2007年 秋

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2007年9月

【9月1日】愛機FZR750(牧ノ戸峠にて)

9月1日の九重連山は曇。午前10時過ぎの牧ノ戸峠の気温は19℃。予報では曇のち雨のはずですが、朝の自宅付近では見事な朝焼けが・・・。何だかな〜、こんなものかな〜。雨に遭わず野営が楽しめたのではないかという思いがよぎりますが、そこは思考を切り替えて、先週車検を終えたばかりのバイクでミニツーリングに出発です。バイクとのつきあいは実に長く、「九重連山と私」に掲載しているとおり30年以上になります。そしてまた九重連山への山行を始めるきっかけになったものでもありまして、このサイトの原点ともいえます。現在の愛車は今年で20年目となりました。いかんせんゴムパーツや消耗品の痛みも年々激しくなり、入手が困難なパーツも増え、ビンテージというには少々気が早いものの、今や懐かしの旧車なのです。
久々の九重連山へのミニツーリングということで、牧ノ戸峠で記念撮影。(笑)そういえば、このバイクはサイトに登場するのは初めてでした。最近では走っている車をすっかり見かけなくなったので、長者原や牧ノ戸峠あたりでアンダーカウルを外したFZRを発見したら、それは多分私です。
牧ノ戸峠に駐車して、爽快な風に吹かれながら沓掛山まで登ってみました。星生山や扇ガ鼻方面はガスがかかり見渡せません。御池あたりまで歩いてみようかな、とも思いましたが、今日はバイクの調整に専念することにして牧ノ戸峠へ下り、瀬ノ本から久住高原を経て阿蘇野へ回り、男池経由で飯田高原へ戻るという九重連山を周回するルートを走ってから帰宅しました。

【9月7日】星生山から望む久住山

9月7日の九重連山は雨のち曇。12時前の牧ノ戸峠付近の気温は19℃。初秋の九重連山はあいにくの雨。長者原に着いた10時頃には霧雨が降り、山はガスに覆われています。霧雨はガスによるものかも知れませんので急に強く降り出すことはないでしょうが、多少なりともガスが晴れてくれないと何も撮影できそうにないので、長者原駐車場の東屋で待機しました。その後一時小雨も降り、一向に回復する気配もないまま刻々と時間は過ぎて、間もなく正午という頃になって、上空の雲が切れ時折陽が注ぐようになりました。多少気温が上昇したのでしょうか、ガスは暫時薄くなり、気づけば星生山頂も望めるようになってきました。
牧ノ戸峠へ移動したところで、アクティブ・レンジャーのヒロエちゃんに会いました前夜の満天の星空に期待を託し、朝5時から阿蘇の雲海を鑑賞するために出かけたところ撃沈。山の巡視に入ったが雨のため早めに下ってきたそうです。そうなんですよね〜、現地に住み現地をを知り尽くすプロですら、この夏からの不安定な天気には困惑気味なわけですから、素人の私なんぞがまともな天気の予想ができるわけもなく、撃沈を重ねた最近の野営計画もご来光山行も、あまりにも必然的な結果かと・・。何となく納得するような、それとて悲しいような不思議な感慨が充ち満ちてくるのであります。(苦笑)
ガスが晴れてくれれば多少なりとも撮影はできるわけで、12時頃に入山し三俣山方面を覆うガスに戦々恐々としながらも、ともかく先を急ぎます。ガスは徐々に薄れ、西千里ガ浜からは久住高原が望めます。13時頃には久住山周辺のガスはすっかり消えて、上空の雲の切れ間からは青空が覗き、日が差すようになりました。久住山頂付近は閑散としており、久住高原から阿蘇方面までの絶景を堪能しつつ小休止してから再び久住分れへ戻ります。
避難小屋に着いてびっくり。何とトイレの前にテントが設営されています。国立公園内では、原則として指定地以外での幕営は禁止ではなかったかと。ツーリング用の簡易ドームテントのようですが、恐らくホームセンターあたりで購入したものでしょう。ということは、耐風性の無いテントやトイレの前にテントを設営するなどの諸事情から推測すると、これはもう本来の意味での確信犯的な行為でしょう。
上空には青空が広がる避難小屋から星生崎へ登り、星生山稜線を山頂へと向かいます。硫黄山側にガスが巻く状態で、星生山頂ではブロッケンも出現しました。山頂で小休止してから山を下り、16時過ぎに牧ノ戸峠へ帰着です。

