2009年 春

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2009年3月

【3月7日】フクジュソウ咲く

3月1日の九重連山は晴のち曇。午前9時過ぎのガラン台付近の気温は1℃。久住高原を経て七里田から有氏牧野道を通りガラン台へ登り、9時30分過ぎに入山しました。
森の中に春の気配を探しつつ、入山公墓付近で先行の登山客追い抜き鳥居窪も休憩なしで通過。テラス状のテーブル岩で小休止の後、さらに淡々と登り続けます。テラス岩を過ぎた後は登路にも残雪が残っているのが確認できますが、ほとんど汚れがない雪なので、もしかすると先週の平地の雨は、山頂付近にかけては雪になっていたのかも知れません。
特に撮るものもなく淡々と歩いたので、山頂に着いたのは11時40分過ぎで、ガラン台から1時間30分程度でした。山頂にはすでに先行の登山客もいて、ほとんど無風の山頂付近でしばしくつろぎ、昼食タイムの後に御池へ下りました。
御池は一度完全解氷したものと思われ、薄氷が湖面全体を覆う状態でした。御池を発ち東尾根を下ると、登路は比較的残雪も多く、前セリまでの急傾斜の登路は滑りやすく少々手こずりました。ひとまず無事に前セリへと下り、ガラン台へ帰着したのは13時20分頃。
山行後は恒例の黒岳山麓散策。某所のフクジュソウを探してみると、やはり咲いていました。黄色の可憐な花が咲いている株を確認できたのは3株程度で、その他はまだ指先ほどのツボミを膨らませていました。

【3月14日】凍えるマンサク

3月14日の九重連山は雪。午前8時過ぎの牧ノ戸峠の気温−6℃。真冬並みの寒波が襲来し、先週までの暖かな天気から一変して冬に逆戻りしたような景色が広がります。長者原から牧ノ戸峠にかけてはチェーン規制が出されています。
牧ノ戸峠で−6℃ですから、山頂付近は−10℃近くになっているわけです。真冬ならなんてこともない気温ですが、牧ノ戸峠Pに駐車する車は私1台のみで、強めの風と粉雪が降っており、車外に出るのがためらわれます。8時30分過ぎに突然バスが2台やってきて、あれよあれよという間に売店横の空き地に40〜50人近くの人があふれます。横断幕を広げ、何やら気勢をあげ、写真撮影まで始めました。言語は明らかに韓国語のようでありまして、最近のウォン安で、とみに貴重な隣国からのお客様のようであります。この人数の団体に巻かれるとやっかいなので、意を決して9時前に入山しました。
静かなはずの山行は一転し、隣国からのお客様に追われるように山を駆け登ることになったのであります。風が強かったらしく、ほとんど積雪がない場所や吹きだまりもあり、積雪は平均すると5cm程度です。西千里ガ浜を一気に抜け、久住分れの避難小屋に待避。フリースを着込んで早々に小屋を出ます。
久住分れを抜け、御池へ向かいます。周囲の木々に着く霧氷は厳冬期に比べるべくもなく控えめなもので、こんなところにも行きつ戻りつしながらも確実にやって来る季節の移ろいを実感します。御池は当然ながらわずか一夜の寒波で凍結するわけもなく完全解氷しているわけで、湖岸の岩が氷でコーティングされている程度です。強い風が吹き抜け、カメラを構えても風にあおられ、ぶれてしまいます。かろうじて数カット撮影し、続きはまた来週ということで、潔く退散です。

【3月21日】春の使者 フキノトウ

3月21日の九重連山は晴。午前7時頃の長者原付近の気温は5℃。夜半に強い南風が吹き、硫黄山の噴煙も水平に流れ、すがもり越付近は強い南風が吹いています。風は、生暖かさを感じるような風です。先週の冷え込みや名残雪を思えば、自然は気まぐれで予想を超える挙動を見せてくれます。午後からは曇るという予報でしたので、速攻で山行を終えて下ることにして三俣山に取り付きます。
西峰から本峰にかけても強めの風が吹いていますが、実に心地よく寒さを全く感じることなく南峰着。上空を吹く強い風に乗ってカラスが巧みに空中遊泳しています。最初はカラスと気付かずに、見事に風に乗って上空を飛行しているのでトビかワシではないかと思ったのですが、鳴き声はカラスで、近くに飛来すると当然ながら真っ黒。(笑)山を吹く強い風を上手く使って、あんなに高く飛べるものなのですね。デポしたザックのチャックを開けて食料をくすねたり、いたずらし放題の山のギャングは、こんな器用なこともできるわけで、全く感心するばかりであります。
坊ガツルを見下ろすテラスに移動し、岩陰で風を避け心地よい春の日を浴びながらくつろぎ、気付けばすでに10時を過ぎています。昨日のガスと雨のためか、ダストがなく澄んだ空気は視界も良好で、のんびりし過ぎたようです。黒岩山方面には阿蘇外輪山付近の野焼きと思われる黒い煙のたなびきも見られ始めます。登山客も急激に増えてきましたので早々に山を下り、山麓でのんびりと春探しにいそしみました。

