2009年 夏

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2009年6月

【6月6日・6月7日】坊ガツル野営場・大船山(段原)のミヤマキリシマ

【6月6日】
6月6日の九重連山は曇。14時過ぎの吉部付近の気温は18℃。山開きを明日に控え、お決まりの坊ガツル私的山開き記念野営・・・いや宴会?の当日がやってきました。今年は坊ガツルで鍋、というテーマで朝から買い出しと具材の下準備を行い、13時過ぎに自宅を発ち九重連山へ向かいます。中学生まで混在した奇々怪々のパーティーは、今年もまた粛々と坊ガツルの宴会場?へと向かうのであります。ミヤマキリシマのハイシーズンとバッティングして、登山客が大挙して押し寄せていますが、吉部の有料駐車場のおかげで難なく駐車し、15時過ぎに入山しました。
鳴子川沿いの登路を淡々と歩き、しばらくブランクのあった同行者が、野営の重装備で青息吐息で歩くのを激励しつつ、17時前に坊ガツル着。すでにテント村が出現していますが、GWよりは少々少なめのようです。

法華院温泉で入浴兼ビールの買い出し班とテント設営班に分かれて準備を整え、空腹がピークに達した19時に宴会スタート。それまで素面であった奇々怪々集団にとっては、山の静寂を破り声高にしゃべりまくるパーティーを苦々しく見ていたわけですが、飲むほどにパワーアップし、恥ずかしながら・・・・・。後はもう、書くに忍びないていたらくで、毎度のこととはいえ、片付けもそこそこにテントに転がり込み、見事に酩酊して寝てしまったのであります。(苦笑)

【6月7日】
6月7日、いよいよ山開き当日となりました。坊ガツル泊の天気は晴のち曇。昨夜の余韻を残しつつも朝食を済ませた後、本日合流の1名を加え、坊ガツルベースキャンプ班に撤収準備をお願いし、ピークを迎えた北大船山のミヤマキリシマ鑑賞へ向かいます。今年の山開きは山頂祭は久住山ですので、坊ガツルや大船山は昨年ほどの驚愕の賑わいではありませんが、さすがにピークを迎えたミヤマキリシマ鑑賞の登山客が続々とやってきます。
段原では団体の登山客も休憩中で、少々混雑しています。諸般の事情で目の前の大船山はパスして北大船山へ向かい、山頂付近から望むピークを迎えたミヤマキリシマを存分に堪能しました。大船山をパスしたのは単に美味しい所を存分に味わおうということなのですが。(苦笑)

しかしながら、さすがにそれほど山の天気は甘くないわけで、坊ガツル上空からガスが押し寄せ、あっという間に周囲の視界が効かなくなります。待つこと1時間余り、何度かガスが切れる合間に撮影を済ませ、坊ガツルへと下ります。ガイドに先導された、かなりご高齢の団体登山客のグループの列に巻かれて身動きができず、やむなく牛歩の歩みで下ることとなりました。坊ガツル着後、ベースキャンプ組が用意をしてくれていた昼食を済ませ、14時過ぎに坊ガツルを発ち山を下りました。