【9月15日】ガスかかるすがもり避難小屋にて

9月15日の九重連山は曇のち雨。9時頃の長者原付近の気温は23℃。大曲から入山し、まずはすがもり越へと向かいます。登路脇には穂を出したススキが風に揺れています。30分程度ですがもり越に着きました。ガスが晴れれば三俣山南峰から坊ガツルへ下り、ガスが晴れなければ北千里ガ浜を経て法華院山荘へ下ることにして、しばらく待機です。ガスは断続的に濃くなりますが、三俣山西峰斜面が見渡せるほど薄くなることもあります。10時過ぎまで待ちましたが、山頂付近を覆うガスは結局切れることもなく、北千里ガ浜経由で法華院山荘へと下ります。北千里ガ浜付近で霧雨も降り始め、登路も濃いガスに覆われたものの、法華院山荘まで下ると、毎度のことながら坊ガツル付近にガスはありません。
先週には坊ガツルも輪地切りを終え、この後には輪地焼きが行われます。冬季には一面冬枯れの草原に野火が入るのを防ぐための防火帯として、また来春の野焼きの際の防火帯準備として、この輪地切り・輪地焼きの作業は欠かせないわけで、長きにわたり自然と人間が共生していく中で生まれた生活の知恵なのです。
法華院山荘まで戻り、昼食休憩です。台風が接近しているためか登山客もまばらで、ゆっくりと時間が流れているように感じます。鉾立峠方面から時折ガスが押し寄せてそのたびに霧雨も降りますが、すぐに止んでしまいます。いよいよガスが濃くなり始めた正午時過ぎに法華院を発ち、すがもり越へと向かいました。北千里ガ浜は相変わらすガスに覆われ、少々大粒の雨も降り始めたので、すがもり避難小屋で雨をやり過ごし、それでも長者原方面が霧雨に霞むようになってきたため急いで下りました。

【9月22日】ススキ揺れる久住山登山道

9月22日の九重連山は曇のち晴。6時前の長者原付近の気温は18℃。例年になく安定しない天気に困惑しているところです。徐々に明け行く長者原付近から望むと、山頂付近にはガスがかかっています。日の出を迎える6時頃になっても、ガスは一向に薄れる気配もなく、北や西の上空にかかる雲がわずかに染まるものの、太陽はなかなか姿を現しません。 牧ノ戸峠の展望台にある東屋が見えていますので、沓掛山付近まではガスがかかっていないようです。牧ノ戸峠へ移動し、6時過ぎに入山しました。3連休の初日で早朝から行楽客も多く、牧ノ戸峠駐車場は夜明けを待って入山していく登山客が続きます。沓掛山で振り返ると、涌蓋山や一目山向こうの風力発電施設付近に朝日が注いでいます。ガスは依然山頂付近にかかるものの、 7時頃には沓掛山付近でも雲間から時折朝日が注ぎ始めました。ガスの粒をまとい朝露に濡れた笹の葉が輝き、ススキの穂も注ぐ朝日に銀色の輝きを放ちます。登路を渡る風も涼やかで、朝の澄み渡る山の空気を満喫しながら快適に歩けます。
避難小屋横のトイレ、通称「バイオ・レット」では、9月から清掃協力金の名目で、任意ではありますがトイレの使用料を1回100円を徴収するようになっており、料金箱が設置されています。そこでちょっと悩んだことが・・。つまらないことで恐縮なのですが、入山する際に車中に貴重品を残すのは不安なので、財布(札入れ)は携帯しますが、小銭入れは持ってきません。 多くの人は、小銭入れを持って入山されているんですかね?今後久住山方面を歩く際は、100円玉を持参して入山しないと、「任意」とはいえ肩身の狭い思いをすることになるかも。(笑)