【3月28日】消失した三俣山南峰・春浅い坊ガツル

3月28日の九重連山は曇。午前7時頃の長者原付近の気温は1℃。大曲から7時30分過ぎに入山、先週火災が発生した三俣山南峰の罹災状況を確認すべく、一路三俣山へ向かいます。すがもり越の避難小屋で小休止してから一気に西峰へ向かいます。西峰の稜線に出て、南峰が見渡せる場所に出ると、何とも痛々しい黒く変色した南峰斜面が姿を見せています。本峰を経て南峰の火災現場を確認すべく、焼け跡も生々しい南峰南西側斜面を歩きます。

かなり火勢が激しかったようで、生木のドウダンやミヤマキリシマが焼け焦げて、登路には炭化した枝が落下しています。今回の火災で延焼した面積は、1haということでありますが、感覚的にはもっと広そうな気もします。まず南峰山頂付近のミヤマキリシマなどの樹木はほぼ完全に焼け、山頂南東にある坊ガツルを見下ろすお気に入りのテラス付近から坊ガツル側の南斜面、?峰側の南西側斜面にかけてほぼ焼失しています。実に痛々しい限りで、枝が炭化したミヤマキリシマや、焼けて表皮がはがれ白い樹幹が覗くドウダンの墓場です。感覚的には坊ガツルの野焼きよりも、完璧に焼けているほどです。

これだけの痛手を負うと植生の回復には相当の期間が必要になるのでしょうね。まず、枝が炭化するほど焼けてしまったミヤマキリシマやドウダンの株が再生するのかが問題です。ミヤマキリシマは厳しい自然条件の場所に自生する植物ですから、本来的には強い植物であることは容易に想像できるわけで、人による盗掘やシャクトリムシの食害・温暖化による気候変動など深刻な影響を与える要因はそれほど多くはないはずですから、生き残った株の回復力に期待するしかありません。

痛々しい火災現場を一回り巡っている間に、焼けた枝先に触れて着衣は真っ黒・・・。山頂からは、直登の登路を駆け下り坊ガツル野営場へ向かいます。野営場には今日もテントが張られており、浅春の野営を満喫されたのでしょうね〜。今年もそろそろ野営の好機となりつつあり、例年どおりのペースでGWには野営を敢行したいところです。

2009年4月
【4月5日】バイケイソウの芽吹き

4月5日の九重連山は曇のち晴。午前7時過ぎの長者原付近の気温は6℃。泉水山麓は野焼きを終え、黒々とした大地が広がっています。8時前に長者原から入山し、まずは雨ガ池へ向かいます。森の中で春の息吹を探す山行も一興で、一際目を引くバイケイソウの芽吹きや木々の枝先の新緑を楽しみつつ、雨ガ池へ向かいます。登路には杭が打たれ、整備作業が始まろうとしています。
三俣山北東側斜面にはマンサクが見事に咲いていて、3月中旬に指山付近から牧ノ戸峠にかけてマンサクが早めに咲き始めた頃、今年は三俣山のマンサクは不作だな〜、と思ったところでして、これはもう単に咲くのが遅れていたということなのです。思いの外よく咲いているマンサクに誘われて、雨ガ池から三俣山へ向かいます。雨ガ池から小鍋へ向かう登路付近のマンサクは、今が満開という感じです。小鍋へ着くと、ここもマンサクがピークを迎えています。三俣山に関しては、今年のマンサクはまずまずの咲き具合のようです。
先週に続き火災現場となった南峰の坊ガツルを見下ろすテラスで小休止。坊ガツルも近々野焼きが行われて、漆黒に変わるのでしょうが、今はまだ冬枯れの景色のままです。三俣山南峰では、やはり被害は甚大で、焼けて炭化したドウダンやミヤマキリシマが実に痛々しく見えます。山頂を渡る風は依然として冷たく、早春の三俣山で移ろいゆく季節を満喫してから山を下りました。

