程度でしたが、星生山頂が近づくにつれ徐々に積雪が深くなり、山頂下の稜線付近に着く前には膝下まで雪に埋もれるようになります。
山頂付近を吹く風は周囲の景色と相まって非常に冷たいのです。しかし、厳冬期の耳が切れそうな寒さとは異なり優しいのですね。山頂を経て星生崎へ向かうと、稜線の登路の岩の表面は氷をコーティングしたように雨氷が覆っていますので、滑落しないように慎重に歩きます。星生崎で春の雪に覆われた久住山を眺めながら小休止してから久住分れを経て北千里ガ浜へ下ります。北千里ガ浜も、例年の冬を思わせる雪景色です。真っ青な空に硫黄山の噴煙が一段と映えて、本当に冬と錯覚するほどの雪景色です。その後すがもり越を経て大曲へ正午過ぎに帰着しました。

【3月25日】開山祭と黒岳山麓のフクジュソウ

3月25日の九重連山は曇。午前9時過ぎの牧ノ戸の気温は4℃。昨日は所用のため終日北九州市内を移動していたところでありまして、ひとまず週末の坊ガツルの野焼きが延期されたということで、天候も雨ということもあり焦らずに用事を済ませ、夕刻には帰宅したところです。夜になって一時雨脚も強くなり、油断して毎度の深酒をしてしまったわけで、目覚めればすでに8時前です。そうです、今日は開山祭だったのです。昨夜の余韻が残る少々重い頭に喝を入れ、速攻で出発し大分自動車道を経由して牧ノ戸峠に向かいます。
牧ノ戸峠に着いたのはすでに10時前で、11時からの星生山頂での開山祭までほとんど余裕がありません。早々に入山して、いつになく急いで登路を駆け登ります。先行者を次々に追い越し、どろどろにぬかるんだ登路に足を取られながら、息を切らし先を急ぎます。いや〜、これほど急いだのは久しぶりで、うかつにもぬかるんだ登路に足を取られ沓掛山下で尻餅をつきそうになりながらも、何とか10:30頃には扇ガ鼻分岐まで着きました。
山頂付近はガスに覆われていましたが、開山祭を待つ登山客も多数待機中で、間もなく法華院山荘の社長他関係者も勢揃いし、定刻どおり11時から開山祭が厳かに挙行されました。周囲は相変わらず断続的にガスがかかる状態でした。山頂祭は15分弱で終了し、これまた例年どおり記念のバンダナが参加者に配布され、参加した登山客もそれぞれ散会して行きました。
依然ガスが断続的にかかるものの、上空には太陽の輪郭も望めるようになりましたので、山頂付近で昼食を摂りのんびりと休憩しました。
法華院山荘の関係者も山を下り、参加した登山客も去った山頂付近は閑散として、先ほどまでの賑わいは一体・・・・、と思わせる静かな山頂で時折ガスが薄れて姿を現す、眼下の西千里ガ浜を眺めつつ正午過ぎまで休憩し、山を下りました。登りではガスがかかり周囲の景色も望めなかった沓掛山付近は、マンサクが満開です。今年は先週の寒の戻りによる春の雪もあったためかマンサクの花期も長めになっています。展望台の東屋で小休止してから駐車場に下りました。

先週の雪で断念した黒岳山麓のフクジュソウ探索のため久住高原を経て黒岳山麓へ向かいます。上空は徐々に天候も回復し、薄日も差してきて絶好の散策日和となったところで、気になっていたフクジュソウも咲き始め、名実ともに春の訪れを感じさせる山行を終えたところであります。その後、お気に入りの湯平温泉でのんびりと温泉に浸かり至福の一時を過ごした後、帰路につきました。

