2010年 冬

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2010年1月

【1月3日】坊ガツル避難小屋と暮雨の滝

1月3日の九重連山は曇のち晴。7時頃の長者原の気温は氷点下1℃。今年の初山行は、曇り空に加えて山頂付近にガスがかかるあいにくの条件でのスタートです。曇り空の下を飯田高原へ向かいます。依然として曇り空は広がったままで、山頂のガスも切れる気配を見せません。こうなると目的地は自ずと吉部から坊ガツル間のお手軽山行に決定です。

前回の山行で、三俣山から望む坊ガツル野営場のトイレ付近にトラックが駐まっているのが確認できました。老朽化が進んで外壁の痛みが目立ち始めたトイレの修理かなと思っていたのですが、その後坊ガツル避難小屋の改修が始まるらしいことが判明。工期などの詳細は不明ですが、これはもう確認に出かけるしかありません。

鳴子川沿いの登路はうっすらと圧雪した雪が積もり、年末から年明けにかけて多くの登山客に踏み固められてガチガチに凍っています。アイゼンがなくても歩けます。まあ、装着すれば確実に歩きやすくなるだろうという程度です。簡易アイゼンは持参していますが、装着してもないよりはましかな〜という程度の弱い効き具合なので、沓掛山から牧ノ戸峠の下りが氷結した場合の緊急用などに限定して使うことがほとんどです。大船林道は高度を上げるにつれ徐々雪が深くなりますが、それでも積雪は5〜10cm程度と少なめです。坊ガツルへ出ると車両が踏み固めた雪道はガチガチに凍り、ツルツルに滑って歩きにくいことこの上ありません。

坊ガツル周辺に雪は少なく寒々とした冬枯れの景色が広がり、見上げる三俣山や大船山は依然ガスに隠れています。坊ガツルを横断する登路に入り鳴子川を渡る踏み石がある手前に工事関係車両の駐車スペースが設置され、避難小屋の改修工事は早々に始まりそうな雰囲気です。野営場に着くとテントが数張り。正月の野営を楽しんだ登山客も、明日からの社会復帰に向けて撤収を始めています。

トイレの外壁の下にはブルーシートが積み上げられ、資材の搬入も間もなく始まりそうです。気になる避難小屋の周辺は草木が刈られ、杭が打たれていますが、まだ解体はされていません。以前は現在の場所と川を挟んで反対の場所に設置されていたとも聞いています。現在も土台が一部残っています。その後建てられた現在の避難小屋(管理休憩舎)が築後何年経過しているのかは不明ですが、近年急激に老朽化が進み、広間の焚き付けができる暖炉?の煙突が2005年1月頃に崩落してからは屋根の漏水も一気に激しくなり、環境が悪くなった気がします。

思えば野営の日に雷雨に遭遇し、あまりに激しい雷鳴に恐れおののいて避難小屋に緊急待避したり、強烈な風にテントが飛ばされそうになり、避難小屋の軒を借りて野営したこともあります。吹雪に遭った厳冬の坊ガツルで避難小屋のお世話になったことも数知れません。諸行無常というか変わりゆく九重連山を思うにつけても、坊ガツル避難小屋の改築は一抹の寂しさを感じざるを得ません。まあそれはそれとして、どの程度の規模の避難小屋になるのか楽しみでもあります。当分の間、避難小屋の改築状況を見て行こうと考えています。

感傷に浸りながら、避難小屋で2時間あまり過ごす間に、周囲の山頂を覆っていたガスも晴れて、11時過ぎには時折大船山頂も望めるようになりました。野営場を発ち坊ガツル周辺を散策してから、暮雨の滝に向かいます。昨日来の暖かさで、完全氷結は望むべくもありません。あとわずかで完全氷結という状態は何度か目にしていますが、滝壺まで完全氷結した暮雨の滝は見たことがありません。一冬に完全氷結する回数も減っているとも聞いていますし、これもまた近年の温暖化の影響でしょうか。

滝壺で再び感慨に浸っていると、野営を終えたと思われる数名の若い登山客がやってきて、その中の1人が滝壺周辺の氷を蹴割り、やりたい放題の破壊を始めました。あまりのひどさに注意して止めてもらったのですが、今度は別の場所で・・・。周辺の氷が割れずに残っているのは、誰も手を付けずそのまま残していたからなのであって、それすら気付かないのは悲しことです。他の仲間も注意をしてあげればよいものを、全く誰もお構いなしです。御池の湖面の氷に投石するのも、暮雨の滝の氷を蹴割るのも、特に考えた末の行為ではないことは確かですし、当事者は本来的な意味での確信犯でしょうから、全く悪気はないはずです。ただ、根本的に欠けているのは自然の景観を多くの人と共有しようという、わずかばかりの心遣いなのかも知れません。