【9月29日】三俣山のリンドウ

9月29日の九重連山は曇。6時過ぎの長者原付近の気温は16℃。依然週末の天気は安定せず、今回もまた長者原付近でどこに向かおうかとしばし思案です。先週リンドウの花を見かけてから気になっていた、三俣山南峰のリンドウの開花状況を確認すべく、大曲から入山しました。
すがもり越へ着く頃には、すっかり汗ばんでいます。すがもり越の避難小屋は、わずかに風も吹き快適です。西峰付近に時折ガスがかかるものの、大船山方面も見渡せる状態なので、急いで西峰へ取り付きました。西峰山頂付近で一時ガスに巻かれましたが、本峰へ着く頃にはガスも薄れてきました。
登路脇にはリンドウのつぼみが目立ち、期待は膨らみます。本峰付近ではまだ咲いていなかった花も、徐々に気温が上昇し始めて咲き始めたのか、のんびりと歩いて南峰へ着くと、そこはもうリンドウの花園でありました。大曲に帰着したのは11時前で、その後は毎度のことではありますが、長者原付近を散策したのちに昼食タイム。そして、これまた毎度の温泉ツアーでありました。

2007年10月

【10月5日】暮れゆく雨ガ池

10月5日の九重連山は晴れのち曇。15時頃の長者原付近の気温は18℃。午後からのうれし恥ずかし平日山行です。現着は15時、さすがに平日とあって牧ノ戸峠駐車場も休日ほどの賑わいはなく、それでも秋の行楽シーズンの走りとあって、山行を終え下ってくる人登山客が目立ちます。日没まで3時間弱、早々に入山です。
沓掛山へ着いたところで、星生山から扇ガ鼻付近にかけてガスですっぽりと隠れ意気消沈です。登路脇にはリンドウの株が目立ちますが、さすがにガスで日差しも遮られ、時刻も16時前となると花を開いている株は少なく、ガスで景色も開けないままに淡々と歩きます。扇ガ鼻分岐からはガスの中に入り、西千里ガ浜のケルンもガスに霞みます。久住分れの避難小屋付近で小休止していると、急激にガスが晴れ星生崎上空には青空も広がります。
御池着が16時30分で、ガスに覆われた御池の湖岸でコーヒータイムです。お湯を沸かしコーヒーを1杯・2杯と飲んでいると、急にガスが晴れ、傾きかけた秋の日が御池の湖岸に注ぎ始めました。中岳のガスも晴れ、御池の湖面に夕日に染まる中岳が映ります。
大急ぎで
御池の対岸へ移動した17時30分頃、徐々に傾く夕日に御池も夕闇に沈んでいきます。ガスが晴れ、幻想的な落日の景色が広がる御池の縁を回り、中岳と天狗ガ城の尾根に着くと再びガスが押し寄せ、天狗ガ城斜面を吹き上げるガスも夕日に染まります。ガス焼けの天狗ガ城の光景に見とれているとガスは一段と濃くなり、太陽も隠れてしまいました。天狗ガ城山頂へ移動して、日没を迎える17時50分頃に一段とガスが濃くなり、日没とその後の残照は逃しました。 18時過ぎに天狗ガ城山頂を発ち、西千里ガ浜はずれ付近でヘッドランプを灯し、山を下りました。

【10月6日】黒岩山のリンドウ

10月6日の14時前に、再び牧ノ戸峠に着。実は早朝から所要を済ませ、その後バイクで阿蘇山へミニツーリング。折り返して九重連山へと向かったところです。牧の戸峠では、さすがに連休初日ということで、駐車場はおろか周辺の道路脇にも登山客の車があふれています。さわやかな秋の風に誘われるままに、 黒岩山まで歩いてみることにして、コンパクトデジカメを片手にお手軽散策です。牧ノ戸峠を発ち、黒岩山下の牧ノ戸展望台を過ぎ斜面を登ること20分ほどで、泉水山との分岐を分ける山頂手前の草原に出ます。ここが思いの外眺望に優れていて、散策を兼ねて弁当を持参し昼食などを楽しむには最適な場所なのです。リンドウが咲く草原を過ぎ、笹が茂る登路を黒岩山頂に向かいます。山頂付近から涌蓋山方面の眺望を楽しんだ後、牧ノ戸へ戻りました。

そういえば20年以上前のことになりますが、毎週の山行を始めたきっかけは、今回のようにバイクで立ち寄った牧ノ戸峠や長者原、久住高原の登山口から、水とカロリーメイトを持参しての散策を始めたことだったわけで、愛車もちょうど20年目となり、山行の原点への回帰のような不思議な感慨があふれてくるのであります。