【6月13日】扇ヶ鼻のミヤマキリシマ

6月13日の九重連山は曇。12時頃の長者原の気温は18℃。昼食を済ませ、長者原に着いたのは正午頃。長者原駐車場は満車で、キャンピングカーもずらりと並んでいます。山開きからミヤマキリシマのピークとなる今週あたりまでは、例年どおり驚愕の賑わいを見せることになります。正午過ぎになると日の出直後に入山した登山客が下って来るようになるためか、大曲の駐車スペースにもポッカリと空きスペースがあり、難なく駐車できました。山を下ってくる登山客も散見され、周囲のスペースにも隙間ができはじめています。
今回は、午後から夕刻の山行になったわけで、ターゲットを扇ヶ鼻に絞ってじっくり待つ覚悟で、12時過ぎに大曲から星生山直登の登路へ入ります。このルートもさすがにこの時期は登山客が多く、日頃は静かなルートにもかかわらず、次々に下りの登山客がやってきます。徐々に高度を上げていくと、星生山稜線下付近から濃いガスに中に入ります。星生山の尾根も濃いガスに覆われ、視界が全く開けません。
山頂標識も当然ガスに霞み、周囲の視界が開けないまま待機すること1時間余り。星生崎からの尾根を経由して次々に登山客がやってきます。星生山頂南西の岩場には、ミヤマキリシマの滝が出現しています。吸い込まれそうな濃いガスで、全容は見渡せませんが、その咲きぶりは見事で、現在ピークを迎えているようです。結局ガスが切れないまま、14時30分前に山頂を下り扇ヶ鼻へと移動すべく西千里ガ浜へ下ると間もなくガスが晴れて急激に視界が回復し、星生山頂がはっきりと見渡せるようになったではありませんか。(涙)もう少し待っていればと後悔しきりであります。
さすがにガスの切れ間は長くは続かず、再びガスに覆われた西千里ガ浜を淡々と歩き、扇ヶ鼻へ向かいます。扇ヶ鼻東斜面のミヤマキリシマが群生する場所もガスに覆われており、全容が見渡せませんが、こちらも満開で、次週にかけてがピークになりそうです。ガスに覆われた山頂下の台地をのんびりと歩いて山頂へ向かうと、時折ガスが薄れて、散在するミヤマキリシマが満開になっていることがわかります。扇ヶ鼻のミヤマキリシマは平治岳のようにびっしりと株が密生しているものとは異なり、山頂東側の台地に株が点在して咲いています。今年は、散在する株に虫害の発生は全く見られず、きわめて良好です。

星生山から扇ヶ鼻のミヤマキリシマの概況は、以下のとおりです。
星生山頂付近  ・・・ ほぼ満開。次週にかけてピーク。
扇ヶ鼻東斜面  ・・・ ピークを迎えており、ツボミも多く、1週間は楽しめそう。
同山頂東台地  ・・・ 満開。山頂付近は枯れ花も出始め、1週間は楽しめそう。

ガスが晴れる間隔が徐々に短くなり、明らかに午後は回復の兆しが見られる中、持久戦への対応のため休憩タイムを兼ねて、ガスの切れ間に撮影すること2時間余り、このまま回復すれば日没まで待つつもりでいました。しかしながら、さすがにそんなに甘くはありません。自然は予想を覆す挙動を見せるもので、17時前に再び濃いガスに覆われ、少々迷いはありましたが、迷った時は潔く止めるという鉄則を遵守し、断念して山を下りました。

【6月20日】大戸越のオオヤマレンゲ

6月20日の九重連山は晴。6時頃の長者原の気温は17℃。上空は晴れているのですが、頭上を覆うガスは一向に切れず、時折ガス雨も降る何とも微妙な天気です。それでもガスの切れ間に注ぐ陽は、すでに真夏を思わせる強さです。爽快な朝を迎え、吉部から大船林道をショートカットする鳴子川沿いの登路を淡々と歩き、坊ガツル北端へ向かいます。大船林道終点を過ぎ、法華院山荘の車庫を過ぎてから、大戸越へ向かう登路へ入ります。吉部付近ではガスがかかっていたので、木々の枝先からは時折水滴が滴る状態でしたが、大戸越へ向かう登路に入ると木々の隙間からまぶしい朝日が注ぎます。

またもや淡々と歩き、坊ガツルからの登路と合流。大戸越が近くなるとすでに花期を完全に終えたミヤマキリシマに代わり、ニシキウツギが出迎えてくれます。8時過ぎの大戸越は訪れる人もなく、もはや6月初旬のミヤマキリシマのピークの頃の驚愕の賑わいは夢の跡。平治岳斜面もミヤマキリシマの枯れ花が目立つだけで、静けさを取り戻しています。心地よい風が吹き抜ける大戸越で小休止の後、待望のオオヤマレンゲとご対面。1年ぶりなので妙に懐かしく、フルーティーな香りも魅惑の香水のようです。

大戸越周辺のオオヤマレンゲは、鳴子山のように斜面を覆うほど広範囲に自生しているわけではなく、株が数カ所に点在しています。花が咲いていても薄暗い登路から見上げるだけですと気付きにくい場所にあります。痛みやすい花は短命で、咲いては枯れていくので、すでに枯れ花も目立ち始めています。今年はツボミも多めです。

しばし貴婦人とのご対面に酔いしれていると、ガスが押し寄せてきました。ガス雨も降り始め、条件も悪くなってきます。ガスが覆う条件では視界もないでしょうから、北大船山を経由して坊ガツルへ下る予定を急遽変更し、ガレ場下で引き返し再び大戸越へと下ります。大戸越もガスが覆い、吹き付けるガスで濡れてしまいます。こうなれば早々へ坊ガツルへと下り、のんびり休憩を楽しむべく、素早く坊ガツルへと下ります。