これはもう学校で教えることではなく、家庭で躾けられていくべきことなのだと考えます。全く、最近の若い者は、いやいや、若い者の親は一体!(怒)一方で「どうせ融けるのだから、氷を割ったぐらいでそんな固いことは言わなくても良いんじゃないかい?」という声も聞こえてきそうですが、年齢を重ねると私もまた価値観の違いを許容できない偏屈なおじさんへと変貌していくのですね。(苦笑)

【1月9日】すがもり越の朝・南峰下登路

1月9日の九重連山は晴。6時頃の大曲の気温は氷点下7℃。ガスが晴れるのを待ちつつ、ゆっくりと装備を確認し7時前に入山しました。ヘッドランプに照らされた登路は完全凍結し、うっすらと新雪が覆う状態です。坊原の上の星生山下付近登路では路面が氷に覆われ、完全氷結してツルツルになっています。

すがもり越下にさしかかった7時20分過ぎ、星生山山頂付近が朝日に照らされ焼け始めます。30分後にはすがもり越にも朝日が注ぐようになりそうです。すがもり越に着いて早速スタンバイ。三俣山の斜面を照らしながら徐々に下って来る朝日を待ちます。山陰から昇る太陽を待つこと30分あまり、荘厳な朝の儀式は今日も粛々と挙行され、すがもり越に厳かな朝が訪れました。

朝日が注ぐと心地よい暖かさを感じるようになり、気温も急激に上昇するので繊細な無用は微妙に融け始めて壊れてしまうため、早々に西峰に取り付きます。うっすらと新雪が覆う登路に歩きにくい場所はなく、順調に高度を上げ西峰へ着きました。登路のトレースもうっすら積もる雪で消えています。山頂を吹く風はさすがに冷たく耳が痛くなり、顔が凍り着きそうになります。

時折出現する登路の吹きだまりに膝上まで雪に埋もれながら本峰へ向かいます。本峰付近の木々には霧氷が着き、登路は雪に埋もれています。南峰登路は雪で嵩上げしていて、木々の下をくぐり抜けるように膝まで雪に埋もれながら、時には頭上の木々の枝から降り注ぐ雪の洗礼を受けつつ、全身雪まみれになって三俣山南峰に着きました。

南峰山頂付近は風が強いためか今回も積雪はほとんどなく、霜柱に浮いた地面が露出しています。焼け焦げたミヤマキリシマの株を隠すように山頂付近の木々は霧氷に覆われています。毎度の坊ガツルを見下ろすお気に入りのテラスに移動して大休止。優しく注ぐ冬の陽は、風を避ければ本当に暖かく感じられます。周囲の雪景色を堪能しつつ景色に浸って悦に入ることしばし至福の時を過ごした後、10時過ぎには?峰や本峰付近にも後続の登山客が訪れるようになりましたので、南峰を発ち山を下ります。

すがもり避難小屋付近は風も弱く、やわらかな冬の陽があふれています。あまりの心地よさに昼食を摂りコーヒータイムをのんびり過ごし、気付けばすでに12時前。午後からは職場関係のイベントで玖珠町へ戻らなければならないので、快適な冬山行に思いを残しつつも、大急ぎで山を下り帰路に着きました。

【1月16日】厳冬の大船山

1月16日の九重連山は曇のち晴。6時頃の飯田高原の気温は氷点下6℃。吉部の大船林道入り口付近は、坊ガツル避難小屋改築工事関係の車両が踏み固めた圧雪路と化しています。登路の積雪は10cm程度の新雪です。鳴子川沿いの登路を、時折木々の枝先から落ちる雪の祝福を受けながら淡々と歩き坊ガツルへ向かいます。坊ガツル北端からは毎度のことながら積雪も少なく、坊ガツル野営場周辺はうっすらと積もる程度です。

避難小屋の改築は順調に進んでいるようで、先週の三俣山頂から見えた野営場付近のブルーシートの上にはウレタンのマットが敷かれ、重機の通路となっていました。新避難小屋は、現在の管理休憩舎の前に建築されるようで、基礎工事が始まっています。管理休憩舎は解体されずに、資材置き場と工事関係者の控室に使われているようで、新しい避難小屋の完成後に解体するのでしょうか。

徐々にガスが薄れ始め、しだいにガスの切れ間に青空が望めるようになった9時前まで野営場付近で小休止。気温は−4℃で、あまり長時間体を動かさないと冷えてしまいそうなので、天気の回復を確信し、大船山へ向かいます。登路の積雪は15cm程度でトレースは細く、先行者は1人のようです。新雪で歩きやすく順調に高度を上げます。段原に着く頃には、山頂付近を覆っていたガスも完全に晴れ、冬の陽が燦々と照らすようになりました。