【10月13日】モノクロームの光景が広がる大船山御池

10月13日の九重連山は晴れのち曇。5時頃の飯田高原の気温は10℃。猛暑の夏に続いて長引いた残暑のため、今年の紅葉は遅れ気味です。諸兄のレポートでも、大船山も紅葉の遅れが目立つということであります。
5時過ぎに吉部から入山し、鳴子川沿いの大船林道登路を経て、まずは坊ガツルへ向かいます。6時前に坊ガツル北端へ出たところでヘッドランプを消灯。まもなく日の出の時刻ですが、三俣山もガスに覆われています。大船山もすっぽりとガスに隠れ、今日の行程を考えると一抹の不安が・・。
段原手前からガスの中に入り、段原に着くとすっぽりとガスに覆われ景色は開けません。山頂へ着いた7時40分過ぎ、すでに先行の登山者がいます。御来光ねらいで星空が広がる中を登ってきたものの、明け方はガスで撃沈ということです。
ひとまず紅葉の状況が気になっていた御池へと下ります。御池も濃いガスの中で周囲の状況もも望めません。すっぽりとガスに覆われていては、紅葉も何もあったものではなく、遅い朝食を摂りながらじっと待ちます。30分あまり経った頃からガスが切れ始め、 1時間後の8時40分を過ぎる頃にはほぼガスも晴れ、上空に青空も広がるようになりました。気になる御池周辺の紅葉は、まだまだこれからです。御池では10月の中旬あたりに紅葉のピークを迎えることが多いのですが、今年は1週間から10日以上、段原付近のドウダンが紅一色にそまるまでは、それ以上遅れるようです。それよりもさらに遅れるとなると、十分に色づく前に枯れて落葉してしまうかもしれません。結論としては大方の予想どおり、 今年の御池から段原付近の紅葉のピークは10月下旬になりそうです。大船山がこの状態ですので、三俣山はもう少し遅れそうです。11月になると霧氷も見られるでしょうから、三俣山あたりでは、紅葉と霧氷が両方同時に楽しめるかもしれません。まあ、そううまくはいかないでしょうけど。(笑)
9時30分頃に山頂を発ち、坊ガツルへ下り小休止の後、10時30分過ぎに坊ガツルを発つ頃には、大船山頂は再びガスに覆われていました。復路は定番の暮雨登山道でトリカブトやハガクレツリフネを撮影しつつ、正午過ぎに吉部へ帰着しました。

【10月20日】三俣山の紅葉

10月20日の九重連山は晴。4時頃の長者原付近の気温は4℃。上空には星空が広がり、東の空には金星も輝く絶好の天気です。実は、今週末は秋の恒例行事であります実家の稲刈りなわけで、作業開始は、朝露が乾く10時頃ですから、その頃までには実家に着かないといけないという強行スケジュールであります。
夜半の風が強かったのせいでしょうか、大曲から硫黄山の取付け道路にかけての登路の笹に朝露はなく、ヘッドランプの明かりを頼りに黙々と歩き、5時過ぎにすがもり避難小屋着。気温は2℃で、強めの風が吹いているため体感する気温はさらに低く、かなりの寒さです。やはり、すがもり越付近から山頂にかけては薄いガスがかかっていて、三俣山もすっぽりとガスに覆われています。ともかく山頂へ向かうべく、西峰登路に取り付きます。
西峰もやはりガスに覆われ、薄いガスとはいえヘッドランプの照らす明かりがガスに拡散して見えにくいことこの上なく、足下を慎重に確認しながらも、6時前に南峰へ着きました。一向に晴れる気配のないガスに覆われた山頂で日の出を待って待機しているととにかく寒くて、フリースの中着と雨具の上着を着用してやっと寒さをしのげるほどで、手袋を着用しないと手がかじかんできます。徐々に明るくなってくると、周囲の木々の枝先が白くなっていることに気づきました。そっと触れてみると、何と霧氷ではないですか。山頂付近の木々に水滴がついていたので、これにも触れてみると、水滴ではなく氷でした。厳しかった残暑がやっと終わったかと思うまもなく、秋が猛スピードでやってきたようです。
日の出の時刻を迎える6時20分前になっても、一向にガスが晴れる気配はありません。御来光は撃沈しても、大鍋の紅葉の様子だけは確認したいところです。南峰から本峰へ向かい、ガスが晴れることに期待しつつ、タイムリミットまで本峰で粘ることにしました。7時を過ぎる頃から時折ガスが薄れるようになり、7時20分過ぎには一気にガスが晴れ、朝日が山頂を照らすようになりました。
気になる大鍋付近の紅葉の状況は、ドウダンの葉の色が黄色から紅に染まり始めているところで、本峰から北峰にかけての大鍋壁の紅葉のピークは、あと1週間程度というところでしょうか。先週の大船山の御池付近の紅葉の進行状況から考えて、三俣山の紅葉は意外に進んでいます。朝の冷え込みが強まり、思いの外色づきが早まったのかもしれません。山頂付近は、8時前には再びガスがかかり、周囲の景色はガス曇りの中に覆われていきました。帰宅までのタイムリミットを過ぎた8時過ぎ、大急ぎで三俣山を下り、大賑わいのすがもり避難小屋をパスし山を下りました。