【3月31日】バイケイソウの芽吹き

3月31日の九重連山は曇。午前8時前の飯田高原の気温は5℃。ひとまず天候が持ちこたえてくれそうな間に、春を感じさせる景色を求めて散策をすることにして、午前8時過ぎに吉部から入山しました。
鳴子川沿いの登路をのんびり歩いて、ひとまず坊ガツルへ向かいます。登路周辺では、木々の芽吹きがぼちぼちではありますが始まっています。時折薄日がさす登路を歩いているとなにやら怪しげな雲が上空を覆うようになってきて、ついに一時的ですが小雨が降り始める始末です。風も強くなり、木々がうなりをあげるようになってきました。予報よりかなり早めの天気の変化にとまどいながらも、小雨はすぐに止みましたので、ともかく坊ガツルまでは何とか往復をしたいところです。
大船林道を経て坊ガツル北端に入ると、すでに早咲きのマンサクは花期を終えようとしていますが、第2陣のマンサクがピークを迎えているところです。大船林道周辺にもかなり咲いていましたし、今年はマンサクの花も多く、花期も長めになっている気がします。
昨年のマンサクは、咲いたんだか咲いてないんだか分からないような株が多かったのですが、今年は2年ぶりにマンサクが豊作です。この調子で、シャクナゲやミヤマキリシマも表年と重なり見事な花を咲かせてくれることを期待するばかりです。
坊ガツル野営場にはテントが一張りありました。恐らくこのテントの登山者のものでしょうが、炊飯場に放置されていたザックやレジ袋に入れたゴミを、くだんの悪戯カラスがおそっています。何度も追い払いましたが、その場を離れるとすぐにまたやってくる始末で、全くこの悪戯カラスにはかないません。さすがに他人の荷物に手を触れることもためらわれるのでその場を去りましたが、散乱したゴミを片付けてくれたのかどうか気になります。

2007年4月

【4月8日】大船山頂から望む三俣山と炎に霞む三俣山

4月8日の九重連山は晴のち曇。午前6時前の飯田高原の気温は−2℃。午前6時過ぎ、山陰はまだ薄暗さが残る吉部から入山。霜柱を踏みしめながら一路坊ガツルへ向かいます。暮雨の滝入り口を過ぎる頃には朝日が差し始め、急激に暖かくなってきます。風もなく天候にも恵まれ快適な山行となったところですが、前方に不気味な動物が・・・・。そうです、再びイノシシに遭遇です。イノシシは立ち止まり、こちらを一にらみして、一瞬ですが格闘モードに突入かとひやりとしたところですが、林に消えていきました。その後は林の中で物音がするたびにびびってしまったのは言うまでもありません。(苦笑)
無事に坊ガツルに着く頃には朝日が燦々と注ぎ、暖かな春の一日が始まっていました。それでも周囲の水たまりには氷が張り、登路は霜柱に覆われており、さすがに昨夜は少々冷え込んだようです。この程度は九重連山では別に珍しくもなく、先週は積雪もしていて 今年のように不順な天候ですと、さすがに冬季のようにすっぽり雪景色というわけではありませんが、もう一度くらいは積雪するかも知れません。
坊ガツル野営場には毎度のことながらテントも設営され、春の野営を楽しむ登山客がそろそろ活動を開始し始めているようです。小休止した後一路大船山へ向かいます。木々の芽吹きもまだこれからで、登路はこの時刻ですと日陰になってはいるものの明るく快適です。
順調に高度を上げ、段原から山頂へと向かいます。今日の大船山は足慣らしですから、山頂で小休止してから早々に下ります。再び坊ガツル野営場を経て、法華院温泉山荘へ向かいます。さて本日最大の課題であります延び延びになっている坊ガツルの野焼きの予定を社長に尋ねたところ、3月末からの天候不順で週末ごとに雨となり、しかも次週末も怪しいので10日(火)の平日に実施予定とのことです。7日(土)も朝一度集合し様子をうかがったということですが、とても火が入れられる状態ではなかったそうです。2日間は晴天が続かないと無理なんだそうです。私の方は、さすがに平日には山行はできませんから、今年の坊ガツルの野焼きは事後の焼け野が原と化した坊ガツル鑑賞とすることにしましょう。帰路はイノシシにご対面することもなく、無事正午過ぎに吉部へと帰着しました。

長者原駐車場に着くと午前の泉水山麓の野焼きの撮影を終えたと思われるカメラマンが、タデ原野焼きのために三脚を据えて場所確保しています。少々早く着きすぎて、火入れが14時頃ということなのでビジターセンターのテラスにあるベンチで横になりお昼寝です。
何せ昨日は休日出勤で、しかも今朝は4時に自宅を発っているので、昼食後ということでお腹も満たされたので少々眠いのですね。(笑)
目覚めたのは野焼きのスタッフが集合し始めた14時過ぎで、消防車両や警察の車両も到着しています。14時30分過ぎにタデ原の南の山側から火が入り、木道周辺を経て順次野焼きが行われました。紅蓮の炎が空を焦がし、迫力に満ちた野焼きは順調に進行していきます。環境省アクティブレンジャーのヒロエちゃんも野焼きスタッフとして活躍していました。ご挨拶をして、その後野焼きの進行状況を見届けてから17時前に帰路につきました。