段原から望む大船山頂は偉容を誇り、一段と猛々しく見えます。言わずもがな、冬の大船山での最大の難所は段原から山頂までの登路の積雪であります。厳冬期にしては雪は少なめとはいえ、大船山北斜面は九重連山でも屈指の吹きだまりが形成される場所です。頭上を樹木が覆うため、無雪期は多少腰をかがめて通過できる場所でも、積雪して登路が嵩上げすると登路を這うように進まなければならないこともあります。今回は1人ですが先行者がありトレースがついていますので気分的にはかなり楽です。ザックが樹木に触れて落下し降り注ぐ霧氷を浴び、全身真っ白になりながら山頂へ向かいます。

山頂下付近では積雪が腰上まである場所もあり、岩場に積雪し雪の下が空洞になっているトラップを踏み抜いて片足が完全に穴に埋もれてしまい、抜け出すのに多少苦労しつつ山頂へ向かいます。積雪が多い場合は、五体投地のように全身を雪の上に投げ出してトレースを付けないと雪がラッセルできないのですが、今回は幸いにもそのような状況ではなく、楽に山頂へ着きました。

山頂の風は弱く、気温は低いものの冬の日を浴びると暖かく実に快適です。周囲の眺望は抜群で、雪景色の九重連山を望みながら大休止。暖かな日を浴び2時間あまり山頂でのんびりとくつろぎました。正午前に後続の登山客が訪れ、その後は数名単位の登山客が訪れるようになり始めたので、山頂を発ち坊ガツルへ下りました。

【1月23日】薄雪の久住山登路と御池の霧氷

1月23日の九重連山は曇。7時前の牧ノ戸峠の気温は氷点下7℃。6時過ぎに長者原着、曇り空で薄明かりに望む三俣山方面にはガスがかかっています。しばらく長者原で待機してから7時前に牧ノ戸峠に移動しました。下の駐車場に駐車する車は数台程度と少なく、天気にかかわらず休日には驚愕の賑わいを見せる牧ノ戸から久住山へのルートの出発点としては、車も少なめで・・・と思う間もなく、7時を過ぎると急に車が増え始めました。

今回最大の難所は牧ノ戸峠から沓掛山までのセメント舗装の登路でありまして、融けた雪が凍って一部の登路がツルツルの氷に覆われています。恥ずかしながら、復路の下りで見事に滑り転倒してしまいました。(苦笑)沓掛山登路以外でも融けた雪が凍結し、多少滑りやすい場所がありますので、簡易アイゼンを携行した方が無難です。それほど濃くないものの相変わらずガスが切れず、登路周囲に広がる一面の霧氷原を眺めながら淡々と歩きます。登路の積雪は随分少なくなり、先週の好天で覆っていた雪が融けて泥濘地と化した登路は完全に凍り着いています。

今日は牧ノ戸からのルートで、凍った登路に残る形跡からは団体が入山した様子はなかったにもかかららず、久住分かれ付近でガスの中から大きく勇ましいかけ声が聞こえてきました。40〜50人はいたと思われる整然とした隊列の人に訪ねてみると「訓練中です!」ということでありまして、地元に駐屯地や演習場があり見慣れている戦闘服ではありませんでしたが、ヘッドランプを灯している人もいましたので自衛隊の冬季訓練だったのかも知れません。夜間に九重連山を縦断したのでしょうか。九州の部隊はさすがに北海道の部隊のように純白の戦闘服は着用しないのでしょうね。

今回の課題は、週半ばの春を思わせる天気で気温が20℃近い日があり、御池が解氷しているかどうかということでありました。果たして、ガスに覆われた御池を眺めてみると一部が解氷し、風に吹かれて小さな波が立ち、氷の下に打ち付ける「ガボッ、ガボッ」という不気味な音を発しています。気温計を持参していなかったので憶測ですが、牧ノ戸峠が−7℃でしたから、御池周辺は−10℃程度のはずです。この冷え込みが2〜3日続けば再度完全氷結するはずです。再氷結しても一度解氷した後ですから、湖面を渡るのはちょっと怖いかも。この冬初めには氷を踏み抜いて一度御池に落ちかけていますから。(苦笑)