【4月11日】大船林道集材路・野焼きを終えた坊ガツル

4月11日の九重連山は晴。午前7時過ぎの飯田高原の気温は8℃。6時過ぎに玖珠町の宿を発ち一路九重連山へと向かいます。吉部に着く頃にはすでに7時を過ぎています。駐車スペースにはすでに先行の登山客の車が駐まり、入山しようとしているところでした。7時30分前に入山、木々の芽吹きを確認しながらの森散策です。

これから5月のGWの時期にかけての醍醐味は、やはりお決まりの森散策でありまして、今回も鳴子川沿いの登路をのんびりと歩きます。足下には春の息吹を感じさせる自然の気配が漂い、目を引く派手な演出こそありませんが、ハルトラノオの慎ましやかな花が咲き、ヤブレガサやバイケイソウの芽吹きも大地の息吹を感じさせます。落ち葉を持ち上げ芽吹いている植物の姿は、厳しい冬を耐えた力強さを感じさせるもので、小さな生命ではありますが、自然のしたたかさを感じさせてくれます。

大船林道に抜けて、平治岳北登路へ向かう集木路へ入ります。芽吹き始めた木々の緑が慎ましやかに輝き、九重連山の遅い春も本番を迎えようとしています。ミヤマキリシマのシーズンには登山客が絶えない平治岳北登路も、この時期はまださすがに閑散としており、当然ながら平治岳も恐ろしく静かです。

平治岳南の峰の大戸越を見下ろす岩場で、野焼きを終えた坊ガツルを見下ろしながら、しばし周囲の眺望を楽しみつつ小休止の後、平治岳を下り坊ガツルへ向かいます。ミヤマキリシマのハイシーズンの喧噪は一体何だろうというほどに大戸越も閑散としています。

はやる気持ちを抑えつつ坊ガツルに着くと、野焼きを終えた漆黒の大地がお出迎え。野焼き後に雨が降っていないため、まだ焼け跡の灰も生々しくリアリティーがありますね〜。ついでに、まだわずかに焼け跡の臭いも漂い、野焼きの臨場感が伝わってくるようです。

それにしても、早めに雨が降って灰が落ち着かないと野営に支障が出そうです。炊飯場周辺は火が入っていないので問題なくテントが設営できそうですが、人が集まる炊飯場周辺の喧騒を避けて少々離れた場所にテントを設営することが多いわけで、焼け跡の灰も生々しい中にテントを設営するとなると、間違いなくアンダーシートやテントは真っ黒になります。今しばらく待って、例年どおりGW前の状況を見てテントの設営場所を考えれば良いことなのですが、やはり気になるな〜。気になり出すと早速野営がしたくなるというのが人情というもので、何だかウズウズとしてくるのであります。(笑)

ひとまず坊ガツルでは、今年も無事に野焼きを終えたわけで、まずは一安心。焼け跡の灰が落ち着く頃には、今年も間違いなく坊ガツルの夜を堪能するというか、単に自然の中で美酒に酔い酩酊するだけというか、目的はともかくとして坊ガツルの喧騒に飲まれる野営を敢行する時期が徐々に近づく予感のする春の一日でありました。

【4月18日】星生山麓のマンサク・輝く山肌

4月18日の九重連山は晴。午前7時頃の長者原の気温は8℃。7時30分前に入山、あてもないまま沓掛山を過ぎ扇ガ鼻分岐をめざします。星生山と扇ガ鼻の谷に朝の斜光線が 注ぎ、思いの外花期が長くなった気のするマンサクと、枝先を赤く染め芽吹きの彩りを予感させる木々の群れを鮮やかに照らし、これから山頂付近の木々も一斉に芽吹いて、山が本格的に躍動し始めようとしている季節の臨場感があふれています。

上空は快晴で、気温も急上昇し始めたようで、とにかく暑い!シャツの腕をめくると心地よいのですが、この時期は紫外線に注意が必要で、徐々に焼かないと痛い目に遭います。昨年は連休中の野営で一日で大焼けしてますから、今年こそは徐々に日にならして夏モードにしていかないといけません。そんなことで、長袖シャツを着てきたのですが、その決意もむなしく結局めくりあげていた腕がしっかり焼けてました。まあ、この程度なら風呂で叫び声をあげるほどのこともないので、なんてことはありません。