【4月14日】野焼き後の坊ガツル・北千里から望む硫黄山

4月14日の九重連山は晴。午前7時前の長者原の気温は5℃。いまだに焼け跡の香りがかすかに漂う長者原付近を抜け、午前7時過ぎに大曲から入山しました。4月11日に無事野焼きを終えた坊ガツル付近の様子が気になるところですが、まずは随分とご無沙汰している中岳や御池周辺の様子を確かめるべく、すがもり越を経て北千里ガ浜から久住分れへと向かいます。
すがもり越から北千里ガ浜では風が強めに吹き、硫黄山の噴煙がたなびいています。しかしながら上空には青空が広がり、春の日差しがさんさんと降り注ぎ快適な山行日和となりました。雨水を集めて北千里ガ浜を流れる小川には氷が張り、登路には霜柱が見られます。それらも、冬季に比べるべくもなくささやかなもので、春の暖かさを感じつつ久住分れを経て御池に着きました。御池周辺では、依然として山の装いは冬枯れのままですが、木々の枝先には芽も膨らみ始めていて、間もなく芽吹きの季節を迎えそうです。湖面に氷がない御池が何だか懐かしくもあり、春の陽に照らされ湖面を渡る風に波立ち輝く御池もまた、季節の確実な移ろいを感じさせます。
今日の山行では、当初から野焼き後の坊ガツルの様子が気になるところで、早々に御池を後にして白口谷を法華院山荘方面へと下ります。法華院山荘で小休止してから坊ガツル野営場へ向かいました。
野焼きを終えた坊ガツルではススキの枯れ穂がすっかり焼けて地面が覗くようになり、何だかとても広々として心地よいのです。まだ野焼き後の大地踏み込むと、炭化した植物の茎が残るため着衣に触れると真っ黒な汚れが付きます。野営場の枯れ草も焼かれているため野営場付近はまだら模様に焼け野となっています。ススキの茂る隙間にテントを張れば風を遮ってくれたのですが、吹きさらしとなり直接風を受けることになりそうです。野営場周辺にテントを設営する場合には、まだ灰が完全に地面に落ち着いていないので、テントが汚れるのがいやな場合はグランドシートを用意した方が良さそうです。昨年は野焼きからゴールデンウィークまでには1月以上の期間があり、ゴールデンウィークにはわずかばかり地面から緑が覗くようになっていたのですが、今年は2週間あまりしかなく、恐らく大地は焼け野のままなのでしょう。
かくいう私も、今年もゴールデンウィークの喧噪に紛れ坊ガツルのテント村の一員となるべく計画中であります。晩秋の坊ガツルの閑散とした中で、静かに月を眺めながらの野営も感慨深い・・・、というか月を肴に飲んで、いつしか酩酊し爆睡するという風流を愛でる姿勢とは到底かけ離れたものではありますが・・・。対照的に、驚愕の喧噪ともいえるゴールデンウィークの賑わいも一興であり・・・、というかこちらも限りなく魚民や白木屋などの喧噪感漂う居酒屋とほとんど同じ雰囲気を醸し出しているだけのような・・。まあ、いずれにしても坊ガツルの大自然を肴に、周囲が賑わっていようがいまいが、とにかく気にせずにうまい酒を飲んで爆睡すれば満足だという単純な動機です。付加価値としては、忽然と出現したテント村で、大地を揺るがすイビキの大合唱が聞かれるのかどうか、怖いもの見たさにも似た不思議な期待感をも抱いているところですね。(笑)