相変わらずガスが濃いので、毎度のごとく池の小屋に避難しました。この避難小屋が再建されて、この冬は本当に助かっています。現在の九重連山では、池の小屋が避難小屋として最も活躍しているのではないでしょうか。9時頃の池の小屋には誰もおらず、そのままガスが晴れるのを待ち2時間弱待機しましたが、結局誰もやってきませんでした。それでも正午頃にはかなり混雑するようになるでしょうから、悪天候の日に池の小屋で昼食を摂る
ことを前提に行動すると、団体さんに占拠されて中に入れないということも想定されますので、入れない場合は潔く引き返すように余裕を持って行動した方が無難です。

カップスープや砂糖たっぷりのラテを飲みながら体を温めていたのですが、この気温ですから体を動かさずに待機していると末端から徐々に冷えて、やがて感覚がなくなってきます。足先の様子も何だか変になってきたのですが、ガスは相変わらず濃く中岳も望めないまま撃沈。それでも御池が一部解氷しているのを確認できたので、まずまずの成果かな〜。ということで、今回もまた厳冬の九重連山でのお手軽散策となったわけであります

【1月30日】厳冬の坊ガツルと改築進む避難小屋

1月30日の九重連山は晴。8時過ぎの長者原の気温は氷点下1℃。厳冬期にもかかわらず暖かな朝を迎えています。この2週間あまりの暖かな天気のため道路脇の雪はほとんど融け、一面真っ白になっていた山々の斜面も地肌を覗かせています。8時30分頃に大曲着。駐車スペースにはすでに数台の車が駐車し、登山客が次々に入山していきます。

9時前に入山し、凍結した路面を踏みながらすがもり越へ向かいます。硫黄山取り付け道路の積雪もすっかり少なくなり、厳冬期であることを忘れさせるような景色です。すがもり越に着いた9時30分頃、さすがに風は冷たいのですが、すでに太陽は高く昇り暖かな日差しに包まれていますので風を避ければ快適です。日が注ぐと快適ということばかりではなく、凍結していた登路が融け始める前に動かないと泥濘地と化してしまいます。早々に三俣山西峰登路へ取り付き、西峰から本峰を経て南峰へ向かいます。

本峰から南峰へのルート以外の登路の積雪はほとんど融け、融けた雪が凍結して少々滑りやすい場所はありますが、アイゼンが必要な程でもなく、淡々と歩いて南峰着。お気に入りの坊ガツルを見下ろすテラスに移動しました。西峰登路を回り込んだ場所は風が弱く、日が差すと暖かで、これはもう南峰のテラスにシートを広げて快適なお昼寝タイムも良いかも、などと甘いというか安直な考えが脳裏をかすめました。(苦笑)実際の南峰山頂は日差しはあるものの微妙に風が吹き、ここでのんびりとくつろぐのは・・・・、という悩ましい条件でした。着込めばそれなりに快適なのでしょうが、ここはやはり予定通り坊ガツルへ下ることにしました。

霜柱が融け、凍結していた急傾斜の斜面は著しく滑ります。凍結路が融けると雨天時よりも条件は悪く、慎重に下ったにもかかわらず転倒2回を記録。着地が上手かったのか身体的な被害はありませんでしたが三脚の付け根のアルミ基材を石で削り、チタンのコッフェルが凹んでしまいました。(苦笑)坊ガツル野営場は避難小屋の改築工事の車両が通るために、ブルーシートの上にバラスを敷いてウレタンシートが置かれているのですが、周囲は湿
地で深い轍ができている場所もありました。避難小屋の工事は、3月中旬までには終了するようです。現在コンクリートを流し込むパネルが設置されていて、現場の周囲はシートで覆われているので全容は不明です。

正午前の野営場にはテントも設営され、その後も野営装備を担いだ登山客が次々にやってきます。夏場なら撤収時に雨が降っていなければ、それなりに野営は楽しめるものです。しかしながら、やはり暖かとはいえ冬ですから、雨に降られると辛いような・・・。

燦々と日が注ぐので、法華院温泉山荘付近では談話室よりも外のベンチの方が暖かです。ベンチに座り暖かな冬の陽を浴びながらのんびりと昼食を摂ります。急ぐ事もないのですが、山荘の温泉を見るに付けても、早々に山を下り温泉でくつろぐのも一考であります。ということで、13時30分過ぎに山荘を発ち、すがもり越を経て大曲帰着15時前。今回もまた毎度のお手軽山行でありました。

2010年2月
【2月6日】厳冬の大船山御池

2月6日の九重連山は晴。8時過ぎの七里田付近の気温は氷点下1℃。久しぶりに久住高原側へ迂回し有氏牧野道から大船山へ向かうことにして、瀬ノ本から竹田市久住町へと向かいます。毎度のことではありますが、久住高原側からの入山となると飯田高原から1時間以上アプローチが長くなるため、なかなか足が向きません。大船山頂への最短ルートである有氏牧野道からガラン台を経由するコースは年間数回は利用するのですが、その場合も大分自動車道湯布院ICから湯平温泉−阿蘇野経由で久住町へと向かうことがほとんどです。