11時過ぎの坊ガツルは、上空を低くガスが覆い、三俣山は全く望めません。野営場の驚愕の賑わいも去り、テントは1張りのみ。炊飯場近くで早めの昼食を摂り、のんびり休憩しました。ミヤマキリシマのシーズンも終わり、怒濤のように登山客が押し寄せた喧騒が一段落した坊ガツルを渡る風も心地よく、強い夏の日差しを遮ってくれるガスがかかっていることも幸いして快適な坊ガツルを満喫しました。

【6月27日】鳴子山のオオヤマレンゲ

6月27日の九重連山は曇。6時頃の牧ノ戸峠の気温は13℃。前夜の宴席が急遽中止となったため、玖珠町で食料の買い出しを済ませ、21時30分頃に長者原着。この時刻ですから、キャンプ場を借りることもできず、苦手な車中泊です。とりあえずリアシートをたためば、凹凸もほとんどないスペースが確保でき、足を伸ばして寝られるステーションワゴンなのですが、1時間以上歩かないと着かない坊ガツルでのテント泊ならいざ知らず、深夜でも不特定多数の人が自由に出入りできる駐車場で寝るというのが、少々苦手なのです。そうは言っても、毎度のごとく酩酊して爆睡。翌朝運転しなくても良いという安直さから、うかつにも少々深酒が過ぎ、当然ながら目覚めは爽快というわけにはいきません。(苦笑)
そんなことで朝駆けは断念し、2度寝をして目覚めた5時前、すでに東の空を覆う雲染まり始めています。晴れてはいませんが、雨の心配もないようです。朝食を済ませ体調の回復を待って、入山するこにしました。6時を過ぎても牧ノ戸峠Pは閑散としています。ミヤマキリシマの熱狂を考えれば、異常な静けさです。折しも梅雨只中ということもあって、夏のシーズンとの端境期ということなのでしょう。
すでに何人かの先行者はあるようですが、他の登山客もなく淡々と歩きます。驚愕の喧騒に満ちていた登路には人影もなく、実に静かです。今度は静かすぎて寂しいほどで、不思議な感傷すらおぼえてしまいます。扇ヶ鼻分岐で1人、星生崎付近で1人の下りの登山客と会いましたが、後はもう淡々と歩いて、御池で小休止。一汗かいて、やっと正気が戻ってきたような。(笑)池の小屋から稲星分岐を経由し、鳴子山手前のピークに着いたのは8時過ぎです。
オオヤマレンゲはすでにピークを終えつつあるのか、鳴子山ピークにかけての登路脇に咲く花には痛みが目立ちます。片ヶ池側の斜面に花は多いのですが、崩落しかけたガレ場があり、さらに樹木をくぐり抜けて入り込まないとなりませんから周囲を荒らしてしまいそうで気が引けます。それでも、遠景とはいえ大戸越から北大船山斜面にかけて分布するものよりはるかにスケールは大きく、何より魅惑的なフルーティーな香りが漂うオオヤマレンゲの樹下に入ると、恍惚としてしまいます。さすがは貴婦人だけのことはあるな〜。
しばし貴婦人との出会いを楽しんだ後は、白口岳分岐付近の鳴子山から片ヶ池が一望できる岩場で小休止。曇り空で日差しも弱く、心地よい風が吹き抜ける中、周囲の景色を堪能しました。オオヤマレンゲのシーズンでなければ、ほとんど訪れることがない場所だけに、遠く由布岳を望める景色もまた再発見であります。思いの外のんびり過ごし、気付けばすでに11時前。早々に山を下り、正午前に牧ノ戸峠へ帰着しました。