さすがの晴天で吹く風も優しく、実に心地よい山行日和です。御池に映る中岳を眺めつつ湖岸で小休止。団体さんが中岳方面へと向かっているのを横目に眺めつつ、池の小屋に向かいます。先週地元紙でアナウンスされましたが、池の小屋の再建が決定したようで、この夏に工事を始め冬までには完成するということです。外壁は補強して利用するということですが、実際に現地で確認して見ると、基礎から再構築するにはかなり大がかりな工事になりそうです。資材の運搬はバイオトイレ同様にヘリで行うそうですが、作業する人は毎日牧ノ戸峠から登ってくるのでしょうか。何だかうらやましいような気もしますが、これが仕事となるとやはり大変なわけで、恐縮至極であります。

老朽化した池の小屋の付近で、冬場を中心に何度もこの小屋に助けられたな〜と感慨に浸っていたところ、中岳山頂から先ほどの団体さんの歓声と声高に歌う坊ガツル賛歌までが聞こえ、何だかな〜これって・・・・。「感動をどう表現しようと、それは自由だろうが!」と言われれば、これはもう「ああそうですか〜」というしかないのですが、「お願いだから山では静かに感動してねッ」とそっと伝えたい気分であります。

何だか久々にじっくりと眺めてみたくなった池の小屋を堪能した後は、御池を迂回し癒し山行を決めて天狗ガ城山頂で大休止です。10時前になると例によって星生崎を越えて多くの登山客が訪れ始めます。牧ノ戸から久住山・中岳方面のルートはお手軽ですし、何より登路の眺望にすぐれるため、やはり九重連山でも特異な賑わいを見せるわけで、御来光鑑賞や早朝山行並に早めに山を下らないと驚愕の賑わいに巻かれてしまうことになります。牧ノ戸峠に帰着した正午頃、駐車場はすでに満車で、周辺のスペースにも車が駐められていました。早々に山を下り野焼き後の大地に咲き始めたキスミレを撮影して帰路に着きました。

【4月26】黒岳のツクシシャクナゲと新緑

4月26日の九重連山は曇。午前6時過ぎの飯田高原の気温は3℃。春の嵐が吹き荒れた昨夜、一夜明けても天気は小康状態で劇的な回復は望めず、山頂にはガスがかかっています。北海道では春の雪が降るという予報が出されていましたし、飯田高原で3℃ということは、山頂付近の気温は間違いなく0℃以下で霧氷も見られるはずですが、さすがにこの時期の霧氷に何らの感慨はなく、ただ寒いだけです。(苦笑)
九重連山関連のサイトを開設されている諸兄らの情報も今年はなぜか少ない前岳のシャクナゲの様子を確認すべく、飯田高原から男池を経て庄内町の白泉荘の登山口に向かいます。
白泉荘付近のシャクナゲはほとんどの株がすでに花期を過ぎているようです。玖珠町の山間部にある職場付近のシャクナゲが2週間程前から咲いていたので、前岳付近のシャクナゲの様子が気になっていたのですが、どうやら例年より多少早めの開花となっていたようです。果たして前岳付近のシャクナゲの様子はどうかと気になるところでありまして、はやる気持ちを抑えつつ午前7時30分前に入山しました。
入山して間もなく何だか見覚えのある人だな〜と思いつつご挨拶をした先行の登山客はCafe MatsuzakiのマスターことMatuzaki氏であります。やっとかたぎの世界?に復帰し、無事に山行されていたので久々の再会で感激です。
シャクナゲの咲き具合は、近年の例でいえば大咲きした2005年ほどではなく、2007・2008年よりは随分と見応えのある咲き具合というところでしょうか。白泉荘から入山してから阿蘇野集落を見下ろす標高1100m付近までの株は、現在満開。1100m付近のテラス岩付近ではすでに枯れ花が目立つちピークを過ぎた株も散見され、ここから山頂付近にかけては、開花目前のつぼみをつけた株が多めで、南斜面の株はすでに満開です。珍しく全山がほぼ同時期に花期を迎えているようで、麓から1100m付近までは今週がピークで、山頂付近にかけては5月初めまで花が楽しめそうです。黒岳山開きとシャクナゲ観賞登山で混雑することを覚悟のうえであれば、29日あたりが最適かも知れません。
ここまで半袖で登ってきたのですが、山頂手前であまりの寒さに耐えきれずジャケットを着用しました。山頂手前の台地では昨夜の風で落ちた花が目立ちます。花期を終えて散った花のジュウタンであれば、シャクナゲのレッドカーペットよろしく贅沢な気分で歩けるところでありますが、生き花やつぼみが風で散っているもは実に痛々しい限りです。
9時過ぎに前岳山頂に着き、先行したMatuzaki氏にコーヒーをいただきしばし歓談。ウインドヤッケまで着込んでいただく温かいコーヒーはまた格別です。それにしてもこの寒さは一体・・・。粉雪まで降っていますから、かなりの冷え込みと思いきや、温度計を見て−2℃ということで納得。どうりで尋常ではない寒さを感じたはすです。
山頂で10時前まで歓談し、高塚山へ縦走するMatuzaki氏と別れ、白泉荘へと下ります。上空を覆う雲(ガス)で太陽もガスに隠れがち。折角の新緑と満開のシャクナゲも今一歩の撮影条件でしたので、復路はひたすら上空を覆うガスの切れ間から太陽が覗くのを待ちつつの持久戦となり、白泉荘まで下ったのはすでに正午を過ぎています。復路は男池入り口のギャラリー茶屋「おいちゃん家」で鴨肉の炭火焼きとつくねを買い、飯田高原で昼食を摂ってから帰路に着きました