9時前にガラン台から入山、見上げる大船山頂にはガスがかかり、ガスの切れ間から霧氷が確認できます。はやる気持ちを抑えつつ、徐々にペースをあげ入山公墓を過ぎ、鳥居窪もスルーして久住高原を見渡すテラス岩で一息ついた後に、再び山頂へと少しペースアップしつつ向かいます。鳥居窪をすぎテラス岩付近から登路に雪が見られるようになり、大船山頂下の平地付近では圧雪路になっています。このところの暖かさでも、さすがに山頂付近の積雪は融けきっていないようです。

木々の枝先には霧氷が着き、時折吹き抜ける強烈な風に霧氷が飛ばされ、頭上から降り注ぎます。山頂直下以外には登路に雪はなく、少々ペースアップしたので無雪期同様に1時間30分程度で山頂に着きました。

異常に寒い山頂付近は強い風が吹き、さらに寒さがパワーアップしています。日差しがあるとはいえ、こらえ性がない私なんぞは、寒さを避けるためそそくさと御池へ下りました。ところが御池も風が回り込んで来ているため、こちらも異常に寒いのです。頭上からは強い風に吹かれて雪煙のように霧氷のかけらが降り注ぎ、これはもうのんびりと大船山の余韻に浸っている場合ではありません。早々に御池を発ち大船山を下りました。

山頂を下りテラス岩を過ぎると山頂でフリースなどを着込んだために汗も流れ始める始末です。鳥居窪は少々風があるものの、暖かな日だまりとなっていて、今回はここで昼食を兼ねて大休止とします。草原には冬の陽が注ぎ、シートを広げての昼食後には、思わすまどろむ夢心地。目が覚めるとすでに1時間以上経過しています。ガラン台へ帰着し、七里田温泉へ浸かった後に諸兄らとの宴会場へと向かいました。

【2月13日】すがもり越へ向かう

2月13日の九重連山は晴のち曇。7時過ぎの長者原付近の気温は氷点下3℃。8時前に大曲から入山、先週の雨で登路の積雪は完全に融け、山肌に痕跡を残すだけになっています。深々とした霜柱を踏みながら、すがもり越へ向かいます。朝日が差すようになり、遅い朝を迎えるようになると気温も上昇し始めます。登路脇を覆う霧氷は繊細で脆く、冬の芸術は気温の上昇に著しく弱いのです。

西峰から本峰にかけての登路に積雪はありません。積雪が多めだった本峰から南峰にかけても完全に消失しています。山頂付近は北西の冷たい風が吹いているのですが、厳冬期をわずかに過ぎただけとはいえ、晩冬の気配が感じられ確実に風の感触が変わってきています。大鍋壁には見事な霧氷が着き積雪が融けた単調な景色に変化を与えてくれ、見飽きない景色が広がっています。

南峰山頂は霜柱が覆い、周囲の木々は霧氷に覆われています。時折ガスがかかるものの、暖かな日も差す中で、坊ガツルを見下ろすテラスで小休止。コーヒーやラテなど暖かな飲み物を飲みながら周囲の景色を堪能しましたが、さすがに30分以上体を動かさないでいると端々から冷えてきます。10時を過ぎると山頂付近にも登山客の声が聞こえるようになり、そろそろ退散の時刻が迫ってきたようです。西峰山頂付近まではガスがかかり、視界が開けなくなっています。淡々と歩き11時30分頃に大曲へ帰着しました。

【2月20】久住山と御池

2月20日の九重連山は晴。7時30分頃の牧ノ戸峠の気温は−6℃。山は再び薄雪に覆われています。牧ノ戸峠に着いた7時30分頃、駐車場にはすでに多くの車が駐まり登山客が入山しています。ふと気付くと、上空に白いバルーンが1機飛来して南に飛んでいきます。

慌てることもなく車中で装備を確認し、8時前に入山。わずかに積雪した沓掛山登路を慎重に歩き、沓掛山頂へ向かいます。沓掛山を過ぎると徐々にガスが濃くなります。薄雪の登路を淡々と歩いて扇ヶ鼻分岐にさしかかると、星生山はすっぽりとガスに覆われて見渡すことができません。

9時前後からガスが時折切れ始め、御池に着いた9時30分頃にはガスが一気に晴れ始めました。わずかにガスに霞む御池は、先週は解氷していたということでありますが、週半ばの寒波で南側の一部を除き再度氷結しています。湖面を覆う氷は薄く、とてもではありませんが渡れる状態とは言い難い状況です。岩氷に覆われた中岳山頂に着く頃にはすっかりガスが晴れ、久住山から大船山方面まではっきりと見渡せるようになりました。