2009年7月

【7月4日】南峰の焼け株から復活するミヤマキリシマ

7月4日の九重連山は曇。5時過ぎの長者原の気温は14℃。早朝の山頂付近にはガスがかかっていましたが、徐々にガスも晴れ、東の空にかかる雲の縁がうっすらと染まる実にささやかな朝焼けも見られました。入山前に山を眺めながらのんびりと朝食を摂り、6時過ぎに入山。
3月21日の火災から、約3ヶ月半が経過した三俣山南峰の状況を確認すべく、これまた実に2ヶ月ぶりの三俣山へ向かうことにしました。今年も例年どおりのお決まりのコース選択で、ミヤマキリシマのシーズン前から平治岳・大船山方面へ毎週通い、オプションメニューとして扇ヶ鼻や星生山を加え、さらにミヤマキリシマのハイシーズンを過ぎると、次は大戸越と鳴子山のオオヤマレンゲという具合です。そんなことで、気にはなっていた??ものの・・・、少々忘れ気味だったという方が正確なのでしょうが、実に2ヶ月ぶりに三俣山へのんびり往復することになったわけです。(苦笑)
入山後間もなく雲も切れ、ガスもすっかり晴れて、わずかに薄雲が広がるものの、快適な山行日和となりました。梅雨の中休みでしょうが、こうなると真夏並みの強い日差しも気になるところでありまして、気温が上昇する前に早めに山を下る方が賢明かも知れません。朝の気温が低めだったため、風は実に心地よく、すがもり避難小屋に入ると、このまま避難小屋でのんびりと休憩したくなるほど快適な空間が広がっていて、ついつい誘惑に駆られそうになるのであります。そこはしかし、ぐっと堪えて、気合いを入れ直しとりあえず三俣山へ取り付きます。
心地よい風を受けながら順調に高度を上げ、西峰を経て本峰へ向かいます。本峰から見下ろす大鍋の底には、梅雨時期に見られる池が出現しています。周囲の景色も2ヶ月ぶりということもあり、なぜか新鮮に見えます。気になる南峰の様子ですが、山頂付近はずいぶんと緑が復活しているようです。南西(?峰側)は真っ黒だったドウダンやミヤマキリシマの焼け株が、茶色に変わっています。早く南峰の様子を見てみたいというはやる思いを抑えつつ、慎重に歩き南峰へ向かいます。およそ毎度の例でありますが、焦るとロクなことがないという経験則から、ここはやはり慎重に歩くべきなのであります。(笑)
南峰山頂に着くと、ササやカヤが成長し、2ヶ月前は一面の焼け野が原のままだった山頂に緑が復活しています。相変わらずミヤマキリシマやドウダンの株は激しく焼け炭化したままのように見えます。近寄ってよく観察すると、株の茎の付け根付近にわずかに葉がついています。周囲を見て回ると、ほとんどの株がけ残った茎の付け根から新たな芽を出し、順調な回復ぶりがうかがわれます。ドウダンの回復は遅れているようですが、ミヤマキリシマは確実に世代交代が進みつつあります。8割程度は植生が回復するという見通しだそうですが、火災から3ヶ月以上経過して、やっと新たな芽吹きが始まっているわけで、元の状態に復帰するには、かなり長期間かかりそうです。もっと幹の上部まで生きているかと期待したのですが、さすがにそれは無理だったようです。しかしながら、茎の付け根付近から根が生き残っていることは確実で、今後の回復を引き続き注意深く見守り続けて行きたいと考えています。

【7月12日】ショウキラン

7月12日の九重連山は晴。6時過ぎの長者原の気温は20℃。星生山から牧ノ戸峠方面の山頂付近にはガスがかかっています。昨日までの雨も上がり、絶好の山行日和となりそうな予感がしますが、何しろ盛夏のことでもあり、晴れると暑いというのは必定であります。ガスから逃れるには先週に続き三俣山へ向かうか、花散策で坊ガツル周遊という選択肢があります。
指山自然観察路付近の駐車スペースから7時前に入山。すがもり越の避難小屋で小休止の後、北千里ガ浜から法華院山荘へと下ります。そろそろ咲き始めているであろうノハナショウブも気になるところですし、梅雨の雨を受けて一段と緑が濃くなっていく坊ガツルの景観も楽しみです。相変わらず久住山方面にはうっすらとガスがかかり、ガスが薄れてはまた濃くなるという状態が天狗ガ城や中岳方面にも広がっていきます。
雨が続いた割には増水も少なく、法華院山荘付近の谷も普段とほとんど変わらない水量です。瀬音を聞きながら法華院山荘談話室前のベンチで小休止。薄曇りの空から優しい夏の日が注ぎ、心地よい風が吹いています。ついつい長居をしてしまいそうになるところを堪えて、坊ガツル散策に向かいます。今年も順調に葉を広げたモウセンゴケや、風に揺れるイブキトラノオ、ピークを過ぎてはいるものの、まだ花をつけているヤマオダマキを観察しつつ野営場に向かいます。
野営場にはテントはなく、閑散としています。湿地にはノハナショウブが咲き始め、夏の風に揺れています。坊ガツルを横切り、鳴子川を渡って雨ガ池へ向かいます。雨ガ池付近の登路脇にはイブキトラノオが群生し、風に揺れています。雨ガ池を下り指山観察路との分岐付近でショウキランの群生を確認。薄暗い森の中に、樹間から注ぐスポットライトを浴びるように妖艶な姿を見せています。自然の移ろいは、少しずつしかし確実に夏本番が目前に迫っていることを知らせてくれているかのようです。