【10月27日】大船山の紅葉

10月27日の九重連山は曇。5時過ぎの七里田付近の気温は13℃。いつになく遅れた紅葉も、そろそろ大船山頂から段原付近がピークを迎える時期となり、七里田から大船山頂へ向かうことにしました。

6時前にヘッドランプを灯して、舗装された牧野道をガラン台へと向かいます。ガラン台へ着く直前、すでに時刻は6時20分過ぎとなり、日の出を迎える時刻になったわけですが、東の空を雲が覆い今回も御来光はボツでした。徐々に明るくなるにつれて、山頂方面が濃いガスに覆われているのがわかるようになってきました。淡々と歩くだけ・・・となるはずでしたが、今年の紅葉はいつになくきれいに色付いています。板切からの登路と合流する入山公墓入り口付近からは、登路上部を覆うカエデが真っ赤に紅葉していて、徐々にガスの中に入る鳥居窪付近にかけて、色付く葉がガスの水滴に濡れ一際鮮やかです。紅葉ばかり見上げて歩くと足下が危うく、足下はといえば真っ赤に紅葉したカエデの落葉が敷き詰められレッドカーペットとなって、これに目を奪われていると木の枝に頭をぶつけてしまうという、美しくも危険に満ちた登路なのであります。

真っ赤に染まるカエデの紅葉と落葉にすっかりはまってしまい、三脚を立てて撮影しつつ登ってきたため、大船山頂下の御池に着いたのはすでに8時を過ぎていました。ガスにすっぽりと覆われ何も見えない御池には、誰もいません。誰もいないのはうれしいのですが、ガスで何も見えなければ悲しい限りでありまして、何とも複雑な心境です。濃いガスも断続的に晴れることが多いため、簡単にはあきらめずに、ひたすら待つことにしました。登路脇の木々の枝に着いたガスの露で濡れたシャツを着替え、フリースの中着、雨具から手袋まで着用し完全武装して、ひたすらガスの晴れ間を待ちます。1時間あまり待っている間も、御池へ下ってくる登山客はいません。その間、上空に青空が覗くのが合図となって、一気にガスが晴れ10秒程度全景が見渡せたのが数回程度ありました。ガスが晴れた御池の湖岸にあるドウダンの色づきは、今がピークです。もう少し真っ赤に染まるのかもしれませんが、落葉する葉が増えてきそうな気もします。今年は予想どおり見事な色づきで、晴れていればさぞや・・・、と思うにつけ、少々残念ではあります。そこはしかし、紅葉が遅れたおかげで、例年実家の稲刈りとバッティングし、なかなか出会うことができなかった大船山頂付近の紅葉ピークを鑑賞できただけでも幸運というものであります。