燦々と注ぐ冬の日は暖かで、山頂南側の岩陰で風を避けると寒さを感じません。絶景を堪能しつつのんびりと休憩し、10時を過ぎて中岳周辺の登山客が増え始める中、天狗ガ城を経由し牧ノ戸峠へ戻りました。

【2月27日】ガスかかる大船林道の木々

2月27日の九重連山は曇。8時頃の飯田高原の気温は5℃。雨は止んだので吉部から坊ガツルまで軽く往復し、避難小屋工事の進捗状況を確認することにしました。先日来の暖かさで、登路の雪も完全に融けています。

鳴子川沿いをショートカットする登路を抜け、大船林道に抜けても濃いガスに包まれています。坊ガツル北端にさしかかる頃、視界が急激に開け青空まで広がり始めました。目前に広がる山々が青空の下に望め、先ほどまでの濃いガスは何だったのかと思わせるほどの晴天です。山の天気は実際に現地で確認しないと何とも分からないもので、こんなことも頻繁に起きるのです。風も暖かく快適に歩いて坊ガツル野営場に向かいます。

野営場にはテントが一張り。昨日来の雨の中での野営のようで、雨具などの装備一式を天日干しの最中であります。気になる避難小屋の改築状況は、コンクリートの外壁と屋根が完成し、パネルを撤去しているところでした。作業員に聞いたところ、工事の終了は3月末頃とのことです。順調に工事も進んでいるようで、完成が楽しみです。

坊ガツル周辺ではマンサクが満開になっており、野営場側を流れる鳴子川支流の岸にあるマンサクも今が見頃です。これも例年並みの開花時期で、特に遅くもなく早くもなくというところでしょう。季節の移ろいを実感しつつ、坊ガツル周辺をのんびりと散策した後に法華院山荘談話室前のベンチを借りて大休止。風も弱く快適な春の日差しのもと、晩冬の一日を堪能しました。11時過に鉾立峠を越えてガスが流れ込んできましたが、それもすぐに消えて再び晴天が続きました。

昼食を終える12時過ぎまで法華院山荘付近を訪れる登山客は皆無で、この晴天なのに、なぜ??という不思議な感じがしていました。しかしながら山を下り初め、坊ガツルを抜けて暮雨の滝付近を過ぎた頃から再び上空を雲が覆い始め、吉部に帰着し飯田高原へ戻ると朝よりは少々薄れているものの、相変わらず霧が立ちこめています。わずかに大船山頂付近が望めるものの、山はガスに覆われた状態でした。

2010年12月

【12月4日】冬の大船林道の木々と平治岳山頂

12月4日の九重連山は晴。7時過ぎの飯田高原の気温は−2℃。12月を迎えたとはいえ、積雪もなく冬の訪れを実感するものはわずかに足下の落葉に覆われた地面の凍った固い感触でしょうか。吉部から鳴子川沿いの登路は路面が凍り、適度に締まって歩きやすく感じます。鳴子川のせせらぎを聞きながら、周囲の山に朝日が注ぎ始める中、明けやらぬ薄暗い登路を歩きます。葉を落とした木々の繊細な枝が広がる森の上空には青空が覗き、落葉に覆われた登路は適度なクッションが効いて快適です。

落葉の森を堪能すべく大船林道から4号集材路に入り、平治岳北登路向かいます。今年6月には関東への長期出張で九州を離れ、ミヤマキリシマの花期も遅れ気味で、5月後半の山行以後平治岳には来ていません。約半年ぶりの平治岳になるわけで、ミヤマキリシマのハイシーズンには驚愕の賑わいを見せる平治岳も、冬季は静かですから、のんびりとした山行が楽しめるはずです。やはり、平治の尾から山頂付近にかけても先行者の形跡はなく、ぬかるむ登路も適度に凍って歩きやすく、10時前に山頂着。

平治岳山頂には、北東側の木々が切られて由布岳方面の眺望が大変に良くなっています。切り口はすでに生気がありませんから、すでにかなりの期間が経過しているはずです。何しろ半年ぶりの平治岳でありますから記憶も定かでなく、一体いつ頃切られたものかも不明ですが、眺望が大変良くなっているのには感心します。

最近登路や山頂付近の整備が広範囲に始まっているようです。雨ヶ池方面も整備中のようですし、これまでのように法華院山荘のスタッフが整備したという程度ではなく、かなりの人出を投入しているようです。平治岳南の峰から見下ろす大戸越からチェーンソーのエンジン音が聞こえ、ヘルメット姿の作業員見えます。秋の行楽シーズンが終わり登山客が減った初冬期に、平治岳の南斜面の荒れている登山道の整備を再開したようです。