2009年5月

【5月1・2日】坊ガツル野営場の夜と朝

【5月1日】
5月1日の九重連山は晴。18時過ぎの飯田高原の気温は16℃。例年のごとく暦どおりの休日となるわけで、GWも中盤に差し掛かった1日夕刻から、例年のごとく坊ガツルの喧騒を堪能すべく野営を敢行しました。
吉部着はすでに18時過ぎで、周囲の森が徐々に薄暗くなる目前であります。早々に装備を確認し、夕刻の登路を坊ガツルへ向かいます。森の中は薄暗く、それでもヘッドランプを灯すほどではなく、夜のとばりが降りる前にテントの設営を済ませたい一心でひたすら急ぎます。大船林道を抜け、坊ガツル北端へ着く頃には平治岳や大船山は夕暮れを終え、上空にちらほら星が望める状態でした。
何はともあれ法華院山荘でビールを調達し、坊ガツルのテント場へと向かいます。薄明かりの中急いでテントを設営しましたが、ついにランタンとヘッドランプの助けを借りなければ設営もおぼつかなくなり、設営を完了して夕食の準備に取りかかった頃、ふと時計を見るとすでに21時前です。
何はともあれ、テントさえ設営してしまえばもうあわてることはありません。冷静になって周囲を見渡すと、すでにテント場には色とりどりのテントの照明が、青森ねぶた祭の灯籠(ねぶた)を思わせるように灯っています。何だか例年のGWの走りの頃に比べてもずいぶんと少ないような・・・。ともかく明日明るくなってから数えてみることにして、エビスビールで喉の渇きを潤してからはお気に入りのWILD TURKEYで、夜空に輝く星を肴に坊ガツルの夜を静かに深く堪能したことは言うまでもありません。寒くなりテントに転がり込みWILD TURKEYと添い寝をしつつ、いつしか酩酊して寝てしまったのであります。そういえば、今年は坊ガツル名物のイビキの大合唱もなかったような気もしますし、野営客が少なかっただけかも知れませんが、いつになく静かなテント場の夜は、これまたいつになく静かに更けていくのであります。