御池の紅葉具合を確認した後、次は段原付近の紅葉を確認すべく大船山頂へ移動します。9時過ぎの山頂にはすでに登山客が2人います。強烈な風が吹く山頂付近の岩陰に隠れ、ガスが晴れるのを待っています。段原方面が見渡せる岩場に移動すると、ガス混じりの強烈な風が吹き上げてきて、立つことも困難な状態です。岩場に隠れてひたすらガスの晴れ間を待つことにしました。強烈な風に乗って吹き上げてくる水滴混じりのガスのため、風が直接当たる物はことごとくガスに濡れてずぶ濡れになります。カメラのボディーもレンズも、風に向かって構えると、すぐにずぶ濡れになるため、岩陰でカバーを掛けて待ちます。こちらも上空に青空が覗くのが合図となって、段原から米窪方面が束の間望めます。
ガスが引き始める一瞬、紅葉の段原付近が覗けたかと思うとブロッケンが現れます。ブロッケンが消えると、そこには見事に染まったドウダンの織りなす圧巻の紅葉景色が広がっています。大方の予想どおりのすばらしい色づきで、現在ピークを迎えています。

感動に息をのんでいると、再びガスに覆われて何も見えなくなるという状態を延々と繰り返し、11時過ぎに山頂を去るまで2時間あまり粘って、ガスが晴れたのが数回で、時間にして合計5分間程度もあったのかなという程度です。晴れていれば一層の絶景に巡り会えたかも、と思うと残念ではありますが、紅葉を背景に現れたブロッケンや、見事に染まるドウダンの葉がガスに濡れ、乾燥しているときより一層色鮮やかに輝く瞬間に巡り会えたのだと考えれば、これもまた幸運だったのかもしれません。それにしても、今年の大船山頂付近から段原付近の紅葉は台風の惨禍に遭うことがなかったためか葉の痛みが少なく、そのためもあって、きれいに染まっていて感動ものです。
大船山頂を下ると間もなくガスの下に出て、木々の枝間からは日も差すようになりました。往路でも目を引いた鳥居窪付近の紅葉を堪能しつつ下り、13時頃に帰着しました。

2007年11月

【11月3日】三俣山大鍋の紅葉

11月3日の九重連山は晴。6時前の長者原付近の気温は−2℃。長者原着は、すでに6時前。東の空が黎明に染まり始めています。先週来、紅葉の状況が気になっていた三俣山へ向かうべく、大曲を発ったのはすでに6時を過ぎていました。東の空が徐々に明るくなる中で、西の涌蓋山付近も朝焼けに染まり始めるのを振り返り眺めつつ、すがもり越へと急ぎます。すがもり越に着いた6時30分過ぎ、大船山の右肩から一条の光が差し、徐々に三俣山西峰斜面を染めながら、間もなくすがもり越に朝日が注ぎ始めました。ミヤマキリシマの時期と並んで、登山客が大挙して押し寄せ大混雑する秋の行楽シーズンとあって、すでにこの時刻にのすがもり避難小屋にも、1組また1組と登山客が訪れるようになります。
快晴で無風の三俣山西峰登路からは、サクサクと心地よい音を立てながら、この秋初となる霜柱を踏み歩きます。朝日が燦々と照らす登路は徐々に暖かくなり、着用していたベストを脱いでも、無風の登路では太陽の光さえ浴びていれば、長袖のシャツ1枚になっても全く寒さを感じないほどです。
朝の清冽な大気に包まれた景色を堪能しつつ本峰に着き、気になっていた大鍋を見てみると、やはりすでに紅葉のピークを終えて鮮やかな輝きを失った状態です。まだわずかに名残を残すものの、喧噪の宴は終演し早くも夢の跡。この秋の紅葉は、全山とも一斉に色付き、遅れていた季節を取り戻すかのように一息に駆け抜けて行ったようです。2週間前に同じ三俣山を訪れた際、紅葉のピークまでは10日から2週間程度はかかるかな、と思えたところですが、やはり自然は予想を超える振る舞いを見せ、一気に色付きを早めて1週間後にピークを迎え、さらには一気にピークを終えるという、見事なまでの潔い幕引きを演じたのであります。