【7月18日】ノリウツギ咲く

7月18日の九重連山は曇。5時過ぎの長者原の気温は18℃。上空にはガスの切れ間に青空も覗いています。ガスかかる牧ノ戸峠からお手軽な中岳周辺散策の決定です。
6時前の牧ノ戸峠駐車場に駐車する車は数台程度。ガスが晴れれば晴天の空が広がり気温も急上昇するでしょうし、ここはひとつ早々に山を下った後は麓でのんびりとすべく淡々と歩いて西千里ガ浜を通過、避難小屋もパスし、御池へ向かいます。
久住分れから空池付近では強い風が吹き抜け、梅雨の雨で水量を増した御池では湖面に白い波頭が立つほどです。中岳と天狗ガ城の稜線では時折足下がふらつくほど強烈な風が吹き抜け、中岳山頂では西斜面を吹き上げてくる風がさらに強烈で、直立することが困難なほどです。
中岳山頂では、先行の登山客が下ってしまうと後は貸し切りです。遅めの朝食を摂りながら9時前までの約1時間以上山頂でくつろいでしまったのであります。ガスが濃くなり始めた9時前、徐々にガスが切れる時間の方が短くなり、ついにはすっぽりとガスに覆われてしまいました。
ノリウツギが花を咲かせシライトソウも風に揺れ、夏シーズンが訪れたのは確実です。9時を過ぎる頃からは、久住山方面へ向かう子ども連れの登山客が急増し始めます。押し寄せる登山客と逆行する宿命ともいうべき挨拶攻撃を巧みにかわし、11時過ぎに牧ノ戸峠へ帰着しました。

【7月24日】泉水山麓のヒゴタイ

7月24日の九重連山は曇のち雨。5時頃の長者原の気温は16℃。先週に続き上空を薄いガスが覆い、日の出の時刻になっても一向に日が差す気配はありません。これほど梅雨が長期化すると、定番の山行計画にも必然的に影響が出るわけでありまして、梅雨が明けたら一気に秋なんてことになりそうな気もします。
午前6時頃、牧ノ戸峠から入山後間もなく第1展望台付近で雨に遭遇。何しろ今日は貴重な平日山行ですから、雨の切れ間を待って可能な限り歩くしかないわけで、天気予報では夕方まで何とか保ちそうだったので、一縷の望みを託しつつ先を急ぎます。
扇ヶ鼻分岐付近で雨は上がりましたが、西から押し寄せるガスがあっという間に山を覆い尽くし、視界は20mほどに・・・。多難な平日山行はその後も延々と続き、久住分れを経て御池に着く頃になっても依然ガスが濃くかかります。御池を迂回し池の小屋側に着いた8時30分頃にはガスが一段と濃くなり、再び雨が降ってきました。
これ以上深入りすることは潔くあきらめ、久住分れの久住山避難小屋へ引き返し遅めの朝食を摂ります。
のんびりと食事を済ませ、食後は避難小屋の外を流れて行くガスを恨めしく思いつつさらにのんびりと休憩です。その後、依然として複雑な思いはさめやらぬものの、ひとまず山行ができたことに感謝しつつ山を下りました。