【5月2日】
例によって爆睡し、ふと目覚めると3時過ぎ。恐る恐る外を覗くと、満天の星空です。こうなると朝駆けせねば。(苦笑)私にとっては、坊ガツルで野営をするというより、おいしくお酒をいただくことができれば、それで目的は自己完結しているわけで、朝駆けはいわばトッピングメニューのようなものであります。結局のところシュラフの温もりから抜け出せないまま、気付けばすでに3時30分を過ぎています。
意を決してテントを這い出すと、ヘッドランプに照らされたテントも野営場の地面にも霜が降りています。気温2℃ですから、晴天で冷えたようです。おぼつかない足取りで4時30分過ぎに段原着。山頂には先行者のランプが光ります。徐々に黎明に変わりつつある東の空を横目に見ながら5時前に山頂に着き、福岡から来られて2泊目という先行の登山客にご挨拶。黎明に染まる東の空は地平線を覆う水平な霞んだ層に仕切られ、今日も地平線からの日の出より10分程度は遅くなりそうです。5時27分頃、霞の上に太陽が昇りはじめ、今回もまた荘厳な朝の儀式の始まりであります。
劇的な御来光とはほど遠く、淡々と明け行く九重連山ではありますが、朝はやはり爽快です。朝駆け専科の諸兄らには敬服至極でありますが、やろうと思えば私にもできるんだということを時々確かめておかないと、毎週末ごとに性懲りもなく深酒をして朝が弱いという誤解?を与えかねないという危機感を感じるわけであります。しかし、これはもう歴然とした事実ですから否定はできませんね〜。(苦笑)
日の出を堪能した後、山頂でのんびり休憩です。7時過ぎには登山客がやって来るようになり、坊ガツルへと退散します。朝日を浴びた坊ガツルで、テントが乾くのを待ちながら、シートの上に野営装備を広げ、寝転んでしばし至福の時を過ごします。真夏だと日の出後の気温の上昇が早く、すぐに暑くなるため早々に撤収し山を下らないといけないところでありますが、この時期なら快適です。やはり坊ガツルの野営の適期は春や秋だな〜とつくづく感じる一時です。
10時前になると、野営場を訪れる登山客も急に増えます。大船山を下った頃は20張りほどあった野営場のテントも、撤収が進んで少なくなっています。連泊できれば楽しいのでしょうが、さすがに夕刻からの所用のためにそれも不可能でありまして、未練を残しつつ10時過ぎに野営場を発ちました。復路は鳴子川沿いの登路をのんびりと散策しながら下ります。イチリンソウやヒトリシズカ、ヤマシャクヤクなど春の花が登路脇を飾り、新緑のトンネルが続く登路を心地よい汗を流しながら、12時前に吉部へと帰着しました。
今年はGW半ばにもかかわらずテント場のテントも少なく、正午過ぎの吉部の有料駐車場には1台が駐車しているだけです。出足が遅いだけかも知れませんが、いつになく登山客が少ないような気もします。5月4日には再度日帰りで状況を確かめに行く予定です。予報では少々天気も心配されるわけで、果たしてどうなりますか。

【5月4日】ヤマシャクヤク

5月4日の九重連山は曇時々雨。恒例であります友人との春山行です。中学生も加わった怪集団が、飯田高原に着いた8時30分頃、山頂にはガスがかかるあいにくの天気です。このような天気ですと、ガスに覆われたに山頂へ向かうより、当然のごとく2日前に往復したばかりとはいえ、坊ガツルへの散策の方が好適なわけで、迷わず行程は吉部から坊ガツルへの往復に決定です。暑くもなく寒くもなく、気温は???でありまして、すっかり失念していました。

午前9時過ぎに入山、時折昨夜来の雨粒が木々から落ちてくる新緑の森を歩きます。登路脇にはチゴユリやイチリンソウが咲いています。2日前には花弁を閉じていたヤマシャクヤクも雨滴をまとって咲き始め、木々の葉に雨粒がつき一段と緑が鮮やかさを増したように感じる森を、ミツバツツジやシャクナゲの花を愛でながらのんびり歩きます。坊ガツル北端に着くと、三俣山や大船山の山頂付近は濃いガスに覆われており、上空からはガス雨も降っています。坊ガツル野営場へ向かう道に差し掛かる頃には徐々に雨粒が大きくなり、雨具を着用し法華院山荘へ向かいます。

11時30分に法華院山荘着。その頃には坊ガツルにガスがかかるようになり、雨粒も一段と大きくなって本降りになりそうな雰囲気です。山荘の談話室を借りて昼食の後、坊ガツル野営場へ向かいます。2日前には20張り程度だったテントは、それでも多少増えていますが、雨の影響があったのかどうか、例年になく静かな坊ガツルのテント場であります。帰路も雨の合間を縫うように森の登路を歩きます。午後にかけて時折小雨が降る天気でしたが、雨脚は強まることもなく吉部へ帰着。その直後から、本降りとなりました。