【11月10日】霜降る西千里の向こうに望む久住山

11月10日の九重連山は晴。6時頃の長者原付近の気温は2℃。11月もそろそろ中旬にさしかかろうというのに、今年の秋は再び足踏み状態です。一気に紅葉を加速させ、このまま冬へ直行するかと思えば、また暖かな日が続いています。予報では明日以降になると冷え込む日もあるということで、間もなく霧氷の便りも聞かれることでしょう。
一時の熱狂的ともいえる賑わいは終わったかと思ったのですが、依然として長者原や牧ノ戸峠には早朝から多くの車が駐車しています。その多くが登山客であることを思えば、今日もまた喧噪の一日を予感させるのであります。早朝から訪れる多くの登山客は、日の出を待って一斉に入山するので、多少とも混雑を避けたければ日の出前に入山するに限ります。ヘッドランプも不要なほど明るくなった6時30分頃、入山する登山客が徐々に増え始める中、牧ノ戸峠から入山しました。
沓掛山中腹の展望台に着く頃、三俣山方面から一気に明るくなり、間もなく日の出を迎えそうです。沓掛山に着く頃には涌蓋山頂付近も朝日に照らされています。間もなく星生山の肩に太陽が昇り、荘厳な九重連山の朝が訪れました。7時を過ぎた沓掛山は徐々に登山客が増え始めます。沓掛山下から扇ガ鼻下までの登路では、補修工事が始まっています。土砂が流れ荒れた登路に、石を敷き、歩きやすくする作業のようです。資材が登路脇に置かれていますので、これは人力で荷上げしたのでしょう。
霜柱に覆われた朝の登路を快適に歩き、まぶしく輝く朝日に包まれて徐々に暖かくなる中、8時頃に久住分れの避難小屋に着きました。徐々に登山客が増え始める中、御池の縁を経由し中岳へ向かいます。中岳には山頂標識付近に陣取った先客がいます。見下ろす中岳と天狗ガ城の尾根から御池にかけて点々と登山客のグループが見えますので、狭い登路で登ってくる登山客とのすれ違いによる混雑が始まる前に中岳を下り、天狗ガ城へ向かいました。天狗ガ城で遅い朝食を兼ねて大休止です。燦々注ぐ日に御池が輝き、風を避けるとポカポカと暖かな日差しに包まれ、周囲の絶景と相まって贅沢な時間を楽しみました。

【11月17・18日】快晴の雨ガ池と霧氷の三俣山W峰斜面

【11月17日】
11月17日の九重連山は晴。9時頃の長者原付近の気温は4℃。晴天に恵まれた穏やかな晩秋の朝でしたが、さすがに放射冷却で冷え込んだと見えて、気温も低めです。明日は友人との恒例の秋山行のため、今日は軽いお散歩ということで、長者原から入山して坊ガツルまでの、お手軽山行です。タデ原を抜け樹林に入ると、頭上は紅葉の名残を残す木々が晩秋の日に照らされて、未だ鮮やかに輝いています。さすがに最盛期のようなあでやかさはありませんが、まだ彩りを残す晩秋の森を抜け雨ガ池で小休止。穂綿を飛ばすススキの原と化した雨ガ池には誰もやってきません。紅葉時期の喧噪が信じられないほどの静けさが広がり、小春日和の九重連山には、穏やかな晩秋の時間が流れているようです。
坊ガツルへ下り、野営場で小休止した後、法華院山荘で昼食を兼ねてのんびり休憩しました。夕方に友人と長者原で待ち合わせて長者原某所に宿泊するので車の運転も心配なく、普段の山行では自重しているビールも飲んで、食事後は多少寝心地の悪いベンチではありましたが、1時間あまり昼寝をしてから、すがもり越経由で山を下りました。予定通り友人と合流し、夜は大宴会。夜もしみじみと更け、一段と冷え込んだ中、締めは温泉に浸かり、火照った体にビール流し込み、2次会ということで寝酒を飲んで酩酊し、いつしか寝ていました。

【11月18日】
目覚めはいつになく快適で、牧ノ戸峠まで様子を見に車を走らせました。気温は2℃。明るくなるのを待って入山する登山客も、先週よりはるかに少なく、やはり一時の熱狂的な賑わいはピークを過ぎているようです。宿に戻り朝食後に少々のんびりしてから、大曲へ移動。9時30分前に入山しました。
気温は2℃で、曇り空のためか早朝から気温はほとんど上昇していません。ガスがかかる三俣山を目指し、まずはすがもり避難小屋へ向かいます。今秋第2波となる寒波襲来で、ガスがかかる三俣山には霧氷も観察されるはずです。避難小屋へ着いた10時過ぎには、すでに数名の登山客が休憩中です。すがもり避難小屋付近の気温は0℃。気温は低いとはいえ、まだまだ真冬の並みの寒さほどではありません。しかしながら、とにかく風が強く、体感気温はかなり低くなっているはずです。
三俣山西峰斜面を淡々と登ると、しばし上空のガスも晴れ久住山方面や大船山も見渡せるようになり、薄日も差すようになりました。西峰へ着く頃には再びガスに覆われ周囲の景色も開けなくなりました。西峰には予想どおり霧氷が着いています。本格的な全山一面の霧氷というほどではないのですが、晩秋をから初冬へと移ろう確実な季節の変化を実感させるには十分な霧氷です。登路の霧氷を楽しみつつ、本峰から南峰へと歩きました。一段と濃くなるガスと強烈な風が吹く山頂はさすがに寒くて、ガスに吹かれて全身に霧氷が張り付きます。正午前には粉雪も舞い始めたため、早々に山を下りました。