大戸越から平治岳西側を巻いて大船林道へ向かう登路をゆっくりと歩き、落葉した森を堪能します。あまりに落葉が深すぎて足首まで埋もれる場所も多く、思わず転びそうになります。大船林道を経て正午頃に吉部へ帰着。穏やかな天気に恵まれ、落葉した木々の枝先から初冬暖かな日が注ぐ森を堪能できました。

【12月11日】ガスのすがもり避難小屋・改築中の雨ヶ池木道

12月11日の九重連山は曇のち晴。8時頃の長者原の気温は6℃。前夜の宴席を1次会で失礼してまで翌朝に備えたものの、大分市を発ったのは6時前。朝食を終え、大分自動車道で眼下に広がる別府湾が朝を迎えつつあるのを眺めつつ、長者原に着いたのは8時前です。天気予報は見事に的中し、小雨が降っています。雨具を着用した登山客が入山するのを見送り9時30分頃まで待機し、午後からの回復に期待し入山しました。

週半ばに山は冠雪し、やまなみハイウェイにチェーン規制が出されました。その後、昼間は暖かな日が続き、雪はかなり融けていたものの、登路脇にはわずかながら雪も残り、冬を感じさせます。すがもり越も濃いガスの中で、視界は20m程度です。ガスが濃いため視界も開けず、ここは法華院山荘でのんびりと休息日とすることにして、北千里ガ浜へ下ります。

北千里ガ浜から法華院山荘へ下ると徐々に登路脇の積雪も減ってきます。作業車が駐車している山荘は増床の工事中のようです。相変わらずガスがかかるものの、徐々に薄日も差すようになってきた坊ガツルを眺めながら、山荘の談話室で昼食を兼ねて大休止です。しばし至福の時を楽しんだ後、12時過ぎに山荘を発ち、坊ガツル野営場へ向かいます。午後からは天気が回復するという予報もあってか、野営場にはテントが張られ、徐々に数も増えています。

登山客の増加や、気候変動を思わせるゲリラ的な豪雨の増加で、登山道の荒廃に拍車がかかっています。三俣山周辺では土石流の発生で登山道が寸断された場所もありますし、雨ヶ池では以前設置されていた木道が著しく荒れていました。土石流が発生した場所への砂防ダム整備や、荒廃した登山道の整備がかなり広範囲で行われています。何とも不正確ではありますが、雨ヶ池木道は、ここ10数年で2回ほど大きな整備がされているように記憶しています。しかしながら荒廃も激しく、今回完全に掛け替えが行われています。

坊ガツルから雨ヶ池にかけては、ぬかるんでいる場所に飛び石のように埋め込んだり、登路周辺を石で覆うような方法や、布団かご状のネットに石を入れて敷いたりと、登山道の整備には景観への配慮や耐久性などを試すためなのか様々な工法が見られます。工事は今月末まで続くようですが、木道の整備や、ベンチの設置など雨ヶ池ルートが一層快適に歩けるようになっています。長者原から雨ヶ池ルートでのんびりと坊ガツルまでの散策が快適になりそうです。

【12月18日】凍てつく久住山と完全氷結した御池

12月18日の九重連山は曇のち晴。5時30分過ぎの牧ノ戸峠の気温は−3℃。週半ばに積雪した九重連山の様子がマスコミ等で報道されました。週末は別府市内での宴席を1次会で失礼してまで翌朝に備えたものの、またしても爆睡し別府市を発ったのは4時過ぎ、長者原に着いたのは5時過ぎです。

長者原から牧ノ峠まではうっすらと圧雪し、チェン規制が出されています。上空に星はなくうっすらとガスがかかっているようです。駐車場もうっすらと雪が積もり、この冬初の雪山での御来光も星生山であれば間に合いそうですが、このガスですから少々迷うわけであります。迷った時は潔くやめるという鉄則を遵守し、暖かな車中でしばし待機します。

ガスは晴れるることもなく刻々と時間が過ぎて、6時30分頃に満を持して入山。ヘッドランプの明かりも日頃より一段と明るく感じる雪の登路を淡々と歩き沓掛山を登ります。冬の山では、できるだけ発汗しないようにペースを落として歩き、沓掛山頂付近でヘッドランプも不要となり、徐々に明るさが増す中、淡々と雪の登路を歩きます。