【5月9日】無残な姿をさらす三俣山南峰

5月9日の九重連山は晴。7時頃の長者原付近の気温は8℃。今回はGWの疲れを癒すために、火災後の回復状況が気になる三俣山南峰へのお手軽山行としました。新緑がまぶしい登路を淡々と歩き、すがもり避難小屋から三俣山西峰登路へと取り付きます。本峰と?峰の谷にあるシャクナゲは、ツボミを色付かせたところで、前岳あたりより2週間程度遅れています。
南峰山頂付近は、火災発生から50日ほど経過しているのもかかわらず、回復の気配はありません。焼けて炭化したミヤマキリシマの株は依然として痛々しい姿をさらしており、焼け跡の焦土には芽吹きの気配もありません。
南峰山頂付近は、もともとササが茂る原野にミヤマキリシマの株が点在している状態でしたので、焼け跡には坊ガツルなどのように表土が表れてはおらず、細かい乾燥した腐葉土のような層があります。これまでササが茂り他の植物の種子も落下しておらす、表土ではなく枯れたササの葉が砕けて積もった層が表土を覆っているわけで、芽吹く植物もササ以外にはないのでしょう。地元紙のコメントでは、植生は80%程度は回復するということでありましたが、焼け焦げたミヤマキリシマの株が回復できるのかどうか、懐疑的にならざるを得ません。
三俣山の植生の回復については、今後も注意深く観察していくつもりです。唯一の救いは、焼け跡の表土が見える場所に芽吹き始めたマイヅルソウの緑でありました。新たな生命の息吹きにささやかな安堵を感じるのであります。

【5月16日】沓掛山のツクシシャクナゲ

5月16日の九重連山は曇。7時頃の牧ノ戸峠の気温は12℃。6月の梅雨入りまでの間は、山開きやミヤマキリシマのハイシーズンを迎え、九重連山が1年で最も活況を帯びる時期が迫っています。
上空は薄雲が広がり、山頂付近にはガスがかかるあいにくの天気です。7時過ぎに入山。沓掛山北斜面は、現在ツクシシャクナゲが満開です。沓掛山でタイミング良くシャクナゲに出会ったことがなく、このように咲いている様子を見かけるのは久しぶりです。
沓掛山からは登路脇にミヤマキリシマも咲き始め、今年の咲き具合が気になるところです。虫害の発生状況も気になるところで、やはり平治岳や北大船山周辺の様子も時機を逸しないように確認しておきたいところです。出かけてみたらいきなり満開だった、というのもまあそれはそれで悪くはないのですが、花芽の膨らみ具合を観察しつつ、そろそろ満開かな〜と期待するのもまた楽しい1週間を過ごせるものであります。
扇ガ鼻分岐からガスの中に入り、その後は淡々と歩くだけです。久住分れも御池もガスの中で視界も開けず、ガスが晴れることに期待し中岳山頂で風を避けて待機します。9時前から10時前まで1時間ほど山頂で待ちましたが、結局ガスは束の間薄れるものの、周囲が見渡せるほど晴れることはありませんでした。待機していた1時間余りの間、なぜか中岳山頂を訪れる登山客は皆無で、山頂を独り占めという、まさに至福の一時を過ごしました。

【5月23日】開花が始まるミヤマキリシマ

5月23の九重連山は晴時々曇。6時前の飯田高原の気温は9℃。山開きを2週間後にひかえ、ミヤマキリシマに心酔する多くの登山客が大挙して押し寄せる季節となりました。吉部の大船林道入り口は閑散としています。駐車車両は数台で、有料の駐車場には1台も駐車していません。駐車場所の確保に苦労するこの時期にもかかわらず、あっけなく駐車できてしまったのであります。
心地よい瀬音を聞きながら鳴子川沿いの登路を抜け、平治岳北登路へ向かうと、頭上を覆う鮮やかな緑の葉の間からは爽快な朝日が注ぎ、心地よい春の朝となりました。平治岳北登路は相変わらず水分の多いクロボクの滑りやすい状態です。一気に視界が開ける平治岳山頂方面を見上げる北西側平治の尾に出ると、満開に近い株も見受けられます。
平治岳山頂から南の峰にかけては、虫害がほとんどなく、登路脇に虫害を受けた株は見当たりませんでした。
ツボミの付き具合はきわめて良好で、今年の平治岳は期待できそうです。開花状況は昨年と比べ多少早い程度です。平治岳のミヤマキリシマの開花状況は、おおむね以下のとおりです。

平治岳山頂付近 ・・・ 1部咲き。虫害がなく良好。ピークまで10日から2週間。
山頂南側斜面  ・・・ 1部咲き。山頂付近と同じく、ピークまで10日から2週間。
南の峰頂上付近 ・・・ 2部咲き。ピークは1週間から10日。
大戸越斜面   ・・・ 3〜4分咲き。高度に応じ下部から順調に咲き上がっている。
大戸越付近   ・・・ すでに満開に近い株も散見される。虫害がなく花は良好。