【4月21日】ツクシシャクナゲ

4月21日の九重連山は曇。午前7時頃の飯田高原の気温は11℃。先週は一時的な寒の戻りがあって春の雪が多め降り、九重連山も再び雪景色になりました。しかしその後は確実な春の訪れを感じ、坊ガツルの野焼きも終わり、ゴールデンウィークまであと2週間あまりということになると、毎年この時期には前岳周辺のツクシシャクナゲが気になるところです。おおむね花のピークがゴールデンウィーク(GW)前後ですから、今年もまた2〜3週間は前岳周辺を歩くことになりそうです。
午前7時過ぎに白泉荘側から入山。登路は新緑に覆われ生命の息吹が満ちあふれており、何だか自然の持つ不思議なパワーを感じるのです。朝日を透かして輝く緑がまた一段と鮮やかに映り、爽快な山行です。登路周辺のシャクナゲの状況は、黒嶽荘からの登路と合流する標高900m付近の白水分れ付近までは、咲いている株が散見されますが、多くはつぼみが開き始め、先端から花弁が覗き色づいて見える状態です。
一昨年(2005年)はシャクナゲもミヤマキリシマも大咲きした花の当たり年でした。大咲きした翌年は樹勢が落ちているため、いわゆる裏年ということで花が少ないことが多いのですが、昨年シャクナゲはそれでも「それなり」に咲いていました。そんなこともあってか、今年はつぼみが極端に少なく感じます。シャクナゲの株が群生する標高1100m付近にある阿蘇野の集落が一望できるテラス状の岩場付近でも、つぼみを付けている株はわずかです。標高1100m付近から山頂付近にかけては、つぼみはまだ堅く、一部は先端がわずかに色づいているものもありますが、開花までにはおおむね2週間以上はかかるものと思われ、GWの末かそれ以降になりそうです。

【4月27・28日】更けゆくテントサイトの夜・ヒトリシズカ

4月27日の九重連山晴。17時前の飯田高原の気温は18℃。GW中に多くの観光客が訪れる九重連山では、この時期は特に県外からの登山客も多く、地域の状況を把握できないまま路肩や空き地に駐車し、地元の人にとっては生活道路の通行もままならない事態が頻繁に発生しています。その対策のためか、吉部の大船林道入り口付近の道路脇には駐車禁止のテープが貼られ大幅な規制を行っています。無理に空きスペースに駐車するのは避けて、近くには民間の有料駐車場もありますので、そちらを利用することをお勧めします。
早々に装備を整え17時過ぎに吉部から入山。18時頃に坊ガツル北端に着く頃、大船山頂付近が夕日に照らされ染まっていきます。野焼き後の芽吹きの気配がほんのわずか感じられる坊ガツルの真ん中に伸びる道を一気に通過し、野営場に着くとすでにテントが設営されています。今日は私の他には、犬を連れた家族3人のテントが1張りのみで、今夜の坊ガツルはほとんど貸し切り状態です。昨年はGWの只中に野営を敢行し、忽然と出現したテント村の驚愕の賑わいとイビキの大合唱に唖然としたところでありまして、この閑散とした坊ガヅルの光景は、まさに嵐の前の静けさなのでありましょうか。
テントを設営し終え、ビールの買い出しをかねて法華院温泉山荘の温泉へ入浴。食堂には何組かの宿泊客もいましたが、温泉は貸し切りです。何だかとっても贅沢な気分で貸し切りの温泉を堪能した後、ビールを買ってテントサイトに戻り、お決まりの酩酊モードに突入であります。月明かりに望む大船山は山頂付近にうっすらとガスがかかり、明朝の天候次第では朝寝を決め込むつもりです。深夜にテントを揺らす風の音に目覚めました。どうやら外は強い風が吹いているようで、20mほど離れている隣のテントのフライシートが風にあおられて大きな音を発しています。昨年のGWの野営での大地を揺るがすイビキの大合唱に比べるべくもなく、騒音というよりもむしろ心地よい眠りを誘う音でありまして、爆睡したのでありました。

明けて4月28日、テントを揺らす強い風の音に何度か気づきつつも、明確に意識が覚醒したのは4時前。テントの外は相変わらず強い風が吹いていましたが、上空には星空が広がっています。風が強いことを除けば、気温は8℃で快適な朝となりました。炊飯場で水を補給して、すぐに大船山頂へと向かいます。
遠くからは風が木の枝先を吹き抜けるときに発する、キーンという高音の不思議な音が聞こえてきます。昨夜の余韻をわずかに残しつつも、一汗かいて段原に着く頃にはすっかり正気に戻りました。段原付近からはヘッドランプも不要となり、山頂へと急ぎます。山頂へ着いて一息ついた5時40分頃に、東の地平線を覆う雲の間から太陽が現れました。弱い霞もかかり朝焼けも慎ましやかではありましたが、荘厳な朝の光景に感激。山頂付近はカーボン三脚なんぞは吹き飛ばされてしまいそうな強烈な風が吹いて、手もかじかむ寒さを感じます。岩陰で風を避けて朝食を食べてから坊ガツルへと下りました。
山頂を下った後は坊ガツルでのんびりと休憩です。テントに寝ころんで外を眺めていると、入り口を開けていたため強烈な風にあおられて、テントフレームが変形しそうになりました。(苦笑)坊ガツルを後にした9時過ぎ、新たなテントは1張り増えたのみで、訪れる登山者も通常の休日と大差なく、何だか静かなGWの幕開けとなったのです。鳴子川沿いの登路をのんびりと下り、吉部へ帰着した11時頃には、まだ大船林道入り口の有料駐車場に駐車している車もわずかで、このGWの出足はスロースタートとなっているのかもしれません。