2009年8月
【8月1日】アキアカネ

8月1日の九重連山は曇時々雨。5時頃の長者原の気温は19℃。異常に長引く梅雨のため週末の天気も連続して思わしくなく、なかなか野営ができなくて禁断症状を発症しつつあります。
午前5時頃、山頂付近にはガスがかかっていましたが雲間から明るい空も覗き、天気の回復も期待される様子です。しばらく待機した後、7時前に指山観察路入り口付近から入山。大曲からの登路と合流した先で、硫黄山側斜面から小規模な土石流が発生したらしく登路をふさいでいます。平成17年7月の大規模な被災以来、比較的落ち着いた経過を見せていた豪雨禍が今年は再び発生しているようです。すがもり越へ向かうと硫黄山からの谷でも土石流の発生があったらしく、砂防ダムが巨大な石で埋もれています。すがもり越付近では登路が流水で深くえぐれ、再び使用できなくなっています。
すがもり越は涼やかな微風が吹き、汗が引くまで小休止。三俣山西峰斜面のガスが徐々に晴れていきますが、ここで誘惑に負けて三俣山に向かうと、先週のようにガスに巻かれて撃沈するのは必至でありますから、意を決して北千里ガ浜へ下ります。雨後の北千里ガ浜では、坊ガツル方面へ流れたケルンの中央部付近まで水深がある巨大な川ができていたようです。一面が流水に洗われて、フラットな砂地が広がっています。実際に流れができているときは、とても歩けたものではなかったでしょうから、どれほどの流れができていたのか想像するのも恐ろしいような・・・。法華院温泉山荘へ下る登路も一部が寸断され、山荘上の砂防ダムも土石流で埋もれています。4年前の平成17年のものとは比べるべくもありませんが、今回も各所で土石流の発生があり、登路の荒廃が目立ちます。

【8月8日】明け行く九重連山(三俣山本峰にて)

8月8日の九重連山は晴。3時頃の長者原の気温は19℃。一点の雲もない上空には満点の星空が広がり、絶好の朝駆け日和です。午前3時30分頃、大曲から入山。ササ原を抜け、硫黄山取り付け道路の舗装路に出ると煌々と輝く月明かりでヘッドランプを消しても歩けるほどです。

時折風が吹き抜け、心地よい涼を感じながら淡々と歩きます。星生山上空の月が流れる硫黄山噴煙を照らしており、山頂付近には風が強めに吹いていることがわかります。すがもり越で小休止の後に西峰登路に取り付くと、やはり風は強めでしたが、さすがに夜の晴天で朝露が深く雨具のパンツを着用しないとずぶ濡れになりそうです。何とか草の茂っていない登路を選びスパッツだけでしのぎ、5時前に本峰着。

夏至から1月半経ち、日の出の時刻も少々遅くなり始めました。東の空は黎明のグラデーションが徐々に薄れ明るさが増すにつれ、刻々と日の出の時刻が近づいてきます。地平線を雲が覆うため、実際の日の出より10分程度は遅くなりそうです。突然のガスに少々心配をしましたが、何とか御来光を望むことができたわけで、本峰からは平治岳の真上の地平線を覆う雲の間から朝の日が現れます。朝日が注ぎ始めた5時30分、荘厳な朝の儀式がクライマックスを迎えます。

朝日が昇ると周囲は一気に明るくなり始めます。荘厳な朝の儀式を終えて、南峰へ向かうべく再び朝露の洗礼を受けてずぶ濡れになりながら南峰へ向かいます。この時期の朝露を避けての御来光鑑賞であれば、やはり牧ノ戸峠から星生山や天狗ガ城あたりが快適なようで、雨具を着用しなかったため、スパッツの隙間から侵入した朝露でシューズの中も少々湿りがちです。(苦笑)

火災後の南峰山頂付近は、徐々に植生が回復しつつあります。ササが復活し。ミヤマキリシマはほとんどの株が付け根から新たな葉を伸ばし始めています。完全に復帰するには10年以上の歳月が必要なことは間違いないでしょうが、一刻も早く復活したミヤマキリシマが花を咲かせてくれることを願うばかりです。