大戸越から北大船山登路に入り、イワカガミのお出迎えを受けながら順調に高度を上げていきます。北大船山北西の大戸越側斜面のガレ場付近から上部は、やはり虫害が広がっています。葉が食害に遭い樹勢を落とした株や、開花直前にまで膨らんだツボミが虫害に遭っている株もかなりあります。北大船山の大戸越側斜面から北大船山頂手前にかけては、残念ながら今年も虫害が進行し、平治岳とは明暗を分けた感じです。

大戸越側斜面  ・・・ 虫害が進んでおり、開花は微妙
米窪周辺    ・・・ 1分咲き。虫害が少なく良好。ピークまで2週間。
北大船山頂付近 ・・・ 虫害が少なく良好。ピークは10日から2週間。

北大船山に関しては、虫害はあるものの段原付近では限定的で、ほとんど影響は見受けられません。北大船山頂付近で、絶景を眺めながらのんびりと休憩した後、坊ガツルへ下ります。すでにテントが数張りあり、その後も正午前後にかけて徐々にテントが増えていきました。坊ガツル野営場で昼食を兼ねて大休止の後、少々雲が広がり始めた坊ガツルを正午過ぎに発ち、13時過ぎに吉部登山口へ帰着しました。

【5月30日】佳境を迎えた平治岳のミヤマキリシマ

5月30日の九重連山は曇時々雨。5時過ぎのの飯田高原の気温は11℃。濃いガスに覆われ、運転にも気を遣うほどの状態でした。いよいよ山開きまで1週間。ミヤマキリシマのピークを迎えつつある時期だけあって、早朝から多くの登山客が押し寄せ吉部の大船林道入り口付近はすでに5時過ぎには混雑し始めていました。
平治岳はこの週末から次週にかけてがピークで、満開時期前の、7〜8部咲きあたりが鑑賞の適期で、開花も標準的な時期といえます。
まずは登路を歩き始めると木々から滴り落ちる水滴の洗礼を受け、登路脇の枝に触れどんどん濡れていきます。ずぶ濡れになるほどでもなく、着衣が少々湿る程度で再び大船林道に合流。平治岳北登路へ取り付きます。

先週は状態が良かった平治岳北登路は、昨日の雨をたっぷり含んだクロボクがズルズルに滑り、ハシゴのある岩場から平治の尾にかけては、極端な泥濘地と化した場所もあり、転倒しやすい状態で、利用者の急増でさらに荒れています。
平治岳山頂方面を見上げる北西側の平地(平治の尾)に出ると、ほぼ満開で枯れ花も混じり始めています。さらにズルズルと滑りながら7時30分頃に平治岳山頂着。虫害は依然としてなく、花はきわめて良好です。山頂付近を濃いガスが覆っているため視界が開けない状態で、近くは確認できるのですが、周囲の状況が不明です。山頂で30分余り過ごし、ガスの切れ間を待ち、南の峰へ移動。ここで1時間ほど待機し、ガスの切れ間を待ちます。平治岳のミヤマキリシマの開花状況は、おおむね以下のとおりです。

平治岳山頂付近 ・・・ 7部咲き。虫害がなく良好。ピークは今週半から週末。
山頂南側斜面  ・・・ 7部咲き。見頃はこの1週間程度。
南の峰頂上付近 ・・・ 8部咲き。山頂付近より多少開花が進んで、見頃。
大戸越斜面   ・・・ 8時咲き。下部から順調に咲き上がっている。
大戸越付近   ・・・ すでに満開を過ぎつつある。虫害がなく花は良好。

大戸越から北大船山登路に入り、イワカガミのお出迎えを受けながら順調に高度を上げていきます。北大船山北西の大戸越側斜面のガレ場付近は虫害が広がり、花が楽しめる状態ではありません。北大船山の大戸越側斜面から北大船山頂手前にかけても、残念ながら虫害が進行しています。
大戸越側斜面  ・・・ 虫害が進んでおり、開花は無理。
米窪周辺    ・・・ 5分咲き。虫害が少なく良好。ピークは1週間後<BR>
北大船山頂付近 ・・・ 3〜4分咲きでピークは1週間後か。次週あたり見頃。

虫害の状況は先週と変化はなく、段原付近では限定的で影響は見受けられません。5分咲きのミヤマキリシマを鑑賞しつつ北大船山頂付近でのんびりと休憩した後、坊ガツルへ下りました。


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