2007年5月
【5月3日】前岳の新緑

5月3日の九重連山は晴。午前9時前の白水鉱泉付近の気温は15℃。いよいよGWも後半に入り、5月3日は恒例の友人との春山行で、新緑とツクシシャクナゲ鑑賞ということで、予定どおり前岳に出かけてきました。
新緑あぶれる白泉荘付近の登路から9時過ぎに入山。心地よい春風が新緑の森を吹く中、小学生を含む6名の品行方正・謹厳実直・奇々怪々の怪しげな集団は一路前岳を目指すのであります。(笑)白泉荘付近のシャクナゲはすでに花期を完全に終えています。入山して間もなく、新緑の森にはちらほらとシャクナゲの花が目立ち始め、白水分れ付近の標高950m付近が現在花のピークを迎えています。開花状況はおおむね1100m付近から上ではまだツボミを付けた株が目立ちますが、900m以下ではすでに花のピークを終えています。散ってはいませんが、花期末期の花弁が痛んでいる花が多いという状態です。
標高1100m付近の由布市庄内町阿蘇野地区を見下ろすテラス状の岩場で小休止。眼下に広がる阿蘇野の水田には水が引かれ始め、代掻きも始まろうとしており、平地より1月以上早くいよいよ田植えシーズンを迎えるようです。すがすがしい風が吹き、霞も少なく遠く由布岳の山頂付近もはっきりと望める快適な山行日和となっています。その後、頭上に伸びるシャクナゲの株のトンネルをくぐり、山頂まで快適に歩きました。やはり今年は花が少いようで、前述のテラス状の岩場付近でも花が著しく少なくなっています。それでも懸命に咲いている株が点々とあり、大咲きして花があふれる圧巻の光景とはまた一味異なる慎ましやかな情景を楽しむのも一興というものです。

【5月12日】新緑の泉水山麓

冬用5月12日の九重連山は晴。午前7時前の長者原付近気温は6℃。連休明け最初の山行は、前岳のツクシシャクナゲに続き例年どおり三俣山周辺のツクシシャクナゲの探索という事になりました。
泉水山麓では野焼き後の大地に柔らかな緑が芽吹いており、このところ前岳周辺のシャクナゲにすっかり執心していたためか、泉水山麓や長者原周辺の大地がこんなに様子を変えていることは、うかつにも気づきませんでした。例年になく野焼きが遅れたため、キスミレの時期を一気に通り越え、新緑が大地を覆っています。
午前7時過ぎに大曲から入山。すがもり越までの登路周辺も木々が芽吹き始め、冬枯れの景色から一気に春の装いに変わりつつあります。三俣山周辺のツクシシャクナゲといえば指山から三俣山北面にかけても花が多く、この時期には定番のルートだったところですが、2年前の水害により三俣山北登路周辺の崩落のため閉道されて以降はすっかりご無沙汰です。気になってはいるのですが、今回もやはり大曲から三俣山大鍋周辺を巡る山行となったところです。
すがもり避難小屋で小休止の後、三俣山に取り付きます。気になっていた?峰下のシャクナゲはツボミもほとんど確認できず、今年は花を望めそうにありませんので、本峰を経て大鍋へと下ることにします。本峰から大鍋へと下る途中のシャクナゲも全く咲いていません。よくよく見てみると、ツボミは少ないもののそれなりに付いているのです。外観上からは前岳に比べ3週間程度は遅れているようです。