【8月16・17日】坊ガツルの夜と朝

【8月16日】
8月16日の九重連山は曇時々晴。15時頃の飯田高原の気温は27℃。野営禁断症状がすでに限界に達し、悶々とした日々が続いたいたため、17日に休暇をとり野営を敢行することに決定し、16日午後に自宅を発ちました。予報では天気が少々不安なのですが、テントを設営してしまえば、少々の雨は問題ありません。撤収するときに雨が降っていなければ良いので、15時過ぎに吉部から入山。
雲が多めではありますが時折薄日も差し、日陰になる鳴子川沿いの登路は実に快適に歩けます。淡々と歩いて17時前に法華院山荘着。大船山頂にはガスがかかっています。早速エビスの500mlを1本注入。落ち着きを取り戻した後に山荘の温泉で至福の時を過ごします。夜半の雨予報は、雷雨の可能性も示唆されており、日帰り山行ですら雷に遭遇すると生きた気がしない恐怖の雷鳴と稲妻ですから、野営で雷雨に遭う恐怖は想像するのも恐ろしいところです。避難場所を確保するためには有償ではありますが山荘のテント場を借用するのが賢明ではありますが、すでに坊ガツルにはテントが数張り設営されていて、悩んだあげく夕食用に500mlを3本購入して坊ガツルへ向かいます。
早々にテントを設営し、宴の用意に炊飯場に水を汲みに行くと歌声が聞こえてきます。還暦を少々?過ぎたと思われる10名余りの団体さんが、テントサイトで歌詞カードを持ち「青い山脈」の大合唱。驚愕の合唱はしばし継続し、この諸先輩方がかつて過ごしてきた青春の日々を追想しているとしか思えない光景であります。ついでに焚き付けを集めてキャンプファイヤーまで始めるんじゃないかと、冷や冷やしながら見守ったわけでありますが、さすがにそれはありませんでした。(笑)
驚愕の歌声集会を終え静寂が訪れる頃、待望の宴の開宴であります。一人でテント場で酒宴なんて、これもある意味ナルシズムの極地であります。団体さんから見れば「何と物好きな〜」ということで、先ほどの歌声集会?と大差ないんじゃないかと思われているのかも知れません。(笑)

例によって酩酊してテントへ転がり込み爆睡・・・・したはずだったのですが、明けて午前1時前にテントを叩く雨音に目覚めます。ついでに稲光とおぼしき光が・・・。雷鳴が聞こえなかったので雷雲の発生は近くではないようですが、時折光る稲光のフラッシュが恐怖を誘い、恥ずかしながら1時間おきに目が覚めてしまう始末。雨は断続的にテントを叩き、断片的な記憶ではありますが、3時過ぎまで降り続いていたようです。

【8月17日】
3時過ぎにテントから這い出すと、濃いガスがかかりガス雨も降っています。これは「朝駆けはしなくて良いのだよ」という天の思し召しに感謝?して、再びテントに転がり込みました。徐々に明るくなり始めた5時過ぎにテントから這い出し、のんびりとモーニングコーヒータイム。炊飯場に水を汲みに行くと、昨夜の雨でテントサイドが濡れているためか、例の団体さんが占拠して朝食中であります。蛇口で水を汲むのもままならない大混雑に閉口して、やっとの思いで水を確保しテントサイドに戻ります。
幸か不幸か、ガスを口実に朝駆けもせず坊ガツルの朝を満喫。のんびりと朝食を摂り、再びコーヒータイム。6時30分頃、くだんの団体が大船山方面へ向かって出発し、静けさが戻った野営場周辺をのんびりと散策しました。野営場のトイレは、いつもながら鼻が曲がるほど臭いのですが、今年のように野営ができずに過ぎていると、それもまた不思議に愛おしく感じるものです。しかしなが、愛おしくても臭いものは間違いなく臭いので、早々に個室から脱出したのも毎度のことであります。外に出て、深呼吸すると魔界から人間界に復活したような、これまた不思議な感慨を感じるのであります。ああ臭かったな〜。
徐々にガスも薄れ始めた8時過ぎ、湿ったテントを撤収して坊ガツルを発ち法華院山荘へ向かいます。ガスも晴れて、すでに大船山もはっきりと見渡せるようになっていました。空には雲が広がりすぐには暑くなりそうもありません。のんびりと法華院山荘付近で晩夏の坊ガツルの景色を堪能した後、鳴子川沿いの涼を誘う川沿いでのんびりと休憩しつつ吉部へ下り、正午過ぎ帰着しました。
待望の野営は、結局雨とガスに遭い朝駆けもままなりませんでした。残暑も続き、ついでに不安定な天気も続き、気付けば2週間あまりで夏も終わりそうです。こんな不思議な天候の年ではありますが、野営こそできないものの、ひとまず週末ごとに山行が出来ていることには限りない感謝であります。