扇ヶ鼻分岐付近で一瞬ガスが切れた7時20分過ぎ、うっすらと望む空は朝の日に染まり、青空も望めます。天気は予報どおり回復に向かっているようです。徐々にガスの切れるペースが速くなり、西千里を経て久住分れにさしかかった8時頃には、断続的にガスも切れるようになります。避難小屋を過ぎ、御池から中岳方面へ向かう登路には、先行の登山客の足跡が残ります。この天気では御来光は撃沈したに違いありませんが、周囲を覆う霧氷は見事に成長しており、こちらは見応えがありそうです。

御池は完全氷結し、例によって投石が残っています。湖岸を迂回し、中岳山頂へ向かうと、ガスが切れた山頂付近には人影も望めます。御池を過ぎが中岳と天狗ガ城分岐で、朝駆けを終えたオアシス氏に会いしばし情報交換の後、中岳へ向かいます。山頂ではkehyさんもガスの切れ間を待って待機中です。

坊ガツルにガスが流れ、大船山はガスに隠れています。山頂下で風を避け、大船山のガスが切れるのを待ち小休止。徐々にガスも切れ、ついでに坊ガツルを覆っていた雲海までも消えて、いつしか快晴になりました。雪景色の久住山周辺の眺望を楽しみつつ、10時過ぎまで中岳山頂で至福の一時を過ごした後、いつものように気温が上昇しぬかるみ始めた登路を下り11時30分過ぎに牧ノ戸峠に帰着しました。

【12月25日】吹雪くすがもり越と坊ガツル野営場

12月25日の九重連山は雪。6時過ぎの長者原の気温は−8℃。前夜は職場のある大分市街地を発ち22時前に長者原着。気温−6℃で、月明かりに浮かぶ山々も冷え冷えとしてます。夜空はひとまず晴れてはいるものの、予報では夜半から曇り、朝は雪ということです。例によって、朝の運転が不要という安心感から、性懲りもなく酩酊して爆睡。目覚めた6時前、顔に触れる空気が妙に冷たく、シュラフの温もりから抜け出せず、しばしまどろんだ後に意を決して外気温度計を見ると−8℃とまずまずの冷え込みです。コーヒーとスープで暖をとり、7時のニュースを見ながら朝食を終えて、雪が徐々に降り始めた中を8時過ぎに入山しました。

強い横風にあおられた粉雪が吹きつけ、ジャケットのフードを被って雪に霞む登路を淡々と歩きます。足下の登路は霜柱を踏みしめる音が聞こえ、粉雪がいつしか降り積もり始めるようになります。9時前にすがもり越に着き、寒風が吹き抜ける避難小屋ではありますが、いくらかでも風を避けることができるのは有り難いものです。

三俣山西峰登路から北千里にかけては粉雪に霞み、山頂付近は強い風が吹き抜けているだけでしょうから、こうなればお決まりの坊ガツルまでの往復に決定です。冬季は坊ガツル避難小屋や法華院山荘の談話室、少々ワイルドですが池の小屋のお世話になることが増えます。何より寒風を避けられるのは有り難いわけで、改築後の坊ガツル避難小屋は快適そのものです。

うっすらと積雪し始めた法華院山荘への登路を下り、宿泊室の改築が進む法華院山荘を過ぎ、寒風が吹き抜ける坊ガツルへと向かいます。北千里ガ浜ほどではないものの、さすがに冬季の坊ガツルも野営場を吹き抜ける横風は冷たく、粉雪に霞み景色も望めません。冬季でも週末はテントが張られていることが多い坊ガツル野営場も、明日にかけて積雪もあるという予報のためかテントはなく、訪れる登山客もいません。

先日来平治岳登山道の整備が行われているためか、坊ガツル避難小屋裏には作業員の業務車両が駐車しています。この気温の屋外で終日作業というのは、かなり厳しい状況です。山行ならいざ知らず、仕事で入山するとなると・・・お疲れ様ですという以外ないのであります。平治岳で作業をしている方々には実に申し訳ないのですが、坊ガツル避難小屋で早めの昼食を兼ねて至福の一時を過ごしました。

相変わらず雪が殴りつけるように降る坊ガツルを発ち、往路より確実に白くなり始めた登路を北千里へ向かいます。わずかに白くなり始めた程度の北千里では、雪煙のように粉雪が巻き上げ視界を遮ります。すがもり避難小屋付近も往路より確実に白くなっていましたが、まだ本格的な冬景色にはほど遠い状態です。

そういえば、今日は入山して山を下るまで、一人の登山客にも会っていません。景色も中途半端ですし、天気も今一歩ですから、こんなものでしょう。初夏や秋の驚愕の賑わいを見せる登山客は一体どこに行ってしまったのでしょうか。やっと静かな山に戻ったような、不思議な感慨を覚えた冬の山行であります。


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