【5月19日】イワカガミ

5月19日の九重連山はは曇。9時前の長者原付近気温は11℃。予報では午後からは天候も回復するということで、自宅を出発したのは日頃の出勤時刻頃で、遅めの現着となりました。9時過ぎに指山探求路から入山し、まずは前回の山行で気になっていた指山周辺を歩きます。登路脇に点在するミヤマキリシマの株が随分とツボミを膨らませているのが目立ちます。ミヤマキリシマには、残念ながらすでにシャクトリ虫が取り付き、かなり虫害が広がっています。
指山山頂付近ではすでに開花しているミヤマキリシマの株もあり、例年どおりのペースで確実に開花を待っているようです。いずれにしても今年は特に早めということもなく、6月初旬から中旬にかけてピークを迎えそうな感じです。指山付近のツボミの様子からはそれなりに花が付きそうな感じですが、平治岳や北大船山付近のツボミの付き具合や虫害の状況が気になるところで、そうなると次回はそのあたりを確認しなければなりませんね。しかしながら、毎度のこととはいえ実に気まぐれなもので、果たしてそれもどうなりますか・・。(笑)
指山山頂に着く頃には一時上空に青空も広がり、このまま一気に晴天になるのかと期待したところですが、さすがにそれほど甘くはなく、その後も時折薄日は差すものの、山頂付近には断続的にガスがかかる状態が続きました。

ひとまず三俣山着。早速先週から気になっていた大鍋付近のシャクナゲの様子を確認しました。随分とつぼみを膨らませ、間もなく開花しそうです。さすがに花は少なめで、膨らんだツボミも咲くのかどうかは不明です。

【5月26日】平治岳南峰斜面と大船山のイワカガミ

5月26日の九重連山は晴。7午前7時過ぎに吉部から入山し、緑あふれる鳴子川沿いの登路を快適に歩きます。すでに新緑の時期は終え、木々の葉の緑も濃くなっています。吉部から坊ガツルへ向かう登路は、鳴子川の瀬音や川面を渡る涼やかな風が吹き実に快適で、利用頻度が急激に増えるのです。
大船林道へ抜け、平治岳北登路へ向かいます。大船林道を分岐し4号集材路にに入り、周囲の森には、落葉を持ち上げてギンリョウソウがニョキニョキと顔を出し花を咲かせていています。緑に覆われた登路を快適に歩きますが、相変わらず上空は霞んでいて朝日が注ぐという状況にはならず、木々が茂る登路にはいると一段と薄暗くなります。現在の平治岳北登路は、やはり一部はクロボクの地面が露出して著しく滑りやすい場所もありますが、比較的良好な状態です。それでも、毎年のこととはいえ、これからミヤマキリシマのピークにかけては利用者が急増し荒れるのでしょうね。特に雨の直後はクロボクの登路がズルズルに滑りますので、要注意です。
平治岳山頂付近のミヤマキリシマは、今後の天候にもよりますがピークまでは2〜3週間程度はかかりそうです。しかしながら現時点では虫害が少なく、葉もツボミも比較的良好な状態を維持しています。確かに一部シャクトリムシが発生している株もありますし、今後急激に個体数が増えることがあれば、1週間程度で葉は食い荒らされ見るも無惨な状態になるのです。平治岳山頂付近はここ数年虫害がひどく、今年は久々に良好な状態なので、大いに期待したいところです。ただしツボミの付き具合が決して多くはないので、2年前のように大咲きすることは期待できないと思います。
平治岳南峰から大戸越にかけての群生地も山頂付近と同じで、ピークまでは2〜3週間以上かかりそうです。こちらも虫害が少なく良好な状態です。このまま咲ききってくれると良いのですが、何せ自然は気まぐれですからどうなることやら・・。大戸越付近はやっと咲き始めたというところですが、近くに寄ってこそ分かる程度で、北大船山の登路から振り返って望んでも、花の色を確認することはできない程度です。北大船山登路といえば、ミヤマキリシマの後のお楽しみでありますオオヤマレンゲもすくすくと成長していて、花芽が膨らんでいます。登路に点々と点在している株には確実に花芽を付けていますので、これも今後の成長が楽しみです。
北大船山付近も虫害が少なく、ツボミは決して多くはありませんが良好な状態です。こちらもこのまま虫害が広がらずに咲き勝ってほしいところです。10時を過ぎる頃になると上空の雲も消え、黄砂の影響でわずかに景色は霞んではいるものの、初夏を思わせる日差しが
注ぐようになります。10時過ぎの段原付近には団体の登山客も次々に訪れるようになり、大船山頂付近も混雑し始めています。坊ガツルへ下る登路にはイワカガミが群生している場所があります。可憐な花も群生するとただ圧巻です。


四季のトップへ / 春 /   /  /