【11月24日】中岳の肩に昇る御来光と御池の薄氷

11月24日の九重連山は晴。5時前の飯田高原の気温は−2℃。晴天に恵まれた穏やかな晩秋の朝です。煌々と照らす月の明かりで満天の星もかすむほどの好天です。5時過ぎに牧ノ戸峠に着き、早々に装備を確認し、ヘッドランプを灯して入山しました。
沓掛山山頂付近にさしかかったところで、がさがさと物音がするのでライトで照らすと、これも軽装の登山客です。ランプも照らさすに、山頂で待機中のようです。
牧ノ戸峠から舗装された登路をお手軽に登れる沓掛山特有の現象である、暗闇から突然現れる人影という第3種接近遭遇の危機を無事回避し、沓掛山下へと下ったところで、西の雲間に月が隠れます。どうもガスが押し寄せているようです。扇ガ鼻分岐を経て西千里ガ浜入り口のケルンのあたりにさしかかっても、依然としてガスに覆われたままです。日の出後に気温が上昇すればガスは消えるはずですから、このまま御池へ向かうべきか、撃沈覚悟で星生山へ向かうべきか悩みました。
日の出の時刻が刻々と迫る中でしばし思案していると、6時10分過ぎに一気にガスが晴れ始め、目の前には日の出前の黎明に浮かぶ久住山がガスの切れ間に現れ、上空には明けの明星(金星)も輝いています。迷わず星生山に駆け登り、山頂で日の出を待ちます。
6時45分頃、天狗ガ城の南側地平線を覆う雲の上に太陽が昇ります。光と陰の演出する朝のショータイムは束の間で、日が昇り周囲は一気に明るくなります。今日も久住山周辺には喧噪の朝が訪れました。一段落付いたところで、山頂を吹く風を避け、すっかり明るくなり朝日に照らされて暖かな山頂東側斜面で豪華な朝食タイムです。日が昇ると気温は急上昇し始め、快晴の空の下快適に歩けます。星生山から星生崎にかけての岩陰にはうっすらと雪も残り、晩秋から初冬へと移ろう季節を実感しつつ、久住分れを経て御池へ向かいます。
御池はこのところの朝晩の冷え込みのためか、薄氷ではありますが湖面が氷結しています。ミシミシと不気味な音も聞こえています。いつものことながら、おびただしい数の投石が湖面を覆う氷の上に載り、残念ながら見苦しい状態です。投石をする人の心の貧しさは哀れで、同情すら感じます。自然の景観を破壊する方向へ向かう心情というものは理解することは不可能で、マナーやモラルというよりも、自然界の一部である人間の行為におけるエントロピーの増大に抗する心の機能、そんな心の在り方というものを考えざるを得ません。憤りというよりも投石した人の心の貧しさに同情するなどというのは、もはや悟りの境地にまで踏み込んだのかも知れません。ああ、なんと道徳的な・・・、少々飛躍しすぎですね。(笑)
氷結した御池を一周し山を下り始めた9時過ぎ、久住分れ付近には次々に登山客が訪れるようになります。牧ノ戸峠までの下る復路では、数名単位の団体と切れ間なくすれ違い挨拶攻撃に遭います。「こんにちは!」がやがて「んちゃ」になり、ついには目礼だけになるという、毎度の「こっちの身にもなってくれよ!」と言いたくなるほどの挨拶攻撃であります。この時刻に無愛想で怪しげな風体の登山客が下ってくる場面に遭遇していたら、それは間違いなく私です。平にご容赦を。(苦笑)


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