【8月21日】サイヨウシャジン

8月21日の九重連山は晴。5時頃の牧ノ戸峠の気温は17℃。今回も早朝の山にはガスがかかっています。夜明けを迎え牧ノ戸峠へ移動、ヘッドランプも不要になった5時30分過ぎに入山しました。
ガスは一向に晴れることもなく、情けないほど視界も効かずに、淡々と歩くのみです。登路脇に咲くサイヨウシャジンやマツムシソウなど晩夏から初秋にかけての紫色の花を愛でつつのんびり歩きます。扇ヶ鼻分岐に差し掛かる7時頃から徐々にガスが薄れ、久住山避難小屋に着いた7時30分頃にはすっかりガスも切れて、青空が広がるようになりました。
御池は相変わらず水量が多く、湖岸の登路は水没しています。湖面は盛夏になり藻類が繁殖したようで、濃い緑色になっています。湖岸を迂回して中岳に向かいます。中岳山頂下で先行の登山客とすれ違ったのが8時過ぎで、その後1時間余り貸し切りの中岳山頂で涼風に吹かれながら朝食タイムを楽しみました。
ガスが晴れて天気が回復した後はひたすら暑いだけなので、普段の早朝山行であれば早々に山を下り温泉に直行するところでありますが、休暇を取っての平日山行ということもあり、炎天下ではありますがしばらく粘ることにしました。中岳を下り白口谷分岐から稲星山へ向かいます。稲星山山頂の岩場には日陰があり、山頂付近を渡る風に吹かれながら再びここで1時間あまり休憩。思わぬ長居になり、朝食でかなり消費した水も心細くなったので、稲星山と久住山の鞍部にある神名水で給水しました。盛夏に炎天下を移動する時は、多めに水を持参しないと脱水症状を起こしそうになりますが、水場があると助かります。
南千里を横断し、池の小屋を経て天狗ガ城へ向かいます。炎天下とはいえ風が吹いて快適で、中岳と天狗ガ城の稜線にあるいつもの定点から御池と久住山を撮影した後も、それほど暑さを感じることもなく天狗ガ城山頂へ着きました。すでに11時を過ぎており、軽めの朝食だったこともあり、少々早めの昼食タイムです。見事に晴れ渡る山頂でのんびり昼食を摂り、コーヒータイム。その後もさらにのんびり休憩した訳で、これが当然ながら日焼けというダメージを与えた主因であったことは疑うことのない事実です。13時前に山頂を発ち、登路脇のイヨフウロやホクチアザミ、ワレモコウやマツムシソウを鑑賞しつつ牧ノ戸峠へのんびりと下りました。

【8月29日】晩夏の坊ガツルにて

8月29日の九重連山は曇。8時過ぎの長者原の気温は19℃。いよいよ8月も最後の週末となったわけですが、不安定な天候の夏を象徴するかのように再び朝は雲が厚くかかっています。大曲から8時30分過ぎに入山しました。昨夜曇っていたためか朝露もなく快適な登路を淡々と歩いて涼風が吹き抜けるすがもり越着。避難小屋の中が余りに心地よく、このままここで終日過ごしても良いかな〜、というほどの快適さです。誘惑を振り切り三俣山に取り付きます。こちらの登路にも全く朝露はなく、西峰から本峰へと向かいます。西峰を通過する9時30分頃、星生山から久住山方面には徐々にガスがかかり始めました。南峰の植生の回復を確認するため早々に南峰へ向かいます。遠景で一見する限りでは緑が回復し、春先に火災が発生したとは気付かないほどなのですが、やはり傷跡は深く、焼けて炭化したミヤマキリシマは痛々しくその残骸をさらしています。南峰の坊ガツルを見下ろすテラスに移動し小休止。眼下の坊ガツルからは輪地切り作業の刈り払い機のエンジン音が聞こえてきます。
8月末は近年恒例となった坊ガツルの輪地切りが行われます。作業を行うスタッフは8時過ぎに飯田高原農産物直売所前を通過する時にはすでに集合していました。どれだけの人数がこの作業に加わったのかはわかりませんが、坊ガツルの輪地切りは、湿原の周辺だけでなく、木道の周囲や施設に延焼しないようにかなり広い面積の刈り込みをします。10時頃から開始し正午には作業を終えましたから、数の力は偉大です。
南峰下り、輪地切り作業を終えた坊ガツルを経由し法華院山荘へ向かいます。上空に雲が広がり時折薄日も差すものの暑さも感じないほど快適です。法華院山荘の談話室でしばしくつろぎ、再びすがもり越を経て山を下りました。


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